2003年01月16日(木)  投資信託。
所用で職場に来た銀行員に投資信託を勧められた。
この銀行員は僕と同じ歳で、よく行くショットバーでよく顔を合わすのだけど、
ことあるごとに「ノルマがねぇ、ノルマが大変でねぇ」と口から出るのはノルマばかり。
口調も動作もなんだか疲れ果てた中年のような匂いがする。
こっちはいい気分でカティーサークなんて飲んでいるんだけど、こうノルマノルマ言われるとさすがに気が滅入ってしまう。
 
「で、投資信託どうですか?」
銀行員がいつもの泣き笑いのような困った顔をして僕に勧める。
今日はいつものショットバーじゃなくて、僕はヨレヨレの白衣を着て銀行員は洋服の青山的なスーツを着ている。
僕はこれから病室へ血圧測定をして点滴をうって内服薬の整理をしなければならないのだ。
投資信託どころじゃない。「で、投資信託……」あぁうるさい。
 
「そもそもね、僕には資産といえるものがまるで無いんだもの。無理な話だよ」
「大丈夫です。投資信託とはお客様から集めた資金をひとつにまとめ、投信会社から複数の株式や債券などに投資し、その成果をお客様に分配する仕組みの商品です」
「全く資産がないと言っている僕に、どこがどう具体的に大丈夫なんだ」
「まぁ、そう言わずに」
 
多分、営業には不向きな人間なんだと思う。
 
「いやいや専門化が運用するからその点は大丈夫ですよ」
「だから! 『その点』を指す意味を間違えているんだ! 僕はさっきからお金がないって言ってるじゃないか!」
「それでは安定重視型タイプなんていかがでしょうか」
「よーよーよー銀行員さん、僕はすっかり疲れてしまったよ。まだ仕事も数えきれないほど残ってるんだ。それなのに見てみろ。キミの話を聞いているだけでやつれてきたじゃないか。投資信託だか投身自殺だか知らないけどそんな成金趣味にうつつを抜かすほど生活に潤いがあるわけじゃないんだ。毎日が精一杯なんだ。ほら見てみろこの消毒液で荒れ果てた両手を。手が荒れるけど手取り20万。この金は家賃と車のローンとキリン一番搾りに変わって手元に残るのは小銭ばかり。虚し。だいたいね、僕はこれだけ女の子に投資してるってのに、利益がまったくないんだ。さんざん資産を注ぎ込んだ挙句さようならの元本割れだよ。たまんないよ。投資信託はハイリスク・ハイリターン? ふん、悠長なもんだよ。恋愛はね、ハイリスク・ハイリスクなんだよ。仕事に戻る!」

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