2003年05月26日(月)  就労意志。
前の職場から離職票が届いたのでハローワークに失業認定を受けに行った。地図には川越駅から徒歩18分と書いていたので、地図通りに進みたいが、まず駅を出てすぐ右側にある交番がない。倒産しちゃったのかしら。と特に気にせず適当な方角に進むが、現実の世界は全く地図に伴っていない。コンビニがあるべきところに吉野屋があって線路があるべき場所にホームレスが横たわっている。それでも、おそらくこっちの方角であろう。と何の根拠もない意志に従って歩き続けるが、ガソリンスタンドがあるべき場所にセブンイレブンがあったり、噴水があるべきばしょに女子高生が小便をしていたりしてもうわけがわからない。
 
腐れ地図が。馬鹿が。と憤り公園のベンチに腰掛けクシャクシャになった地図を今一度確認すると「川越駅」から徒歩18分ではなく「川越市駅」から徒歩18分と記してあり、僕は「川越市駅」という駅など知らず、僕が駅員であればこんな紛らわしい名前などつけず、もう面倒臭いから川越駅から徒歩18分のところにハローワークを作るのに。と後悔先に立たず。来た道を引き返し、駅の路面図を見上げると、「川越駅」の1駅先に「川越市駅」と銘打ってある。紛らわしいのでやめてくれませんかこういう名前という怨念をこめた視線を駅員に投げかけたが効力など期待できず、怒ってばかりいてもしょうがないので切符代140円を支払い、川越市駅へ向かい、徒歩18分かけてハローワークに行った。
 
ハローワークはあらゆる年代のあらゆるファッションの人達でごった返し、さしずめ失業者のお祭りのような有様になっていた。祭りと決定的に違うことは皆、曇天模様な表情をしていて少しも楽しそうじゃない。それはいくら働きたい! と思ってもウチは人手足りてるから。と失業者の受容と雇用側の供給が一致しないからであり、意外と深刻なのである。
 
僕は午後は多分混むだろうから、朝イチで行ったら円滑に手続きが行えるだろうという打算の元、昨夜は午後11時に就寝して、午後8時30分に我が家を出ようと換算していたが、午後11時に就寝し、午後1時に目覚めるといういかにも失業者らしい睡眠時間を取ってしまい、いかにも失業者らしい人々が動き出す午後3時にハローワークへ到着し、受付に並び散々待たなければいけないという事態に陥ってしまった。
 
やっとあと一人で僕の順番が来るという時、僕の前に順番を待っていた人がなにやら受付嬢、受付嬢とか言っても50代半ばの母性は感じないこともないが、約3年前ほどに閉経してしまったかのような女性だが、その受付嬢と揉めていた。
 
「あのですね「失業」という状態はですね、就職をしようとする意志があって、いつでも就職ができる能力があって、積極的に仕事を探しているにも関わらず仕事に就けないという状態なんです」
「はぁ、そうなんですか。でも僕、あんまり働きたくないんだよなぁ」
「それは就職しようとする意志がないとみなして失業認定はできません」
「はぁ、そうなんですか。それじゃあ失業手当ももらえないんですか」
「そういうことです」
「困ったなぁ。うーん。あまり働きたくないんですけど……」
「だから就労する意志が意志がないと駄目なんです」
「そうですか……。わかりました……」
 
と、ウィンドブレーカーにスウェットという格好の30代前半の男は肩を落として帰っていった。呆れた。就職する意志がないということを馬鹿正直に受付嬢に申告してどうする。そんな就職する「意志」だなんて目に見えないものなんだからいくらでも嘘はつけるであろう。そんな僕だって就職する意志など微塵も持ち合わせていない。ただこの国は国民は働かなければいけないという義務があるから仕方なく働くのであって、そういうのは意志とは無関係なんだ。受付嬢も受付嬢で、そんな役所的な体質が染み込んだ態度で冷たくあしらわなくてもいいじゃないか。
 
肩を落としてハローワークを出て行く青年の背中を見ながら、失業者が増加するのは国や企業だけの責任ではないと思った。

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