![]()
| 2003年03月30日(日) 赤いソファー。小さな椅子。 |
| 友人と家具屋に行った。新居で使うソファーとテーブル。 「ねぇ、これこれ、可愛いでしょー」 「うん。可愛いね。これにしようか」 「ねぇ、こっち来てよ。これいいんじゃない?」 「うん。これいいね。これにしようか」 「わぁ、見てよ。これすごい安い!」 「うん。安いね。これにしようか」 「アンタもうちょっと自分で考えなさいよ!」 いつものように主体性・積極性共にゼロ。だいたいあんなにいろんな種類のソファーがあったらどれでもよくなってしまう。先日東京の不動産屋に行ったときも何十件もの物件情報を見せられて、最初は真剣に探すのだが、ページをめくってもめくっても住みやすそうな物件が出てくるので、面倒臭くなってしまって、あぁどこでもいいや。住めたらいいや。雨さえしのげたらいいや。などと極論的思考に陥ってしまってどうでもよくなってしまう。 「ボクのソファーお姉さんのソファー♪ ゴロゴロ父さんのお昼寝ソファー♪」 「恥ずかしいから大きな声で歌わないでよ! それにこの店の歌じゃないんだから!」 ローカルCMで流れている家具屋の歌を歌っていたら友人に止められた。僕の中でソファーの選定はとっくに諦めていて、友人が「もうこれにしなよ!」と言うときをずっと待っていた。友人がソファーを決めたら、実際購入して部屋に置いてみて、なんかしっくりこなくても「しょうがないや。あいつが決めたんだし」と自分の中で言い訳ができる。 「さぁ、次はテーブル探そっか」 「ってどれに決めたのよ!」 「いや、わかんない。えっと、それでいいや。それいくらですか」 店員「28000円です」 「わぁ。高いね。随分高いね。ワニ皮ですか?」 店員「いや、ワニじゃないと、思います」 「そうですか。じゃあ、その隣のやつでいいや。それいくらですか」 「ちょ、ちょっと! なんでそんなに投げ遣りなのよ! 真面目に考えてよ!」 「え、いいじゃん。僕が買うんだし」 「そんな問題じゃないでしょ! ほら、部屋の雰囲気とか考えて……」 「そうだよね。雰囲気大切だよね。えっと、じゃあそれください」 店員「かしこまりました」 「えー!! 決めちゃうの!? ちょっと待って。ちゃんと話し合おうよ!」 「何を?」 「私たちの未来を」 「へへ」 なんて調子で迷惑そうな店員をよそにソファーの選定は続く。流行なのかどうなのかわからないけれど、やけに赤いソファーが目につく。単に色が目立つだけなのかもしれない。 「赤いソファー多いですね」 店員「はい。結構人気ありますよ」 「ワニ皮ですか?」 「どうしてそんなにワニ皮にこだわってんのよ!」 それから店内を3周くらいまわってようやく1人掛けのソファーに決めた。 「なんかすごい赤くない?」 「赤いね」 店員「赤いですね」 「ホントにこれでいいの?」 「じゃあ違うやつにする」 「あぁ、ちょっと、もうこれでいいよ」 「じゃあこれにしよう」 「うん。これにしましょ。ちょっと赤いけど、可愛いし」 「だけどなぁ……」 「どうしたの?」 「ワニ皮じゃないんだよなぁ」 「馬鹿じゃないの! 欲しくもないくせにそんなことばっかり言わないでよ!」 掛け合い漫才のような男女2人のやりとりに綺麗な店員のお姉さんも気に入ったらしく、ソファーの色に合った小さな椅子をプレゼントしてもらった。 店員(綺麗)「これ、どうぞ使って下さいね」 「えっ、ホントにいいんですか?」 店員(綺麗)「遠くに行かれるそうで。引越し祝いです」 「あ、ありがとうございます。この椅子に座るたびにお姉さんのことを思い出します」 店員(綺麗)「フフッ。彼女のことを思い出してくださいね」 「か、彼女じゃないですよ!」 「そ、そうよ。彼女じゃないですよ」 店員(綺麗)「フフフッ」 帰り道。車の中。 「たまには不真面目を装ってみるのもいいもんだね」 「アンタいつも不真面目じゃん」 「えー。僕はいつでも真剣だよ。ソファー決めるのに2時間かけるくらい真剣だよ」 「アンタ最後のほうずっとマッサージチェアに座ってたじゃない」 「それにしても得したね。小さな椅子」 「うん。すごいセンスいいよね。あのお姉さん」 「うん。座るたびにキミを思い出せだなんて、無謀なことを」 「馬鹿。だけどアンタだったらどこででもそんな調子で生きていけそうな気がした」 「ふぅん」 「うん。生きていけるよ」 うん。生きていくよ。 |
| 翌日 / 目次 / 先日 |