2003年07月17日(木)  リアルタイム幸福論。
幸せな状況をリアルタイムで幸せと感じることができたらどんなに素晴らしいことだろうと思う。あの頃は良かったなぁ幸せだったなぁなんて昔を懐かしむけれど、その頃は良いとも幸せだとも思っていない。その時はそれなりに悩みがあって苦労があって、いつになったら幸せになれるのかなぁなんて思っているのだ。
 
幸せは過去の中だけに存在するんだと思う。「ワタシ今幸せよ」なんて言う女は高が知れてる。間に受けちゃいけない。ふん。6年前、彼女は車の助手席で「ワタシ今幸せよ」と言った。僕はその時は「幸せなことが、あるものか」と思いながらハンドルを握っていた。彼女の言葉は僕の記憶の奥底に沈み、5年後に再び顔を出して「あぁ、あの頃は幸せだったんだ」と思う。鈍いんだねえ僕は。
 
ここに2枚の写真がある。1枚はその昔の彼女と顔を寄り添って写っている。僕は坊主頭で彼女はその頭にキスをしている。彼女は幸福を自覚して僕は本当の幸福はまだ見えぬ将来にこそ眠っていると自覚していた頃。もう1枚は、別れて2年経った後、バーで偶然会ったときに写した写真。僕の髪の毛は長くドレッドパーマをかけていて、彼女はその髪の毛をかき上げて僕のこめかみにキスをしている。彼女は過ぎ去りし日の幸福を思い出し、僕の目はファインダー越しに将来の幸福を見据えている。
 
6年経った。あの頃は幸せだったなぁと思いながら毎朝満員電車に揺られている僕がいる。刹那の幸福を自覚できずにいつまでも見えない幻影を求めている僕がいる。明日、何があるというのか。来月、何が起こるというのか。来年、何処にいるというのか。全く見当がつかない僕がいる。
 
5年後にでも今の僕を思い出して、5年後の僕はそれでも「5年前のあの頃は幸せだったなぁ」と思うのだろうか。いつまでも過去の幸福を反復して想起するつまらない人間になっているのだろうか。

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