2003年01月27日(月)  羨望、嫉妬、概ね嫌味。
「あなたは何やっても許されるんだから」
 
看護婦さんが羨望と嫉妬と、おおむね嫌味を込めて言った。
しかし僕はそんなこと言われる筋合いはない。だって、みんな許してくれないもの。
 
「あなたこの前ミスしたでしょ」
 
なんでそういうことまで知ってるんだろう。確かに数日前、書類の記載ミスがあって、記載ミスというか記載漏れなんだけど、いや、あぁ、ここも記載しなきゃならないよなぁ。面倒臭いなぁ。ていうか書類作成とか看護師の仕事じゃないよなぁ。たまんないよなぁ。こんなちっぽけな記入欄くらい無視しても地球は回る。
 
という事務系の仕事に関してはかなりやっつけ仕事でやっつけ放題なのだが、
先日、役所から電話が来て、「先日書いて戴いた書類に1つ記入漏れがございました」なんて、わかってるよ。それ僕が書いたんだよ。確信犯なんだよ。あ、はい、はい。婦長さん? あ、はい。ちょっとお待ち下さい。婦長さーん! お電話ですよー! なんか役所っぽーい!
 
というわけで僕は昼休みの時間を充分に使って婦長さんに怒られていました。
僕は怒られるときは一切言い訳をしない。いや、今回の場合言い訳も何も僕の確信犯的なミスの所為で怒られるのも仕方ないんだけど、例えば、僕が全然悪くなかった場合、例えば、後輩のミスとか、先輩のミスで、何故か僕の所為にされた場合、「あ、あぁそれ僕じゃないですよ。あいつ(後輩)がしてた仕事ですよ」とか
「あ、あぁそれ僕じゃないですよ。あの方(先輩)がしてた仕事ですよ」なんて
そんな、ことは、言わない。例えそれが僕への濡れ衣であっても、僕はそれを否定しない。
 
そいういうのって、何というか、例えば婦長さんが僕を怒ったとする。だけどそれは僕がしたことがないので僕は怒られる筋合いはない。という旨を婦長さんに伝える。あら、そうなの、ゴメンね。と婦長さんは言ってミスを犯した当人を探し出し、その人を怒る。ね。こういうこと。婦長さんは2度も怒らなければいけないということ。「怒る」ということは多分、ものすごいエネルギーを使うことだと思うんです。だからできるだけそういうエネルギーは最小限に抑えましょう。僕でよかったら僕だけに怒ってればいいよ。ね。婦長さん。
 
「もう、いいですか」
 
昼休みも佳境に入り、僕はまだ怒られ続けている。婦長室で弁当を食べながら、そもそもこういう姿勢がいけないと思うのだけど、とにかく怒られ続けている。怒っている婦長さんはのり弁を食べて僕はヒレカツ弁当を食べている。こういう姿勢もいけない。謙虚じゃない。
 
「よくないわよ。次回から気をつけなさい。それはそうと、温泉、いつ行こっか」
 
僕は今度、何故か婦長さんと、温泉に行くことを約束してしまったのだ。
しかも怒られている最中に、何というか、2人きりの辛い空気に耐えられなくなって、とにかく話題を、話題を逸らさなければ、僕が、昼休みが、駄目になってしまう。婦長さん、温泉行きませんか。すごい綺麗な露天風呂あるんですよ。ね。たまにはいいじゃないですか。なんて僕はちっとも行きたくないのに、ただその時間を逃れたいだけで重大な約束をしてしまう。
 
「あなたは何やっても許されるんだから」
 
看護婦さんが羨望と嫉妬と、おおむね嫌味を込めて言った。
しかし僕はそんなこと言われる筋合いはない。だって、みんな許してくれないもの。

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