2003年02月13日(木)  彼女がお風呂の間に書く日記。
深夜の電話は決まってあの子。
 
「火傷したっ!」
「えっ、ウソ?」
「ホントッ!」
「何で?」
「そうめん茹でてたのっ!」
「そうめん?」
「そうめん!」
「痛いの?」
「痛いのっ!」
「それじゃあ電話なんてしないで冷やさないといけないよ」
「冷やしたのっ!」
「氷じゃなくて流水で冷やした方がいいみたいだよ」
「知ってるっ!」
「それじゃお大事にね」
「冷たいっ!」
「流水が?」
「お前がっ!」
 
そして彼女は電話を切った。どうやら彼女は火傷をしたらしい。左手を火傷して範囲は小さいと言うけれど、しきりに痛い痛いと言っている。このように僕が彼女への接し方を間違えるとすぐに電話を切られる。こういうときはどういう対処をしていいのかわからない。対処に右往左往するのではなくて、最初から諦めているからついいい加減な対応をしてしまう。それについていつも謝りたいけど、恥かしくてなかなか言い出せない。言い出せないもなにも何をどうやって謝っていいのかわからない。まぁ、小説の続きでも読んで気長に待とう。そのうち絶対かかってくるから。ほらね。
 
「ねぇ、体重計買ってくれた?」
「え? 火傷もう大丈夫なの?」
「痛いのっ!」
 
彼女は最近アパートを引越して、新しい体重計が欲しいと言って、それじゃあ僕が引越し祝いに買ってあげると言って、今日電器屋や雑貨屋に行って体重計を探したけれど、どれもデザインがイマイチ。まぁ、僕が使うんじゃないからそういうものは妥協してさっさとレジに持って行けば済む話なんだけど、僕はそういうことができない。そもそも体重計なんてどこで買っていいのかわからない。体重計専門店とか開業したらきっと儲かるだろうな。体重が気になるアナタに朗報! 体重が−10キロで表示されるAI内蔵デジタル体重計新発売! なんてね。要は気持ちの問題なんだから、−10キロでも構いやしないよ。
 
「今日いろんなとこまわって探したんだよ。だけどどれもイマイチで悩んでいるんだ」
「ふぅん」
「彼氏がいる女性へのプレゼントを探すのに僕はこんなに頭を悩ましているんだ」
「彼氏がいる女性へプレゼントするその行為が好きなくせに」
 
彼女はいちいち的を射た発言をするので癪に触るというかドキドキする。
 
「まぁ、これから悩んで、これだ! っていう体重計を自信を持って贈るよ」
「ありがと」
「……」
「……」
「で、火傷」
「痛いのっ!」
「生理は?」
「やっときたのっ!」
「そりゃあ良かったね」
「ホントに良かった」
「安心」
「安心」
「で、火傷」
「痛いのっ!」
「お大事にね」
「冷たいっ!」
「流水が?」
「お前がっ!」

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