2003年07月30日(水)  営業。
今日は営業7課始まって以来の快挙を成し遂げた。1日で契約成立8本。所属長は前代未聞だと僕を褒め称え、周囲の人達は如何にして契約を立て続けに成立させたか聞いてくる。誠意と真心。武富士のCMでも言ってるでしょ。誠意と真心。なんて綺麗事は言わない。今日は運が良かっただけ。動悸が激しくなる。営業7課のホワイトボードに大きく僕の名前と契約本数が記される。
 
はっきり言えることは、この仕事は僕には合っていない。契約が1日に1本も取れない日は電車の中で激しい動悸に見舞われ、部屋に戻ってもそれが続き布団に入って夢の中で契約を取る夢を見る。今日のように嘘のように弁が立ち、ずば抜けた契約本数を獲得すると、やはり動悸が激しくなり、周囲の声が鬱陶しくなり、やはり電車の中で動悸が激しくなる。どう転んでも駄目だ。諸手を挙げて喜ぶことができない。
 
臨時ボーナスが出た。社員の前で現金が入った封筒を貰う。引き攣った笑顔。心にもない謙虚な言葉。屈託した思考。鬱々とした気分。
 
「キミには適わないよ」
 
駅に向かう途中、僕を追い掛けるように走ってきた男が肩で息をしながら話し掛けてくる。僕を何かとライバル視する男。僕より契約を取った日はすごく喜んで聞いてもいないのに僕に契約が取れるコツなどを伝授しようとする。僕はもう仕事のことなど忘れたくて、早く部屋に帰りたくて風呂に入って眠りたかった。明日目覚めれば嫌でもまた仕事のことを考えなければいけない。今日はもう終わり。今日取った契約本数も明日にはリセットされてまたゼロからスタートしなければいけない。永遠に続く焦燥感。落ち着くことを許されない心拍数。
 
臨時ボーナスの封筒を取り出し、新しい小説を1冊買って、弁当屋で550円のスタミナ弁当を買った。これが今の精神状態で行うことができる精一杯の贅沢。部屋に戻り、日記を書く。動悸は止まらない。今日が終わる。明日が始まる。

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