2003年04月03日(木)  合鍵。擬似的同棲。
昨日、仕事から帰ると、部屋で友人がテレビを見ていて、はて、どうして僕の部屋に僕が帰ってくるより先に友人がソファーに寝転がってテレビを見ているかというと、別に難しいことではなくて、ただ単に、僕の部屋の鍵をこの友人が借りたときに、僕の同意をなしに合鍵を作っていたのだ。
 
「ゴメンね。合鍵作っちゃった」
「いや、まぁ、いいけど」
 
と、合鍵を作った後に僕に同意を求めて、僕も安易に応じてしまうという実にいい加減なもの。合鍵を作ってからというもの、友人は仕事帰りに僕の部屋に寄って、午後9時くらいまで化粧も落とさずにだらだらとテレビを見たり、ふくらはぎを掻いたり、しばらく小さないびきをかいて眠っていたりする。僕はそんな友人に微塵も心遣いを見せず、話し掛けもせず、相手にもせず、ただ自分の生活を自らの予定で僕の時間の中だけで過ごしている。
 
「ちょっと出掛けてくる」
「どこ行くのー」
「今夜は送別会があるんだ」
「また送別会ー!?」
「何度も何度も繰り返し別れを惜しんで、離別の辛さを鈍化させていくんだ」
「わけわかんなーい」
「じゃ行って来るね」
「いってらっしゃーい。私ももうすぐ帰るからー」
「あ、そうだ。ベランダに洗濯物干しててよ」
「えー! やだー! つーか明日雨降るってー!」
「いや、降らないよ。今日も天気良かったじゃん」
「絶対降るって! 天気予報で言ってたもん」
「そんなもの安易に信用する奴がキャッチセールスに簡単に引っ掛かるんだ」
「ひどーい!」
 
友人は去年の夏、路上で安易にアンケートに答えて、安易に喫茶店に誘われて、安価な宝石を天文学的な値段で購入して、クーリングオフの期間が切れた翌日にクーリングオフ制度を理解し、時すでに遅し。錯乱し、号泣し、翌日にはケロリとし「どう? これ? 綺麗でしょ」なんて女性の強さを痛々しいほど見せつけた。
 
「というわけで洗濯物、頼むよ」
「いやだー」
「絶対晴れるって」
「晴れるとか雨が降るとかそういう以前の問題」
「干すか干さないかの単純な意思決定ってことだね」
「そういうこと」
「干せよ」
「命令しないでよ」
「干して下さいよ」
「やだ」
「じゃあ行って来る。キミも気を付けて帰るんだよ」
 
そして僕は送別会に行った。居酒屋で携帯電話を紛失して、ずっと探していたら隣のテーブルの赤ん坊が持っていて「すいませんでしたー」とその赤ん坊のお母さんらしき人が僕によだれまみれの携帯電話と「これ食べてください」と焼き鳥を3本渡した。それからカラオケに行って、歌いもせず、トランプを始めて「罰ゲーム! 最下位の奴は自分の携帯の着信歴の上から7番目の人に電話をして『ずっと好きでした』とカミングアウトする!」などと馬鹿げだことを始めて、後輩が最下位。「ず、ず、すっと好きでした」と泣きそうな顔をしながら着信歴上から7番目の相手にカミングアウト。誰にカミングアウトしたんだよ。「お、おふくろ……」洒落になんねぇよ!
 
午前1時帰宅。ベランダには洗濯物。あ、干してくれたんだ。友人の優しさを噛み締めながら就寝。
翌朝、いわゆる今日の朝。ふつか酔い。雨。どしゃ降り。目覚ましが鳴るより先に
 
>だから雨降るって言ったでしょ!
 
というメール。
 
>洗濯物取り入れに来なさい。
 
という返信。

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