2003年07月18日(金)  彼女でない彼女。
午後から映画を観に行った。新しい靴と新しい小説と新しい指輪を買った。映画は内容が途中からグダグダになってきたので早く映画館から出たかった。映画を観る前に寄ったABCマートで見つけた靴が残り1つだったので売り切れていないかそればかりが気になった。靴を買ってから映画を観ようと思ったけど、映画館のあの狭い座席の足元に靴が入ったケースを置くことが嫌だった。
 
「鹿児島に行ってみたいの」
 
彼女ではない彼女に、そう言われた。彼女である彼女は今日は仕事帰りに飲みに行くと行っていた。今夜の帰宅も0時を過ぎるだろう。新しい靴と新しい小説と新しい指輪を買った。薬指はまだ、空いている。
 
「私まだこの東京から1歩も出たことがないの。京都と北海道は行ったことがあるわ。修学旅行で。だけどそれは東京から出たことにならないの。それは自分の意志じゃないの。制服着てバスに乗って飛行機に乗せられて勝手に連れて行かれちゃったの。だけど初めて自分の意志で遠くに行ってみたいって思ったの。あなたが育った街に行ってみたいって思ったの。だから鹿児島に行ってみたいの。自分の意志で」
 
彼女ではない彼女に、そう言われた。「今日は、遅くなります」彼女である彼女からメールが届いた。映画館を出ると雨が降っていた。映画の内容はすっかり忘れてしまった。
 
「いろんなことが全て落ち着いたら、鹿児島に連れて行って」
 
彼女ではない彼女に、そう言われた。週末の浮かれた表情の人波に揉まれながら、新しい靴と新しい小説と新しい指輪を買った。薬指はまだ、空いている。雨はやむ気配がない。夜が更けるに従い人波は増えていく。思い空を見上げながら故郷に帰ったときに横に誰が立っているか、考えていた。

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