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2002年08月07日(水)
小指の思ひ出 2
セミが盛大に鳴いております。
本日も、何やら最高気温34℃とか言ってましたねぇ・・・
こんな暑さの中、外での仕事じゃない事を有り難く思います。
ついでに、何の狂いも無く毎月恒例の日を迎え、会社勤めで無いことも有り難い。
夏場は暑い。けれど、こんな日の職場のキンキンの冷房は、あたしの腹痛腰痛を酷くするのですな。
なんにしても、この恵まれた日々を感謝感謝。
ってことで、ちょっと時間が空いたのでこり。
うーむ。何かイマひとつしっくりこない出来ですな。
さて。この暑い中、あたしのお相手は炎天下で仕事をしていることでしょう。
彼は、いわゆる肉体労働なんでありますな。
あたしとしては、別に相手の職業なんて拘りが無く。
まー、本音を言えば「安定」を選んで公務員とか、大手企業の事務職とか。
そういうのは、好きじゃないですな。ぬるま湯に浸かってる風に感じてしまうので。
で、父上の職業柄、職人さんが好きですわ。
外で、汗水たらして、何かを作り上げる肉体労働をしてる人。
好みです。
彼自身は、まー色々紆余曲折あって今の職業に居る事を、とても嫌がっておりますがね。
あたしは、立派な仕事だと思うし。ただ、誇りを持てない仕事なら辞めなさいなとは言いますが。
そう。あれは去年の夏のことでした。
自宅に戻ってすぐ、お相手からの電話が鳴りまして。
「指、切っちゃったよ」「これから手術だから」
と言われましたの。
なんのことやら、さっぱりで。とりあえず何か仕事上でやっちまったらしいと。
このクソ忙しい時になによ?と思ったことを覚えております。
はい。去年の夏も、仕事仕事仕事づくめの毎日でしてから。
その後、少しは落ち着いたと見えるお相手からまた電話が入り、
「左の小指がバッサリ落ちた」
と聞きました。
これは、大変なことですな。しかし、あたし。
「なにやってんの〜?」
と笑った事を覚えています。
その後、彼の友人からも電話を頂き、詳しい状況と病院の場所を教わりまして。
その時も、「心配だと思うけど」と言われましたが、確かにあたしは
「いやいや。御迷惑お掛けしてぇ〜」
と笑ったと思います。
そして、夕方になり、やっとの思いで仕事を片付け、社長に嘘をついてお相手の家に行き、とりあえずの着替え等を用意して病院に行きました。
病室に着くと、手術を終えて間もなくのお相手が、酸素マスクをした姿で横になっておりました。
全身麻酔での手術後の、なんとも言えない不快感さ加減というものを、あたしは良く知っています。
なので、あえて余計な事は言わず、せっせと荷物の整理等をしていました。
すると、お相手の会社の社長さまと、奥様がお見えになりました。
社長様は、谷村しんじ(元アリス)似の、ちょっぴり強面の方で、奥様はとても美しい方でした。
社長さまは、その顔からはちょっと意外な程、優しい声で、
「大丈夫か?大丈夫か?」
としきりにお相手を気遣って下さっていました。
そして、あたしに奥様と一緒になって、同じ事を聞きました。
「びっくりしたでしょう?」と。
そうですな。普通なら、自分の彼氏が全身麻酔が必要なほどの怪我をしたと電話を貰ったら、やっぱり驚くべきなのかもしれません。
ところが、あたしは驚かなかったという事実がここに。
よって、あたしは
「いえ・・・」と言葉を濁したところ、お相手が
「いやいや、こいつ、電話の向こうで笑ってましたから」
とバカ正直に答えてしまいました。
一瞬、社長さまも、奥様も、戸惑いの色を隠せないでおられましたが・・・
ハハハハハハ
お相手の左の小指は、第一間接から骨まで砕けてしまったとのこと。
どうやら、手術の前に
「丸めますか?付けますか?」
とお医者様に質問されたぐらいの状況だったそうです。
いやいや。お相手は素人でっせ。くっつけるに決まってるでしょ〜っ
ってなことで、彼の指は最新の医療によって無事指の形を取り戻しました。
どうやら、くっつける時に、皮膚の移植も必要だったらしく、彼の左の手首には移植すべく皮膚を切り取られた、三日月マークが残っております。
