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2003年05月30日(金)

白い御飯

昨日は仕事が終らず、お相手の家に着いたのが23時。

テーブルの私の席側に、ホイルで包まれたおにぎりがあった。
お相手は、夕飯を実家で食べると言っていたので、前回同様。
またお母様が私に作ってくれたのか?と勝手に判断した。
それにしては、お相手が言わなかったのが気になったのだが、食べてしまった。
その数十分後。一寝入りしたお相手が起きて来て
「なんか、食べたの?」と聞くので「おにぎり頂きました」と答えた。
すると、

「別にいいんだけど。あれ、明日俺が釣りに行く時用のおにぎりだったんだ」

と言われた。

釣りに行くって聞いて、お母様が翌日の昼のおにぎりと、オカズまで持たせてくれたらしい。
いや。別にいいけど。
先日のお相手の誕生日の時には、一枚3000円のなんとか牛のステーキを私の分も頂いた。
母親の誕生日も母の日も何もしない息子だけど、やっぱ可愛いんだろーな。

さて。
その可愛がられているお相手は、毎日のように誰かの真似をする。
勤務先の施設にる、可愛らしいお婆ちゃんの真似だ。
ヤツは、弱い御年寄りと子供には非常に優しい。強者にもめっぽう弱いが。

その中で、たびたび話に登場するお婆ちゃんがいる。
食事の介護が必要の無い(自分で食べる事ができる)お婆ちゃんだそうだ。
人によって、ミキサー食や普通の御飯、おかゆと分けられているらしく。
そのおばあちゃんは、おかゆが配られるらしい。

「御飯、ちゃんと食べれましたか?」

とお相手が聞くと、こう答えるそうだ。

「おかゆは、お腹が空くんです。家では、いつも白い御飯だったんです。」

それを聞いて、お相手が

「そうだよね。白い御飯がいいよね。」

と言うと

「白い御飯が食べたいです」

と答えるという。
この話を聞いたら、大概の人は「食べさせてあげなよ」って思うだろう。
私もそう思った。当然、お相手もそう思って上司に聞いたところ、白御飯に変ったという。
良かった良かった。そう思っていたのだが。

その話から2日後。また、そのお婆ちゃんの話が出た。
白い御飯に変ったのでは?と思っていたら、お粥に戻ってしまっていたらしい。
毎日、「白い御飯」を訴えるお婆ちゃんを可愛そうだと思うお相手は、
週1回だかである自分で食事を選べる日に、「白い御飯」をそのお婆ちゃんに持っていこうとしたそうだ。
でも、上司にダメだと言われてしまったらしい。

そのお婆ちゃんが「白い御飯禁止」な理由は嚥下の問題で。
以前にブッシュさんがプレッツェルを喉に詰まらせたが、ああいう事態を避ける為らしい。

家族からお預かりしているご老人に対し、安全第一に考えるのは当然。
当然で何より大事で責任重大なのは、分かるけど。
「自立支援」をモットーに掲げながら、現実はその「安全」を大前提に、結局は「拘束」に近い状態にあると、お相手は憤慨している。
足腰が弱っているから、一人で立ち上がってはいけない。
嚥下が上手に出来ないから、固形物は一人で食べさせてはいけない。
全ては、人手が足りない故だ。見てない所で何かがあるといけないっていう理由だ。
そのお婆ちゃんにしたって。
誰かが側で見ている事さえ出来れば、ゆっくりなら白い御飯で平気なハズだ。

そのお婆ちゃんは、農家の人で。お米を作ってきた人で。
きっと、誰よりも。小さい頃からお米を食べ、お米に想いがある人で。
そのお婆ちゃんが

「白い御飯がいいです。家ではいつも白い御飯食べてました。」

と言う姿は、私だったら見ていられない。
しかも、こう言ったそうだ。

「前の人は、手づかみで白い御飯を食べてました。」

この言葉の意味が、分かるだろうか?
病院と同じようにきっと、ベッドが配置された部屋なのだろう。
自分は、ちゃんとお箸も使って誰にも迷惑を掛けずに御飯が食べられるのに。
白い御飯を食べたいのに。
目の前の、お箸も使えないような人だって、白い御飯を食べれているのに。

せめて、部屋を移動するべきだとお相手は言う。
お粥しか出して上げられないのなら、せめて目の前で白い御飯を食べる人間の居ない部屋へ。

ちょうど昨日。
夕方にやってる渡鬼の再放送でやっていたのだが。
お寿司を食べてる子供の側で、ラーメンしか食べさせてもらえなければ、子供はいじける。
大人になってそういう環境は、余計に惨めに感じるだろう。

私に何が出来るわけでもないが、やるせない話だ。

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