華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2004年10月04日(月)

遠くで私を叱って。 〜瞳の奥〜

<前号より続く>



「え?そんな事無いでしょ。でもお金が目的じゃなさそうだね?」
 「・・・」


無言だったが、ミカは小さく顎を引く。

俺は風俗を生業とする女性に対して、偏見はない。
しかし、ミカはどう見てもこの仕事を本気で行う様子ではない。


「アイマスク、良ければ外していいよ」

さかんにアイマスクの上から目の辺りを気にするミカに、俺はそう声を掛けた。


 「でも・・・」
「大丈夫、写真なんか撮らないから(笑)」

 「じゃ・・・」


アイマスクを外したミカ。
一瞬眩しそうに顔を歪めたが、ふと俺の顔を見た。


驚いた。


意志の強そうな瞳をした、聡明な顔立ちの女だった。

瞳の周囲には、最近流行のラメ。
一瞬、涙で潤んでいるのかと見紛う。

しかし、瞳の奥もユラユラとかすかに光を反す。
ラメが届かないはずの瞳の奥も間違いなく潤んでいた。


「・・・彼、遠くに居るんだよね?」
 「・・・」

「会いたいよな。・・・ミカちゃん、寂しかったんだ?」
 「・・・うっ」


瞳の奥の煌きは、我慢した涙の痕跡。

俺が茶化しがてら、軽々しく彼の話題を持ち出した結果、
生真面目な彼女の寂しさに耐える心を傷付けていたのか。


その後も短い時間ながら、ミカは彼への揺るぎない愛情と、その分孤独の寂しさに
耐えられない苦しみを確実な言葉にした。

ミカにとって、この仕事は彼の居ない寂しさを紛らわせるための行為・・・
いや、その寂しさをアピールするパフォーマンスだった。海外に居る恋人へ向けての。

決して届かない、届いてはいけない…でも分かってほしい、この思い。
仕事だと分かっていても、我侭と分かっていても、耐え切れない苦しみの代償。
愛情の深さは、すなわち苦しみの深さ。


愚犯少年・少女には、犯罪を犯罪と意識していない事が多い。
それは本気で他人に迷惑を掛けようとは思っていないから意識が薄いのだ。

彼らが抱く「自分の抱える気持ちを周囲に分かって欲しい」欲求。

自分の寂しさや苦しみを訴えたい、身の回りの人間に理解して欲しい・・・

一見、稚拙で短絡的な愚犯行為でも、裏に潜む原因は彼らの持った心の闇。
日々孤独で不安で、自分ではどう対処していけばよいか分からなくなり、
同じような境遇を持つ連中と出会い、群れて、時に暴走する。


よく見かけるコンビニエンスストアにたむろする夜光虫族しかり。
いきなり何ら関係ない他人を襲い、殺傷する通り魔の若者しかり。
いつぞやの理解し難い教義の宗教団体が先導する、一連の行為しかり。


まだ群れる事が出来る連中は幸せなのかもしれない。
もっと問題なのは、群れる事すら出来ない者が増えつつある事だ。

あるものは無関係な人へ憤りを向け、社会を震え上がらせる凶悪犯罪に走る。
あるものは一番身近な存在の家族を内側から崩壊させる引き篭もりに走る。
あるものは些細な理由からいきなり同級生にナイフを付き立てて生命を奪う。
あるものは他人に刃を向けられず、ついに自らの手首に傷を付けてしまう。


ミカは恋人が身近に居ない寂しさを愛する彼に理解してもらいたかった。
そして寂しさに負け、愚かなアルバイトに就く自分を心配して欲しかった。
そして叱って欲しかった。


彼女の口ぶりや話し方から、そんな事を読み取った。


客への口でのサービスも『ハプニング』も許さないのは、
ミカの…いや本名の彼女の、いわば裏切り行為を続ける彼への愛を貫くための
最低限の「自分との約束」なのだろう。

身体は弄ばれても、心までは絶対に許さない。
彼女からにじみ出るいじらしさ。

生真面目で芯の通った内面である。


しかし俺は客だ。
きちんと店側の示す料金を払ってこの娘に付いたのだから、
料金に似合ったサービスを受けて当然ではないか。

そう言って強引にサービスを頼み込めば、きっと生真面目な彼女を
口説き落とせるかもしれない。

でもそうできないのが、俺の甘い部分だったりする。


俺はミカを抱き締めた。
最初ミカは身を固くした。

「確かに間違っているかも知れないけど、君は自分の決めた枠の中で
 仕事しているんだ。彼に対しても最低限の貞操を守っているじゃないか。
 それは・・・きっと俺は尊いものだと思うよ」

