華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2005年08月01日(月)

愛の囁きも聞こえない。 〜非日常空間〜


都心にほど近い、とある住宅街にそびえる6階建てマンション。

平日の夜8時過ぎ。

大理石風のフロントオートロックのドアホンに401と打ち込む。
呼出ボタンを押すと、無言で鍵が開く。
足音の響く通路を歩きながら、
401号室へ向かった。

ドアに掛けられた、小さな熊のぬいぐるみ。
これがこの店のOPENの暗号。

ドアチャイムを鳴らす。
内側から音を立てて鍵が開き、熊そっくりのオーナーが現れる。

オーナーは訝しげに俺を一瞥すると、二度頷いた。
三度目なので、もう見分けはつくだろう。
入場料として大枚一枚を手渡すと、ようやく入店を許される。

俺は単独男性専用の待合室に通された。
10畳ほどのリビングを取り囲むように置かれたソファ。
薄い間接照明のみで随分薄暗い。

目を凝らすと、すでに5〜6人ほどの男が陣取っていた。
皆、裸で腰に一枚バスタオルを巻いている。

互いに会話を交わす事無く、皆好き勝手に時間を潰している。
中央のテレビにはただ映像が流れている。
CSのアダルトチャンネルらしき画像は、誰からも注目されていない。

程なくオーナーが顔を出し、俺を呼び出した。
バスタオルと籠を差し出し、シャワーを浴びるよう促した。

奥の部屋からは、生身の女の派手な喘ぎ声が響いていた・・・



『カップルスペース』なる新手のサークルがブームとなっている。
ここ最近、名古屋市界隈でも新しい店舗が幾つか登場している。

ちょっと前ならカップル喫茶といった言い方もあった。
しかし「喫茶」として機能するには様々な制約があるそうで、
最近ではこのような呼び方をされているようである。


マンションなどの一室に趣味のカップルや単独の男性、女性が集い、
互いの性行為を覗いたり、気の合う相手の身体を求め合う。

男性やカップルはサークルの参加料としていくらかの金銭が絡むが、
性行為の代償としての料金は掛らないので、「売春」とはならない。
幾らそこで女性と姦通しても、相手した女性への給金は発生しない。


その場の流れでスワッピング、カップルの性行為の見物、
または一人の女性に多数の男性とのプレイ…と、
参加するカップルによっての流動的なものもあるが、
普段ではなかなか実現できない『非現実の世界』が体験できる。

カップルでも単独の参加者でも、メインは女性だ。
最近は学生やOLなどの若い女性や堅い職業につく女性も珍しくない。
女性に気に入られるよう様々な工夫がなされている。

カップルであれば比較的安価な料金で、店内では自由に振舞える。
良心的な店ではSexや他者との交わりを強要されたりすることは無い。

単独参加の女性は殆どの店舗で無料である。
素顔や自らの痴態をまともに見られないための、間接照明の店内。
清潔なタオルやバスロープ。
気分を盛り上げるためのSMやおもちゃ系の小道具。

また単独男性とのプレイや接触の権限は女性側にあり、
女性側が許可を出さない限り男性は参加できない仕組みだ。
女性側の気分や男性側の質(容姿、年齢など)で断りたい場合、
はっきりとNGを出せばよいだけだ。

女性に配慮する分、厳しい規約があるのは男の単独参加者になる。
入会金や参加費など金銭的な負担も女性やカップルに比べて大きい。
女性側に主導権があるため、男性はただ声が掛かるのを待つだけだ。
待つだけ待って、結局何も起こらない時もある。
それも店側の責任ではないので、誰も責められない。


しかし男性の参加者が絶えないという。
おそらく一種のギャンブル性があるからだろう。

女性の雰囲気や性欲の盛り上がりによっては、男性の欲求を満たして余りある、
思いも寄らぬハプニングもある。

男のみならず、女も自らの性欲を隠すような時代ではない。

俺は東京や大阪への出張などの際、また名古屋で話題のカップルスペースに
何度か興味本位で単独男性として潜入した事がある。

目前で繰り広げられる非日常の光景を興味津々で見ていた。

俺がこの店に来たのは3回目。
最初はさすがの俺も驚きのあまり、柄にも無く萎縮してしまった。
しかし非日常の光景を眺めたり体験できる魅力を感じ始めていたからだ。
熊そっくりのオーナーは気に入らないが・・・



シャワーから出た俺は、先ほどの待合室に戻る。
男が二人ほど減っていた。
きっと奥の部屋に行き、プレイに参加しているからだろう。
俺はソファに座り、漫然と流れるAVの画像を見流していた。

刻々と順番に男性が入れ替わる。
新たに男性が呼ばれたかと思うと、先ほどの男性が一仕事終えてか戻ってくる。

小一時間ほど経ったか、ようやく俺の順番が巡ってきた。

中年女性の派手な喘ぎ声が響く廊下を奥へと進む。
突如オーナーが耳打ちしてくる。


 「お客さん、身体障害者大丈夫?」
「?」


最初、何の事を言っているのか分からなかった。

 「うちは単独女性も来るんだけど、丁度お客さんの順番がその娘でね」
「どういう人なの?」


俺が問い直すと、オーナーは顎を部屋の奥に向けた。
色白の小柄な20代半ばくらいの女性が座って雑誌を眺めている。
緩やかなソバージュヘアと白いバスローブ姿が艶やかだ。
眉間の深い皺以外、一見何の変哲も無い女性である。


 「この娘、常連なんだけど・・・」


実は聴覚障害者だ、の意を差別用語で俺に打ち明ける。
楽しむ分には特に問題が無いのなら、別段構わないだろう。

 「そう言ってもらえると助かるよ・・・嫌がる人も多くてね」
「なぜ?」
 
 「やっぱり五体満足の女が良いって事なんでしょうね」
「そりゃ・・・ねぇ」

 「しっかりしていて感度も良いので、気が合えば楽しめると思うよ」
「そうですか」

 「ではセッティングしますね」


<以下次号>








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