2003年03月21日(金)  売春婦とヒョウ柄のパンツについて。
さぁ、池袋2日目の夜。物騒極まりない。さっきホテルの裏通りにあるコインランドリーに行ってきたんだけど、売春婦がね、肩を擦り寄せてくるんですよ。マッサージ今ナラ1万円ヨ。なんて言ってなかなか離れないわけですよ。僕の歩幅と同じ感じでいつまでも付いてくる。肩を擦り寄せて。恋人のように。耳元でささやいて。決定的に恋人と違うとこはマッサージ、1時間1万円、キモチイーヨ、パンツクロイヨ、クッタラハナサナイヨ。などという物騒な言葉をささやかれているということ。僕は無視を決めこんで歩く歩く。そして駐車してある自転車に激突。あの娼婦が必要以上に肩を擦り寄せてくるものだから僕は歩きながらもどんどん歩道の脇に追いやられて、気が付くと目の前に自転車。時すでに遅し。「ゴメンなさい」とやけに素に戻って謝る娼婦とドミノ倒しにあった数台の自転車を立てる始末。そんな池袋の夜からこんばんは。今日は先日の空港での出来事を書きます。
 
手荷物受け取り所といったらいいのかしら。回転寿司の手荷物版みたいなところあるでしょ。あそこですよ。ね。あれで運ばれてくるやつ。言葉が、思い出せないや。ゴンドラじゃなくて、リフトじゃなくて、ほら、あれ。んもう。気になる。まぁ、とにかく空港で手荷物を受け取る場所ですよ。そこでね、自分のバッグが運ばれてくるのを待ってたのです。あれは、どういうわけか昔から僕の荷物は最後の方でようやく姿を現すんですよ。たいていの乗客が手荷物を受け取って次々にゲートから抜けて行くなか、僕の荷物はいつまで経っても姿を現さないんですよ。あぁ、何かの手違いで僕の荷物は千歳空港あたりに運ばれたのかもしれないってもう思考がネガティブ。なぜか自信がないんですよ。で、もう駄目だ。千歳空港もしくは伊丹空港だ。今日の風呂上がりのパンツが、ないや。なんて泣き出す寸前になってようやくノロノロと僕の荷物が運ばれてくるわけですよ。久々の旧友との再会の如く僕は心の中で歓声を上げるのです。あぁ! 僕のバッグだ! あれは、どこから見ても上から読んでも下から読んでも僕のバッグだ! ってね。
 
しかし、僕のバッグに予想外の出来事が!
 
ってここでテレビだったらCMに入るのですが、これは、個人サイトの単なる日記ですので、もとい、バナー広告でもあったならば、読者はここで広告をクリックして、見たくもない英会話教室の入会金やら眺めて早く日記の続きが見たい! なんて自分なりにヤキモキ感を演出することも可能なのですが、この日記はバナー広告さえついていないので、感動も激動も躍動もなく淡々と文章の続きを書かなければならないのです。
 
というわけで続き。上の段落の文章が、その、CM中のヤキモキ感に値するのですが、その効果はいかほどのものか。まぁ、いい。僕のバッグに予想外の出来事が! あの手荷物受け取り所はU字型になっているでしょう。僕はそのU字型の「J」の形に位置する場所に立っていたのです。で、「し」の形に位置する場所に立っていたオヤジ。あの初老のオヤジがよ。予想外のことをしでかしたんです。あ、荷物は「し」の部分から流れ出して「J」の部分で終わる「U」字型になっているのだけど、僕の書いている意味がわかるかしら。わからない人は電話下さい。知らない電話番号であれば出ません。
 
そのオヤジ、おもむろに僕のバッグを取り上げるじゃないですか。あ! テメェ! それオレのバッグだよ! と心の中で叫ぶわけですよ。どっから見ても僕のバッグなんだから。でも、僕も大人だし、あのオヤジだって僕よりもっと大人なので自分のバッグの形くらいわかっているはずです。平静を取り戻した僕は、早くバッグを元に戻しなさい。それオジさんのバッグじゃないですよ。と半ば温かい眼差しでオヤジを見つめるわけです。誰にだってミスはするのです。しかしオヤジ、あのオヤジ、僕のバッグのジッパーをおもむろに開けるじゃないですか! おい! オヤジ! 見りゃわかんだろ! オレのバッグだっつの! あー! それオレのパンツだっつの! という具合に僕のパンツまで引っ張りだして、それでも飽き足らず仔細に他のパンツまで確認を始めるじゃないですか。パンツをバッグの一番上の部分に収納した僕が馬鹿だった。と、そういう問題ではなく、何も、手荷物受け取り所で僕のパンツを見られるかもしれないなんてことを前提に旅行の準備をするはずないのだから、どこにパンツを入れようと僕の勝手なのだから、僕は僕の意思で、ていうか無意識に近い意思でパンツをバッグに詰め込んだわけでありますが、大失敗。ていうかオヤジの馬鹿。いい加減気付けよみたいな。
 
しかし僕はそれでもオヤジに声を掛けるわけでもなく、静かにその場面を見守っていたのであります。オヤジは「し」の形に位置する場所に立っていて僕は「J」の形に位置する場所に立っている。オヤジが立っている場所までの距離は約5メートル。なんか面倒臭い。どうして僕がわざわざ歩かなければいけないんだ。オヤジが僕の所まで歩いて来いよ。ていうかゴムの部分がヒョウ柄の僕にしては悪趣味なボクサーパンツを広げているオヤジに向かって「それ、僕のですけど」と言うのも恥かしくて、ヒョウ柄のパンツなどバッグに詰めた僕が馬鹿だった。と、そういう問題ではなく、何も、手荷物受け取り所でヒョウ柄パンツを広げられるかもしれないなんてことを前提に旅行の準備をするはずないのだから、僕がどんなパンツを履こうとも僕の勝手なのだから、僕は僕の趣味で、ていうか趣味ってほどでもないんだけど、それでもこのパンツを購入するとき、このパンツイイ! なんて少し感動して購入したのでありますが、大失敗。ていうかオヤジの馬鹿。いい加減返してくれみたいな。
 
で、本当にそれは長い時間でした。遥か中東の国がこれまた遠い米の国にタイムリミットを与えられて決断を迫られているとき、僕はヒョウ柄のパンツを広げられてブッシュ大統領のように思いきった決断に踏み切ることもできず、ただ悶々とオヤジの一挙手一投足を見守っていたわけであります。そしてややあって僕の元にバッグが帰ってきたのであります。今回の旅は荷物を少なく! を目標に、几帳面且つ合理的に詰め込まれた僕のバッグの中身も、スカッドミサイルを撃ち込まれたかのような荒廃模様。電子レンジで温め過ぎたコンビニの弁当のようにパンパンに膨れ上がった見るも無惨なバッグを抱え、うっすら涙を浮かべつつ、僕の5日間の東京生活が始まって、2日目に売春婦に肩を擦り寄せられて自転車がドミノ倒しされていく様子を呆然と眺めているのでありました。

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