2003年04月22日(火)  長電話。
「だからー。私が彼氏の奥さんにバレちゃったら、住むとこなくなっちゃうから、そんときは一緒に住もうね」
「うん。常軌を逸した名案だね」
「でしょー。だから今の不倫がバレるまで、アナタは彼女つくちゃ駄目よー」
「うん。自己中心的甚だしい提言だね」
「駄目よー」
「……」
「ねぇ、聞いてんの?」
「無理だって」
「何が」
「キミの不倫がバレるまで僕は1人で晩ご飯を作らなくちゃいけないってことが」
「結婚してあげるから」
「無理だよ。だいいち結婚にそれほど魅力は感じないよ」
「だって結婚だよ?」
「いまどき結婚って言葉がリーサルウェポンになるなんて、野暮だよ」
 
「結婚したくないの?」
「別にしたくないってわけじゃないけど……」
「じゃないけど何よ」
「キミの不倫の終焉を待ち続けるのも虚しいなぁって」
「じゃあ不倫やめる!」
「ご自由に」
「冷たいっ!」
「とにかく腹が減ってるんだ。キミへの愛情より先に目の前のコンビニ弁当が冷めてしまう」
 
「……結婚しましょうよ」
「まず身辺を整理しましょう」
「私こう見えても几帳面だから!」
「そういう意味じゃなくて、私生活の身辺を整理しなさいってこと」
「えー。意味わかんなーい」
「不倫相手の男の部屋で? 男の帰りを待ちながら? 意味ワカンナーイと?」
「ムカつく」
「結構」
「ムカつきマンボ」
「あ。そういう無意味な言葉、すげぇムカつく」
 
「カレー作ったの。食べに来てよ」
「だからまだ鹿児島だって」
「鹿児島も東京も滑走路1つで繋がってるのよ」
「JALの広報部かっつの」
「ねぇー! 食べろー!」
「彼氏が帰ってこないからって、僕に八つ当たりしないで下さい」
「食・べ・て」
「食べない」
「私もう死ぬ」
「でた。そうやって死って言葉を簡単に使う女ほど図太いものはない」
「ひどい!」
「って言ってた」
「誰が?」
「蘇我馬子」
「え?」
「そがのうまこ」
「誰よそれ」
「飛鳥時代の豪族」
「まぁ邪馬台国」
「腹減ったから電話切るよ」
「待って! もうちょっと!」
 
「キミはいつからそんなにしつこくなったんだ」
「彼氏が帰ってこなくなってから」
「ついさっきからじゃないか!」
「彼氏帰ってきたらちゃんと電話切るから」
「そうしてもらったほうが僕にとっても助かる」
「でしょ?」
「うん。早く帰ってくればいいのにね。男」
「男って言わないで」
「オヤジ」
「オヤジじゃないわよ」
「背徳男」
「あんたに言われたくないわよ」
「あ、あ、も、もしも、し? し? 充、充電が、切れ、切れそ、切れそうだ」
「下手な演技はやめなさいよ」
「充電切れたいなぁ」
「まったく失礼な望みね」
「個人の望みなんて傍観者には失礼としか感じないんだよ」
「アナタ哲学者にでもなったつもり?」
「我が名はマルクス!」

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