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2003年06月05日(木)

お買い上げ

今度は、エアコンをつけてアクセルを踏むと、キュルキュルキュルキュルと音がしだした。
おかしいぞ。点検後の車がおかしい。
入院してた営業マン君。退院したかしら?
病み上がりに申し訳無いけど、電話してみよっかなぁ・・・

そう。あの点検の日。
17時まで終らない事を知り、母上と買物にも行った。
きっかけを与えたのは私だ。
車を購入した時に、カタログを貰った。
結婚式の引き出物でも良く貰うような、色んな物が載ってるヤツ。
友達の結婚式でももらった。だけど、欲しいものが一個も無かったりして。
おかげで、出すのをすっかり忘れてしまって。
申し込まないということはだ。引き出物を貰わなかったっつー事になるんだ。
損したな。もー、遅いけど。

その期限は今年の5月末までだった。約一年、申し込まずに何にするか悩みつづけていたのだ。
結局、お相手が欲しがった体脂肪計にしたのだが、

「私としては、ティファールの鍋セットが良かったんだよねぇ」

と母上に話したのだ。
あれを買えば、危険だといわれるアルミ製の鍋も、テフロンなのにテフロンが剥がれて意味が無くなったフライパンも捨てられる。
重ねて収納できるし、作ったものをそのまま冷蔵庫にも入れられる。
まさに便利品だと母上に力説してしまった。

これが、まずかった。

「それ、幾らぐらいするの?」

母上が食いついてきた。
正確な値段はわからないが、カタログ全体の品の値段から想定して、きっと1万はしないと思う。
そう言ってしまったからいけなかった。

「私もそれ、欲しいなぁ」

と言い出した。
出た。出たよ出た出たっ!
人が欲しいと言い出すと、特に娘の私が言い出すと、決まって母上は何の疑いも持たずに購入を決めるクセがある。
母上は勘違いしている。私が色んな事を良く知っていて、その情報は確かだと妙な信頼を私に寄せている。
それじゃなくても物欲が強い女なのに。

実家の大きな食器棚。
物欲のままに買った結果、トビラが閉まらないほどの状態にある。
よく、棚が崩れずに保たれているなと感心するほど皿皿皿がスシ詰だ。
父上が作ってくれたと思われる棚には、鍋の上に鍋を載せて、これまた棚が落ちないのが不思議なくらいに鍋鍋鍋。
レンジからシンクの下。その上の収納は、普通のアパートの倍は収納力があるにも関わらず、そこにもタッパやらボールやら鍋やらがギューギューと。
一つ取れば、全てが雪崩れてくる状態にある。
両親しか住んで居なかったのに、二つ有る冷蔵庫。
何十人来ても、部屋には入りきらないが、食器だけは足りるだろう。
何世帯か分の調理器具が揃っていると思われる。

そんな状態の母上に、更に物を買う機会を与えてしまった。
母上は言う。

「使って無い鍋もあるのよねぇ。あんた、要らない?」

要りませんって。
私の家にも、15年も持ってる鍋が全然傷んでくれなくて、捨てられずに困ってるのに。
だから、ティファールも、もう少し我慢しとこうと思っているのに。

結局、二人で近所のオリ○○ッ○に行く事になり。
手で買物カゴを持つかと思いきや、ガラガラ押す方を迷いも無く選び。
買う気マンマンだ。
まず、入ってすぐの炭に目を付けた。何キロかは忘れた。かなり大量のヤツ。
どうやら、庭の池(っつっても出来合いの2m無いぐらいのやつ)に投入するらしい。
それで、果たして池の水が綺麗になるかは疑問だが、炭の威力を信じてるので黙視した。
次に、ステンレスに丸い穴があいている料理番組で飾られているようなザルを発見。
おお。これ、カッコいいなぁ・・と私が呟いたのが間違いだった。
「ザルなんて、いっぱいあるだろうが」なんて言葉は聞いちゃ~、くれない。
さらには、ボールだ。4コ大中小セットも購入。
次に見つけたレンジでそのままチンできる、フタつきのお茶碗は
「茶碗一杯分以上、御飯が余る」
という理由から却下。

そして、やっと目的のティファール発見。3種類ほどあった。
母上の料理の腕からいって、温度付きは要らない。大体見ないし。
結局、フタ付きで3種類の大きさのセットで6千幾らのヤツに決定。
それで終るかと思いきや、次は梅酒用のビン大一個。
そして最後にガラガラとカゴを押して、母上はキッチンペーパー探しに出かけた。

あっという間のお買物。
躊躇したのは、ティファール選びぐらいの3分程度だ。
〆て1万数千円のお買い上げ。

最後に私がお勧めしたソフトクリームを購入。
「あら、さすがね。アンタは舌が肥えてるわ」
と誉められた。
食べながらエレベーターで一階分の駐車場に向かい、出入り口からすぐに止めた車に荷物をせっせとトランクに詰め込み、またガラガラとカゴを戻しに行く。
その間、半ば飽きれた気分でソフトクリーム舐め舐め待つ私。
車に乗り込み、
「すっげー買ったな」
と言うと、
「丁度欲しかったものがあったから、良かったわ」
と満足気な母上。

私の手には、まだ半分ほどしか食べていないソフトクリーム。
ハタと気付けば、母上が普通に運転をしていた。

「おかん、ソフトクリームはどうした?」

驚いて尋ねてみれば、

「とっくに食べ終わってるわよ?」

と申される。
あの、駐車場でガラガラカゴを戻した時に、ついでにコーン部の紙も捨ててきたと言う。
どう考えても。2分程度の出来事だ。
一口であのソフトクリームを口に投入したとしか思えん。

母上の料理や片付けの速さは、小さい頃から並じゃないと思って来たが。

買物ぐらい、もう少し考えてしなさいな。
食べ物ぐらい、ゆっくり味わいなさいな。

と娘は不安になるのであった。


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