2003年05月10日(土)  ポケットの中身。
電話。
 
「ポーケットーの中にはビスケットーがヒトツ。……。ビスケットーの中にはポーケットーががヒトツ。……。ねぇ、どっちがいいかしら」
「今お昼休み?」
「ねぇ、どっちがいいかしら」
「ビスケットの中にポケット」
「そうよねー」
「だけどちょっと音程違う」
「えー、あってるよー。コホン。歌ってみるね。ポーケットーの中にはー」
「違うよ。ポーケットーの中にはー だよ」
「もっと歌って」
「ポーケットーの中にはビスケットーがヒトツ。叩いてみるたびビスケットがフタツ。ん? なんかおかしいぞ」
「イチゴがいいな」
「イチゴいいねぇ。ポーケットーの中にはイチゴがヒトツ」
「ビスケットーの中にはイチゴがフタツ」
「美味そうだね」
「でしょー」
「今昼お休み?」
「イチゴーの中にはー」
「何?」
「ビスケットがフタツ」
「だから音程違うよ」
「じゃあ歌って」
「そーんなー不思議なポケットがホシイ」
 
という会話を30分。獅子座と水瓶座は相性がいいらしいが、後々駄目らしい。だけど後々だから今は大丈夫。たぶんずっと大丈夫。恋愛じゃないから大丈夫。ゆったりとした彼女の言葉に耳を澄ましていれば大丈夫。何かを得て、何かを与えることができるかもしれない。
 
「平井堅のね、あ゛あ゛あ゛っってのはスゴイと思う」
「うん。あれは真似できないよね」
「あとね、ミスチルの、ヒーローになりたぁいーーっっ。ってのもスゴイよね」
「うん。あれも真似できない」
 
会話の中での重要な説明とか意味とか、そういうのを省いても、理解できるということが、会話することの心地良さに繋がってるのかもしれない。彼女は僕の近年稀に見ない恥ずかしい出来事を知っているので、そこを突かれると、どうにもこうにも、為す術もなく平身低頭してしまうのだけど、僕より年下だけど彼女も大人なので、どうか、この気持ち、察して下さい。と、いつまでも恥ずかしい恥ずかしい言ってるのは僕だけなんだけど。
 
僕は世の中に妥協し続けて生きているんだけど、彼女はいつも自分の意志で、それに忠実に反することなく生きている。というイメージ。実際どうなのかわかんないけど、たぶん当たってる。真実に直面しやすい道を歩んでいるので、しばし困ってしまう。僕は脇道寄り道逸れた道。急がば回れの遠回り。一向に真実に到達せずに、逃げて逃げこまして、気が付けば埼玉県。おそらく埼玉にも真実など埋まっているはずはなく、かといって、池袋に行けば何かあると? そうでもなく、明日は新宿に行くので、新宿南口におそらく真実が? と、何? 真実って何? とわかっていてもワケのわからない振りをしてこます。
 
今夜は電話はこないような気がするので、ヘッドホンをつけてDVDを見る。パソコンのメールボックスには「未開封186通」という表示。1通1通返信すると夜が更けてやがて明けて、お昼になって夜になって腹が減る。雑誌の仕事のメールには、しっかり返信します。ギャラは安いけど、贅沢なんて言ってられないから。無職だし。いい加減なことならいくらでも書けます。
 
彼女のように理路整然とした、意志を持ちたい。ビールを飲みながらそう思った。

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