2003年03月10日(月)  彼女が妊娠しました。
「わーっ!」
 
昨日の続き。彼女の部屋。ワンルーム。すごい汚い。MDコンポの上にブラジャーとか電子レンジの上に靴下とか置いてある。すごい汚い。だけど僕は彼女のことを愛している。何よりも、エッチが上手い。だけどそれも今日が最後。僕は部屋でタバコを吸っている。彼女は妊娠判定キットを持ちトイレへ行った。そして「わーっ!」遂に、判決が下った。審判の時が来た。
 
僕の気のせいかもしれないけど、彼女の顔色は少し蒼ざめていた。顔色を窺うだけで、その結果は明白だった。
 
「出たわよ」
「ふむ」
「……陽性」
「!!……ファイナル……アンサー?」
「ファイナルアンサー」
「ちょっとテレフォン」
「どこに!」
「じゃあオーディエンス」
「だれに!」
「じゃあ不正解」
「陽性だって!」
 
彼女が妊娠した。非常に困ったことになった。先ほど彼女のことを愛してると書いたばかりだけど、その「愛してる」っていう意味は、俗に、セックスの対面座位の時に彼女の潤んだ瞳を見つめながら「愛してる」って呟く種類の「愛してる」であって、そんな、妊娠だなんて、日常に密接した「愛してる」という概念など、今までの僕の生活には皆無だったので、かなり困ったことになった。さて「どうしよう」
 
「どうしようって、どうする?」
「とりあえず産婦人科行って、ちゃんと調べてもらおう」
「うん、そうしましょう。で、どうする?」
「どうする? って?」
「どうするってどうするってどうするって?」
「どうするってどうするってどうするってどうするって?」
 
お互いもういい歳した大人なのに、混乱していることは火を見るよりも明らかだった。
 
「ていうかそれ嘘だったりして」
「こんなときに嘘言うわけないでしょ!」
「本当に?」
「本当に嘘じゃないってば」
「本当に本当?」
「だから本当だって」
「本当は嘘でしょ」
「嘘は嘘だって」
「ということは本当は嘘ってことだね」
「うん。嘘は本当」
「じゃあ本当に嘘ってことだね」
「うん。嘘は本当」
「本当は?」
「嘘」
 
嘘でした。

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