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2002年11月15日(金)
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像は何色 |
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あまり、記憶を辿る作業はあえてしたくは無いのだが。 去年の今日は、義兄の通夜の日だった。翌日は告別式で。 今年は、その同じ日(明日)に父上の三回忌法要が行われる。 ついでに去年の10日は父上の一周忌法要で。その3日後に義兄が亡くなった。 バタバタバタと過ぎていく11月が恒例になりつつある。
我姉妹1号の息子君と久々に会ったのは、父上の病院でだった。 小さい頃の丸顔マルコメ君のイメージは一掃し、長い顔立ち無表情の青年がそこに立っていた。 何を誰が話し掛けても殆ど返事が無い。挨拶をしても、返って来ない。 何かを言えば、不機嫌な嫌そうな表情をする。 その無愛想さ加減に叔母である私としては、躾がなっとらんっ!と半ばあきれたものだ。
年頃の青年にとって、親兄弟もそうならば、親戚なんて存在はうざいだけなのだろう。 それを察知し、あえて彼は放置することが暗黙の了解状態になった。
義兄の通夜の日。 義兄と共に車に乗れるのは家族二人だけだったため、私が娘か息子を祭儀上まで送ることになった。 どう考えても、息子君はうざい叔母ちゃんである私の車は避けるだろうと予想していた。 ところが、何故か息子君が残ると言う。 思うに。複雑な年頃の彼にとっては、父親と一緒の車に乗る事の方が辛かったのだろう。 それに比べたら、うざい叔母ちゃんの方が彼にとっては気持ちの対処が出来た存在だったのだろう。
その日、夕方と言う事もあり道が混雑したため私は少々遅れ気味で息子君を迎えに行った。 遅くなってしまったと電話で言ったにも関わらず、階段を下りてくる息子君はマイペースだった。 息子君は、後部座席に乗ろうとしたが、生憎私の車は営業車のように荷物がいっぱいだった。 彼はもろに嫌そうな表情で、私の指示どおり助手席に乗った。
乗ってすぐ、近道になる駅までの道を知っているか?と私は尋ねた。 「あんま良く知らないんだけど・・・」 ぶつぶつ言いつつも、とりあえずこっちだと道を指示する息子君。 が、走ってすぐに一方通行になってしまうと、 「普段、自転車で通ってる道だから、合ってるかどうか分からない」 と、これまたぶつぶつ御丁寧に事情説明をしてくれた。
そんなこんなで、やっと駅前についたものの、そこから目指す街道に出る道が分からない。 息子君に尋ねるが、知らないという。そして、 「じゃぁ、iモードで調べりゃいいじゃん」 と提案していただいたが、生憎あるひ叔母ちゃんはiモード契約をしていないのだ。 「残念。必要が無いので、iモードじゃないんだな。メールはパソコンで十分だから」 と、これまた私としても御丁寧な事情説明を息子君にしてあげると、意外な事に彼は納得した様子。 この時代にiモードじゃねーのかよ?とバカにされるかと思ったら、徐に自分の携帯をいぢりだした。 しかし、一体彼が本当に調べてくれるのかも分からないので、私は我姉妹2号に電話をした。 息子君に現在位置を尋ねると「これは○○高校だ」と教えてくれた。
道が分かり、「こっちに行けばいいんだってさっ」と独り言のように呟いて、その高校に差し掛かると息子君がいきなり口を開いた。
「相変わらず、変な色の学校だな」
相変わらずと申されても、その時初めて見た高校なので、私は分からない。 が、これは、彼にしては珍しく世間話を口にしたという現象ではあるまいか? 叔母ちゃんは、なんだかドギマギしたよ。だから、
「ああ、そうだね。象さん色だね。」
なんてトンチンカンな事を言ってしまったのだよ。 すると、息子君は、むすっとした声で言ったんだ。
「象色は違うだろ。」
叔母ちゃんは悲しかったよ。 同じ血の色をして、同じ血が流れていて、同じ水色の建物を見てるというのに。 息子君と叔母ちゃんは、同じ物を思い描く事が出来ないんだね(号泣) でも、叔母ちゃんだからね。息子君が何色を想像したのかは分かったから、だから一生懸命言い訳したんだよ。
「だって、ダンボは水色じゃんかっ」
二人きりの車内の中で、この私の台詞はむなしかったよね。 せっかく、息子君が世間話をふってくれたのに、台無しにしちゃったね。 息子君が想像した象さんは、灰色なんだよね?リアリティーを追求してるんだね? でも、叔母ちゃんは思うよ。
息子君。 もうすこし、夢のある考え方をしなさい。 情緒あるものの見方をしなさい。 遊び心を持ちなさい。
私は知ってるんだよ。 顔を真っ赤にしてキミはウンウン力んでたんだよ。そのおしめを変えたのは私なんだよ。 キミが夜泣きが酷くても、起きようとしない母親の変わりに、まだ高校生だった叔母ちゃんは一生懸命抱っこしてあやしてあげたんだよ。 それにね。小学生だったキミがお喋りだったことも知ってるよ。 おじいちゃんは、あんまり孫に愛想が良くなかったからね。気をつかったんだろうね。 おじいちゃんが庭いぢりしている後ろにくっついて歩いて気の効いた事を言いたかったんだよね? おじいちゃんの趣味の盆栽である鉢植えの松を見て
「この松は、樹齢何歳?」
って聞いたんだってね? その時、おじいちゃんは、耳が遠いのをいい事に返事をしなかったでしょう? でもね。後で「あいつ、面白い事聞くんだよなーっ」って報告してたよ。 他にも、何やら小難しい事を言っては、おじいちゃんに聞こえないフリをされたでしょう? 決して、おじいちゃんは無視したわけじゃなくて、可笑しすぎて内心笑いを堪えてただけなんだよ。
そうだね。今でも、息子君は真面目だね。 小さい時から、その真面目君発言が逆に可笑しかったように、今も変わってないかもしれないね。 息子君の妹もお母さんも、キミがにやっとすると、相当可笑しいらしいよ。
だからね。きっと。 像は灰色だと頭の中で訂正しつつも、きっと「毛も生えてるんだぞ」って詳細なことまで考えていたんだろうなぁ・・・って。 叔母ちゃんは一人で想像して笑っておくことにするよ。
くすくすっ
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