日々のあわ
あかり 



 金木犀

金木犀が香る朝の小道。自転車で走る。空は今にも雨が降り出しそうな重たい灰色。
それでも空気はとても清涼だ。

うっすら寒くて冷たい身体。でも腰の周りは湿った熱で温かい。自転車の後ろで次男が私の腰にしがみついて歌を歌っている。
今日は予定があって半休をとったので、私が彼を保育園に送る。
「それでね・・・あのね・・・・」歌の合間にもごもごしゃべりながら、時折思い出したようにぎゅっとしがみつく腕に力を入れる次男。

なるほどね。
夫がどんなに飲んで朝方帰宅しようとも、ぜったい息子の保育園の送りはサボらない。そのわけはこれか。
そういえば、「あの時間が好きなんだよなぁ〜」と、ゆるんだ顔で言ってたね。

これでまた、金木犀の香りで胸がきゅぅっとなる曖昧な理由が一つ増えた。いつも立ち止まって振り返る、その香りに。


「季節の花 300」より


2004年10月08日(金)
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