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| 2003年02月14日(金) とても素敵なバレンタイン。 |
| 院長には小学5年と4年生の娘がいる。愛に齢の差なんて関係ないので、僕は彼女たちが職場に遊びに来るたびに「いいかい、よく聞くんだ。キミは将来女医になって、僕は将来キミと結婚するんだ。結婚してくれたらいろんなとこ連れてってあげる。ディズニーランドとか、そうだ、ロケットに乗って月にも行こう。ね。結婚しよう。そして僕を養ってくれ」僕はしゃがみ込んで彼女たちと目線を合わせて口説く、口説く。看護婦さんたちはそれを見て苦笑。罵倒。「気を付けなさい」「幸せになれないよ」なんて大人の解釈をしている。でも子供達は何を気を付けてどうして幸せになれないかなんてわからないので「うん! やしなう!」なんて養うことの意味もわからずに楽しそうに叫ぶ。僕はほくそ笑む。これがホントの大人の解釈。 今日はバレンタインデー。院長の2人の娘は学校の帰り道、職場に寄って「ヨーシーミーくーん!」大声で僕の名前を呼んだ。娘の大声は当然、院長の耳にも届いているはずで、なぜ私の娘達はヨシミ君の名前を呼んでいるのか。あ、そうだ。今日はバレンタインか。しかしなぜヨシミ君なんだ。あいつはうちの娘達に何を吹き込んだのか。って絶対そう考えると思って僕は焦燥し、慌てて彼女のところへ走る。 「はーい! チョコレートー!」 「シーーーーッ!」 僕は顔を真っ赤にしてチョコレートを受け取る。まさかこの歳になって8歳の女の子からバレンタインチョコを貰うなんて思ってもみなかった。日頃の無責任な発言は、時々こうやって意外な時に実を結ぶ。看護婦さんたちは相変わらずナースステーション越しに好奇の目を向け「ダメよー。お兄ちゃんは悪い人なんだからー」「新しい女の子を追いかけてもうすぐいなくなっちゃうんだからー」なんて、どうコメントしていいのかわからないことばかり言う。外来患者さんたちは彼女たちに向けて笑顔で拍手を送る。僕はただ「ありがとう」と柄にもなく照れるばかりで、日頃の威勢のいい口説き文句を言うこともなく、そそくさと小さな2つの紙袋を持ってロッカーへと走った。 アパートに帰って、小さな紙袋の紐を解く。チロルチョコの詰め合わせと、クマのぷーさんの顔の形をした小さなチョコレート。そして手紙。 「大きくなったらお兄ちゃんをやしないます」 「とおいところに行っても、早くかえってきてね」 これまでの人生で一番素敵なバレンタインデーでした。 |
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