![]() |
![]() |
手づかみで刺身を食う男 〜ヴェルベットリボルバー「コントラバンド」考〜 - 2004年06月04日(金) 非常に疲れている。 蓄積した乳酸は動きを鈍らせ、 もたれた胃は食事を受け付けようとしない。 それでもこうやって日記を書き綴っているのは、 耳とそれに繋がる脳を覚醒させられてしまたからだ。 今日、ヴェルベット・リボルバーのデビューアルバム、 「コントラバンド」を聞いてしまったのである。 ヴェルベット・リボルバーは、 元ガンズ&ローゼスのスラッシュ、ダフ、マット、 そして元ストーンテンプルパイロッツのスコット、 hideのジルチにも参加していたデイブからなる新人バンドである。 元ガンズ組が3人いることから、海外メディアからは 「ガンズのカラオケ」とバカにされた彼ら。 当然、このCDを買う人の多くが、 ガンズ体験を経た世代であることは間違いない。 だが、銀盤に刻まれたその音は、リスナーが期待しているような、 '80sのLA流ロックンロールではない。 むしろサウンド的には、 ストーンテンプルパイロッツのほうが近いのではないか? もちろん、スラッシュ特有のギターも、 ダフのパンクっぽいベースも聞ける。 だが演奏にせよ、楽曲にせよ、元ガンズ組のロックンロール感覚 ---それはある種のカラ元気っぷりといってもいい--- が意外なほど薄められている。 ここにあるのはロックンロールとオルタナがごった煮になった、 現代的なサウンドなのである。 (頑固なメタルファン、ガンズファンの間で、 早くも拒否反応が出ているのは、そういう部分からだろう) では、なぜアルバムはこれほど現代感覚溢れるものになったのか? それはこのアルバムが「売れる必然性のあるもの」 でなければならなかったからだ。 思えばヴェルベット・リボルバーは、40歳過ぎのオヤジ集団なのである。 ツアーやアルバムを制作できるのは、多く見積もっても50歳くらいまで。 いや、鮮度の高い作品やパフォーマンスを提供することで考えれば、 この40代というのが最後のチャンスだろう。 またガンズ組にしても、あの成功からすでに10年も経過している。 全員、ソロやユニットでの活動を行ってはいたが、 それが順風満帆といったらウソになる。 そう、彼らは新しい成功に飢えているのだ。 と書くと誤解されそうだが、僕は成功することが間違いだとは思わない。 むしろ、最近のチャートにはびこる、 ツルリとした肌の産業パンク&ラップメタル勢に対して、 そればかりを売ろうとするレコード産業に対して、 戦い続けてきた男の意地を見せなくてはならないのだ。 ロックンロールとは、戦い続けなければならない業、性なのだから。 その思惑はこのバンドの創立時から見え隠れしている。 スコット加入以前、このバンドのリハーサルには 多くのボーカリストが参加した。 元スキッドロウや元バックチェリーなど、 明らかにメタル・ロックンロール路線のボーカリストが、 多く登用されたようだ。 だが「悪くはないが何かが違った」とスラッシュは語っている。 このバンドの初期には、 元ガンズのイジー・ストラドリンが参加していた。 イジーはガンズにおいて重要な存在だった。 ガンズのソングライターの一翼を担い、 スラッシュ自身、最新のインタビューでも 「いまだイジーは特別な存在だ」と答えているほどである。 だが今回のアルバムには、 イジーが関わった曲が一切入っていないのだ。 「BURRN!」誌のインタビューでスラッシュはこう発言している。 「数十曲のデモを作り、それをスコットに渡して、 彼が気に入った曲に詩を付けてもらったんだ」 ガンズとストーンテンプルパイロッツ。 本国における知名度を考えても、わが国でのそれを考えても、 またレコード・CDの売上という意味でも、 明らかにガンズのほうが上だ。 当然、このバンドはガンズ組の主導になっていてもおかしくない。 だがスラッシュとダフはそうしなかった。 スコットに曲を選ばせたのだ。 以上を総合すると、元ガンズ組は、 「ガンズ的なもの」を意図的に排除していたことがわかる。 ただのリバイバルや回顧主義では終わらない。 だが時代に迎合しようとも思わない… そんな元ガンズ組の意地が、アルバムをすばらしいものにしている。 この切迫感は痛快だ。 全米での1stシングルは「Slither」。 地味な曲だが、実にスコットが好きそうな曲だ。 公式サイト( http://www.velvetrevolver.net/ )で そのPVが見れるのだが、これがまたすごい。 スコットはまるでデヴィッドボウイかイギーポップかといった 狂気の沙汰を演じている。 さすが以前来日したときに、 スーパーで買った刺身パックを路上で食っていただけのことはある。 もちろん手づかみで、だ。 ...
|
![]() |
![]() |