 「そんな言葉掛けてくれたの、お客さんが初めて・・・」


気を許したのか、ミカは俺に身を委ねてきた。
適度に脂肪の乗った、きめ細かい肌が本当に心地良い。

しばらく抱き合っていると、制限時間の終焉を告げるベルが鳴った。


「延長できない?」
 「え、なんで?」

意外そうな表情を浮かべるミカ。

「君が気に入ったから」
 「だって、私、何もできないよ?」

「いいよ、気に入ったんだから」
 「嘘・・・嬉しいけど、延長ってどうするんだろう?」


ミカはまだ延長を勝ち取った事がなかった。
事務所に連絡し、たどたどしく延長を告げる。


 「事務所、いいって」
「良かった・・・じゃ、もう少し一緒に居られるな」


俺はベッドで再びミカを抱き締め、頬に口付けた。
そして頬から耳、首筋と唇を這わせる。
ミカはくすぐったがり、思わず笑い声を漏らす。

まだ開発されていない、生娘の身体。
しかし、ここだけは別だったようだ。

俺は背後からミカの首筋やうなじに口付けながら、
ミカの乳房を掌で大きく揉みしだく。
そして敏感に反応し、立つ乳首を親指と薬指で摘み、転がす。

ミカは快楽から吐息を漏らす。

 「いや・・・変な感じがするの・・・」
「ドキドキしているんだ?」

 「うん・・・ねぇ、触って欲しい」
「どこ?」

 「・・・」


ミカは大胆にも俺にねだってきた。しかし次の言葉が続かない。


「ちゃんと言えないと、俺は何もできないよ」
 「・・・恥ずかしい、言わせないで・・・」

「じゃ、言ってあげるよ。そうなら返事して」


ミカは頷く。


「背中」
「お腹」
「脇腹」
「脚」
「指」


ミカを焦らすように、俺はあえて関係ない個所を口にしてみた。
彼女は頷かない。


「じゃ、ここ?」

俺はミカの内腿の付け根に指を這わせた。
ミカの身体がビクッと波打つ。


「驚いた?じゃ、この奥か・・・」
 「・・・うん」

「じゃ、言うよ。クリ・・・」
 「いや・・・」

「なぜ?」
 「恥ずかしいから・・・」

「恥ずかしいから?なら止めていい?」
 「ダメ・・・いや、触って」


今にも消え入りそうになる声で、ミカはそう口にした。
俺はそっとミカのすでに湿りきった茂みに指を潜り込ませ、
右手の中指の腹で、ミカの突起を探る。


ミカは全身に力を込めて、快感に耐えていた。
時折、俺の指先が触れる瞬間に身体中をひくつかせる。

俺の指が不意にミカの突起の皮の奥・・・生身のクリトリスに触れた。
ミカは仰け反り、我慢しきれない声を漏らした。


「気持ちいい?ずっと我慢してたの?」


ミカは二度三度と頷いた。

俺はミカ自身を指の腹で前後に滑らせる。
そして突起をこまめに円を描くように擦る。

未知の快感なのか、ミカは無意識にタオルを掴んで、口に当てていた。


「声が出ちゃう?出せよ」

ミカは必死に首を左右に振る。


「ミカ、シックスナインしようか?」
 「やった事ないよ・・・どうやってするの?」

「俺が仰向けに寝るから、君は俺の顔を跨いで四つんばいになって」
 「・・・え?見えちゃうよぉ」

「大丈夫、暗いし、見えないよ」
 「やだぁ、恥ずかしい・・・」

「じゃ、もっと恥ずかしいことお願いしていい?」
 「・・・何?」

「ミカのバージン、戴こうかな?」
 「・・・ダメだってぇ・・・」

「でも、俺が彼氏なら、本当は一つになりたいでしょ?」
 「・・・」

ミカは否定しなかった。素直で可愛いものだ。


「どっちがいい?」
 「・・・じゃ、最初のやつ」


俺が仰向けに寝て、ミカが俺の顔を跨いで四つん這いになった。

濡れそぼったミカ自身が、俺の顔面15cm前に広がる。
薄暗い中だったが、きれいな形と色をした女性器だった。


「ミカ、口で出来ないなら手でいいよ」
 「・・・うん」


ミカは怒張した俺自身を柔らかい手でしごく。
手つきは慣れておらず、決して気持ち良くはなかった。
でも俺を満足させようと、頑張ってくれた。

俺はミカの尻を両手で広げ、深奥の彼女自身にそっと舌を這わせる。
左右のヒダを指でなぞりつつ、ミカの突起を舌で擽る。

ミカはしごいていた手を離して、襲いくる快楽に必死に耐えている。

再び、ベルが鳴る。
ミカは全身の力が抜け、俺の身体の上にぐったり溶けていた。

結局、俺もミカもイケなかったが、充分満足できた時間だった。


シャワーを浴び、着替えを済ませて部屋を出るとき。
俺はミカに訪ねた。


「まだしばらく、この仕事を続けるの?」
 「・・・分からない」


お金に困っている様子ではないミカが、この仕事をどうしても続ける理由はない。

「今度、彼とはいつ会うの?」
 「再来月かな・・・私がシンガポールへ行くの」

「シンガポールに居るんだ?」
 「うん・・・そのお金は貯めなきゃね」


ミカはふと微笑みを漏らした。
愛する彼との再会に思いを馳せる、純粋な愛情がにじみ出た微笑み。

俺は思わず妬けた。


「今度、君についたら・・・Hするからね」
 「うふふ・・・楽しみにしてる」

「本当にいいの?」
 「・・・やっぱりダメ」

「やっぱり?(笑)いいけど、どうして?」
 「・・・出来ない約束したって仕方ないし、長くは続けないと思うから」


ミカは生真面目な返事を残した。
俺は言葉の片隅に、彼女の人柄の清々しさを感じていた。


ドアを開け、部屋を出た。

振り向くと、俺に小さく手を振るミカの姿が本当に可愛く見えた。


そんなミカの姿を思い出しながら、俺は車を操って帰途に就いた。


<以下次号>








↑エンピツ投票ボタンです。次回でミカ編は完結します。



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