華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2004年03月09日(火)

午前1時の情事。 〜ラブホテル〜



<前号より続く>



次の情事の時、瑶子が俺にこう話した。

 「最近、娘が気付いているみたいなの」
「何を?」

 「平良とのこと」
「へぇ〜」

 「お母さん、『昨夜はあのおじさん来てたの?』って聞くの」
「おじさん・・・俺の事?」

 「違うよ、婚約者の方(笑)」
「で、どう答えるの?」

 「ええ、昨日はこそっと来てたよって」
「いいの?嘘吐いて(笑)」

 「だって、平良の事説明できないでしょ?」
「・・・まあね」

 「今ね、実は・・・他に付き合っている人がいるの」
「・・・え?」


俺は思わず聞き返した。

 「その人とする時は、平良との時みたいに声は出さないからなぁ・・・」
「そうなんだ」


瑶子は俺を含めて3人の男と同時に肉体関係を持っていることになる。
さすがの俺も驚いた。
かといって、俺も彼女に何も言える立場ではないのだが。


「瑶子・・・」
 「なあに?平良」

「・・・結婚、やっぱり不安なの?」
 「・・・・・・うん」


瑶子はしばらく考えてから俯いて、そう本音を漏らした。

二度に渡る結婚の失敗。
自分にも落ち度はあるとは言え、男という性に悩む日々を繰り返してしまうのか。

新郎となる男が抱える、前婦への慰謝料や借金。
仕事の出来る男ゆえ、収入もあるが借金もある。

そして娘との不仲。
新しい父親となる男に抵抗を覚える娘に、男は平気で手を上げるという。



ある日、瑶子の話の中で出た、ある会話を思い出した。

 「お母さん、『昨夜はあのおじさん来てたの?』って聞くの」

あのおじさん・・・

娘が抱く大人の男への反感と嫌悪感は理解できる。

瑶子が娘とその男の確執に悩んでいる事を幾度となく漏らしていた。
それでも娘のためにと、自分の意識に反して結婚を急ぐ瑶子。


それらの不安を一時でも忘れるために他の男との情事にふけり、
一時の快楽におぼれてみせる。

その偽りの愛の相手は俺であり、もう一人の男もある。


瑶子が様々な軋轢に押しつぶされそうになっているのが読み取れた。

彼女と娘を救い上げられるほど、俺は強くない。

ただ俺と身体を合わせる一時が瑶子の救いになるのなら、
俺はそんな関係でも構わない。



「瑶子はどうしたい?」
 「私?平良とはこれからも会いたいな。でも・・・」

「でも?」
 「もうすぐ引き渡しだし、もう家で会わない方が良いかもね」

「そうだね」
 「だから、ここで会うのは最後にして、今度からは外だね」

「よし、じゃ思い出作りに一緒にお風呂に入るかっ」
 「それって、いつもと一緒でしょ(笑)」



その後、メールはあるものの、しばらく会う機会が無かった。
その期間に、瑶子に様々な変化があった。


予定より早い、婚約者との入籍。
公団住宅から名古屋市内への引越し。
それに伴う娘の転校。
新しいパート先への就職。

彼女にとっては、充実した日々を過ごしていたのだろう。


次に会ったのは、数ヶ月経った秋。



彼女の実家の近くだという、名古屋市中川区の複合遊戯施設。
待ち合わせ時間は午後7時。
その映画館の入り口前に俺は向かった。

待ち合わせ時間より5分ほど早く到着した。
瑶子はすでに待っていた。

俺は軽くクラクションを鳴らすと、こちらに気付いた。


瑶子は、見た目少し痩せていた。


「久しぶりだね、元気だったかい?」
 「うん、おかげ様で・・・ね」

その微妙な間合いが、どことなく意味深だった。


「食事に行くか」
 「うん、私は・・・すぐにでも良いよ」

「何が?」
 「意地悪(笑)」


俺は腹が減っていた事もあり、食事に向かった。
それにいきなりラブホテル、という選択肢は好きではない。
例え肉体だけの関係でも、だ。


軽く食事を済ませて、俺はその近辺のホテルに入る。


 「初めてだねぇ、私たちホテルに入るのは」
「俺、人生で初めてですよー」

 「どうせ嘘吐くなら、もっとまともな嘘を吐いてよ(笑)」


俺はバスタブに湯を張る。
その間、俺は部屋のカラオケで歌を歌い、瑶子の歌を聴いた。
ひと昔前に流行った、失恋がテーマのバラード。
上手だった故に、少し感傷的になる。

やがて蛇口の音が止む。
俺は瑶子と共に風呂に入った。


 「明るいのって、恥ずかしいね」
「今まで暗闇の中で入っていたからね」


公団住宅の風呂は狭い。
湯船も一人しか入れないかった。

それでも、俺は瑶子と過ごした時間が大好きだった。
あの密着感が忘れられない。


ラブホテルの風呂は広いから快適だ。
しかし、公団のような密着感がない。
俺と瑶子に、どこか微妙な隙間が空いている・・・そんな気になった。

それは、きっと気のせいだけではなかった、と今になって思う。

長く湯に浸かったからか、のぼせ気味の俺はバスタオルを腰に巻いたまま、
ホテルのベランダに出た。


遠くに長島温泉脇の遊園地の夜景が見える。
幾つもの大きなジェットコースターの軌道が照明に照らされて闇夜に浮かぶ。
その向こうは海だ。
強い潮風が吹いてくる。


 「あ、ナガシマだぁ」
「ここから見えるんだね・・・そんなに近かったっけ?」

 「でもよく行ったなぁ・・・娘がね、好きなの」


瑶子が俺に傍らに寄り添う。
俺は彼女の細い肩を抱いて、しばらく夜景を眺めていた。


身体が冷えてきたので、部屋の中に入る。

俺は広いベッドで瑶子の身体を強く抱いた。
瑶子も俺の唇を乱暴に求めて来る。


「今までさ、あの住宅では、声って我慢していた?」
 「当然じゃない・・・だって聞こえちゃう」

「今日は我慢しなくて良いね」
 「・・・えっ、また意地悪な事言うのね」

「意地悪じゃないって、聞かせてよ・・・本気の喘ぎ声を」
 「バカ、恥ずかしいから出せないっ」


俺は久しぶりだった事もあり、瑶子の身体を求めるがままに攻めた。
瑶子は今まで出せなかった、腹からの喘ぎ声を出して答えた。


 「声出せるっていい、凄く感じるぅぅぅっ・・・!」


シーツまで垂れようとする程、汗と愛液で濡れていた瑶子。
何度目か達する直前のこの言葉が、全てを表していた。


瑶子が最後に達した後。
俺にしっかりとしがみ付いたまま、初めて抱いた後のように、
涙を幾筋も流した。



<以下次号>








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