2002年05月25日(土)
本日はオヒガラもよく



(れん) 晴れ

僕の好きなインドの表現
「泥の濡れた匂い」
(smell of wet mud)
砂の渇いた匂いの毎日に
みな待ちわびて
デリーだとさしずめ
smell of wet asphalt


木曜、書きこにも書きましたが、木曜金曜と夕方雨降りました。突然ものすごい暴風が吹き荒れ豪快な砂嵐、続いていよいよの待望の雨。おとついのお湿り程度とはちょっと違い、ちゃんと道とか壁が濡れるくらい。お湿りと濡れるの違い。まあしかし15分で乾いてしまいました。でもちょっと気温下がってくれて嬉しかった。しかし降ったあとの二時間、5時半から7時半までは蒸して蒸して。書いて見て思ったんですが蒸して蒸して蒸してって漢字、ついつい肉まんアンまん中華まん連想してしまいますね。クアラルンプールで食べたデカ肉まんめちゃくちゃダシ汁ジューシーしかもホットで火傷しそう旨かった。インドだとカレーマン。そうそう、食べ物の話ついでに、先日いただいたスナック菓子はカールのゴールガッパー味でした。ゴールガッパーの説明、これはムズイですねえ。つぎ日本のインド料理屋に行ったときに注文してみたらいいですよ。これがあったらそこはすごい料理屋。じゃない、王道道端スナック屋。インドに来たことある人は見かけたかもしれませんが、とにかく道端で食べるスナックです。左手に小鉢をもち、右手で一口サイズの揚げたローティー(揚げたローティーは大小問わずプーリーと呼びます)、指でちょっと穴を開けてそこに甘辛アルーカレー(ジャガカレー)を入れて左手小鉢の酸っぱ辛い爽やか冷スープにたっぷり浸してパクッと一口でいただいてください。次から次へと兄ちゃんがくれます。しかし注意、生水、しかも氷使用ですんでおなかにくる危険大。そう、カールのゴールガッパー味。旨かったけど、でもこれは日本じゃあたんない。王道道端スナック軍団も特集組みたいですねえ。パープリ、チョウレバトラ、アルーティッキ、サンバルワダ、ダヒーワダ、ダヒーイドゥリ、ジャマーマスジットのパコラ一式などなど。スナック有名マーケットをバイクで回って取材して味くらべ。なにせ僕なんかはこの10ルピーの美味で生きてるクチだから、やっぱり愛着。

雨の話。でもやっぱり雨が降るとホントに嬉しくなります。雨はインドでは縁起がいい、喜ばしいこと。日本の結婚式なんかじゃさしずめ「本日はオヒガラもよく」ってやっぱり晴天、でもインドじゃ雨ざあざあうわあいやったぜ「本日はオヒガラもよく」です。いろんなところでこのこと紹介されてるけど、なかなかでも日本人には実感できないと思います。僕もこのインド人の気持ち、雨だ嬉し嬉し嬉しっての、三年目から。それまでは、雨降るとガキどもは喚きちらしぎゃーこらおらびながら走り回る、大人の男どもは用もないのに友だちとバイクでノンヘル町中雄叫びあげながら走り回るやらいきなり上半身裸で屋上にあがり濡れた髪からの雫を両手でかきあげシバキあげちょっと筋肉ポーズとったりなんかもう映画スターの気分に泥酔、僕は窓からこの光景眺めつつこいつら絶対アホ泥の混じった酸性雨汚染ランク世界第四位デリー絶対体に猛毒などなど。女のこが雨の中このくらいハッスルしてくれると個人的にははかなり喜ばし雨雨ふれふれなのですがしかし女のこはこんなアホなことしませんあれは映画で現実とは違うわわたしと女優は残念だけどやっぱり違うわええ心得てますわオトコドモはいくつになってもやっぱり夢がご馳走のコドモなのねとアンニュイななかにもどこか心ざわついてしまってる眼差しを雨と狂乱の男子に注いで直隠しに心の奥のときめきを。しかし月日とは恐ろしいもので、環境とは強力なもので、きのう雨降り出すや否や僕は無意識についついシャツを脱いでしまっておりアタマの中ではベランダに出て雨を浴びると気持ちいいだろうしちょっとなにも下垂るいいおとこっぽいかも、誘惑が猛烈な。過渡期の人間というテーマを以前出しましたが、インド人化注意勧告です。やっぱりどんなに後で蒸しちゃって苦しくても、汚染されまくった酸性雨でも、ごみと泥と牛の糞と下水溢れ返りで道がどろどろになってサンダルもバイクもスリップしまくりでも、それでもからからに乾いたこころを潤してくれそうで、いろんなものを洗い流してくれそうで、やっぱり雨は心躍ります。デリーの夏の苦しみをインドの皆と共有させてもらってる、その特別のご褒美だから、その味は格別なもの。なんときのうは夜にもまた少々雨が。砂嵐のおかげで部屋はざらざらだけど、でもこころはさっぱりホッと一息な一晩でした。雨が降ったのにこういうの変ですけど、ちょっとすがすがしい金曜の夜でした。

雨ではないのですが、非常に雲行きの怪しいインド・パキスタン情勢。いつ戦争はじまるか、とちょっとプロパガンダ臭いくらいな感じで連日報道されています。たしかにインドはかなり景気悪いし儲けてるのは上のほうのほんの一握りのやつらだけ。差別化どんどん進んじゃってて大衆の眼差しはどんより曇っちゃってほとんど真っ暗。夏の厳しさ停電水不足などなどみんなのフラストレーションは最高潮だし。グジャラートの暴動やその他のスキャンダルなどなど、国内政治むちゃくちゃで政府は批判の的、集中砲火浴びまくってるさなかだし。きくところによると今回のカシミール国境地帯の情勢は、普段とは格段の差の緊張感だというし。金曜の新聞一面には、核シェルターの記事。値段は未発表とのことでしたが、30人収容可、水、自家発電、トイレ、食料などの設備、96時間耐久とのこと。停電時の備えのインバーター(大型バッテリ)とかジェネレーター(自家発電)みたく、そのうち金持ちの家には核ミサイルに備えて核シェルターってのもあり?「ディープインパクト」という映画を観ましたが、隕石が地球に落ちる話。選ばれた人間だけがシェルターに。その他の大多数の人類は絶滅。あれは宇宙からの隕石ですが、こちらは人間が人殺しの為につくって、人間が人殺しの為に発射するもの。

いろんなものをみてきいて思うのですが、これはインドに限る話ではないと僕は強く思うのですが、あまりにも人間の生命が軽んじられている世の中だと。あまりにもエゴイスティックな人間社会だと。余りにもいろんなモノの関係が分断され差別化されてる現代だと。こうした嫌な面がいま世界で一番おもてに出ているインドですが、でもそのインド自身の中に、こうした嫌な面を乗り越えゆくカギがあると思い信じるのは、僕だけではないと思います。それこそがインドがインドたる所以だと願い信じるのは僕だけではないと思います。

◎日記の目次
▲この先のぺいじ
▼以前のぺいじ

○めいる

まさら通りへ