だので、最初は良かったのです。手首にまで包帯を巻いておりましたから。
それから数日が経ち、少しずつ包帯の範囲が少なくなっていきます。
そう。小指だけ包帯に・・・・・・
元々、人を集める性格のお相手は、病室の方だけではなく、同じ病棟の様々な人と仲良くなりました。
ついでに、人が悪い性格でもあるので、それが災いしました。
病院というのは、知り合うと「どこが悪いのですか?」という社交辞令が適用されることが多いものです。
よって、お相手も聞かれました。そして、答えました。
「いやぁ〜、落とし前つけるために、ちょっとね・・・」
いやいや。
病室に、彼の友人たちが御見舞いに来た時など、
「「くっつかなかったら、職業変えないといけないとこだったねぇ・・・」
などと、あたしも一緒になって言いつつ笑っておりましたがね。
それは、友人同士だから分かる話で。
たまたま、病院で知り合っただけの人に、通用する話ではありません。
よって、後々知る事になったのですが、彼の「落とし前」を本気にした方がおったのですわ。
これがまた、運悪く、お寿司屋の旦那さんで、しかも地元では有名な店で。
その旦那さん。来る客、知り合いの客、皆に
「落とし前で指落とした、若いヤツが入院しててさぁ〜」
と話してしまっていたんだそうな。
その旦那。後日、違うという話を知り、とても謝っておられましたがね。
どっちもどっちかと。
結局、入院生活は、確か一ヶ月半ぐらいだったかと。
あたしは毎日かかさず御見舞いに行き、病院がお相手のアパートからの方が近かったのもあって、居住者の居なくなった部屋で毎晩、ゆるりと過ごす日々。
退院してから、お相手に聞かれました。
「俺が入院してる間、大変だった?」と。
あたしは、にこにこ答えました。
「ううん。毎日、貴方の家で快適に過ごしてました」と。
大体、お相手は小姑みたいに五月蝿いのに対し、あたしは家では嫌な時には何もやらず、やる時に一気にやるタイプ。
よって、一緒に長く居ると喧嘩の元が発生するんですな。
自分の家ではなく、人の家で小姑も居ない。しかも、自分の家より広いしテレビの映りも良いし。
散らかしても、面倒だからと洗物を翌日にまわしても、誰も文句を言わないなんて、とても快適すぎて。
しかも、一日数時間だけ、お相手と病院で会うだけ。
ちょっとの時間だから、喧嘩する必要も無いし。お見舞いに行くのはあたしだから、感謝されるし。
なんて、ステキな一ヵ月半だったことでしょう♪
退院してきてからも、やはり一度切断された指は、元のようにはいかず。
第一間接から、少し内側に曲がった感じでくっついており、本人も何やら時々その指に癇癪を起こしておりました。
でも、あたしは
「くっついただけ、良かったじゃん」
の一言しか言わず。
お相手が、如何に前と比べて不自由になったかを訴えたところで、
「切れたもんが、完全に元通りになるわけも無いだろうが」
と答えるだけ。
して、終いには
「あたしと一緒。お揃いになったねぇ〜〜」
と何の慰めにもならないような、しかしあたしにとっては宥めているつもりの言葉によって、その後、彼は文句を言わなくなりました。
そう。
あたしの小指が曲がらないから、お相手の指事件を「すごい大変な事」と思えなかったという。
おまけに、あたしの父上も若い頃にプレス機か何かで指を一本切断しており、第二関節で丸くしてあって。
だから、そんなこともあるんだから、くっついてるだけ良かったと思ってしまうという。
それに、父上も仕事上の事故で全身打撲で入院したこともあるし。
なんにせよ、あたしには免疫がありすぎてしまったということか。
可哀想に。
あたしが彼女でなければ、彼は同情してもらえたかもしれない。
もっともっと、可愛そがってもらえたかもしれな。
もっともっと、労わりの言葉をもらえたのかもしれない。
でもね。
あたしじゃなかったら、
全身麻酔の手術をしたことがあるあたしじゃなかったら、
入院生活を二回したことがあるあたしじゃなかったら、
病人が家族に居たあたしじゃなかったら、
きっと、仕事を抱えてるのに、毎日自宅から車で3-40分の距離を、見舞なんか行かなかったと思うのよね。
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