窓のそと(Diary by 久野那美)
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お芝居の中で本を燃やした。 本番中に「本を燃やすなんて…」という批判をいくつか頂いた。 批判だったのか戸惑いの声だったのか…。 いずれにせよ本を燃やす役の役者さんが「私…悪役に見えるんでしょうか…。」 とわけのわからないおちこみ方をしてしまってなんだか見るに忍びないので、燃やしたあとに炎の前で手を合わせてもらうことにした。
誰も読まなくなった本が燃やされて、その煙がいつも空に上がっている「図書館の裏庭」が舞台のお芝居。 煙は空高く上がり、遠くにいるひとの目に触れる。 煙を見て、それに釣られるようにそこへ尋ねてくるひとがいる。
そこでは本が弔われている。 そこは図書館ではなく、図書館の裏庭で、 だからいつも、そこには火が絶えなくて。 だからいつも、そこは「少しは暖かい」。
あったことすら誰にもしられず、ただ書庫の中で埃をかぶっていく本…。このまま、もしかしたら永遠に…。 エプロンの女はそれを少しずつ出してきて、裏庭で燃やすのだ。
暴力だと思われることも、彼女は知っている。かもしれない。
その日は休館日で、そこは図書館の扉の外。 びゅーびゅー風が吹いている。
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