華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜 | ||
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2002年11月23日(土) 晩秋に駆ける。 〜電飾の夜景〜 |
<前号より続く> 3週間ほど経ったある日。 それまで何回か電話で話した。 先日の「未遂」の件以来のわだかまりも解け、相当心がほぐれた俺と聡美。 待望の次のデートの日取りが決まった。 「来週の木曜日の夜、私と付き合って欲しいの」 「何?嬉しいね!俺達、初めて結ばれるんだな」 「(笑)違うよぉ、ちょっとだけ、見せたいものがあるの」 「何だ、そういう事かぁ・・・いいよ」 当日の夜7時。 俺は愛知環状鉄道・永覚(えかく)駅で待ち合わせる。 電車の来ない時間は全く無人の寂れた駅で、俺は独りで彼女の到着を待っていた。 間もなく聡美のRV車が到着する。 俺は車に乗り込んで、シートベルトを締めた。 そして彼女と笑い話をしながら、 「俺に見せたいもの」のある場所まで向かった。 車は聡美の自宅の方へ向かう。 「なに、ご自宅へご招待?」 「(笑)・・・もっと綺麗なものよ」 その住宅街の脇を通り抜け、小さな峠を下り、山の中へ入る。 小さい交差点を曲がり、鉄板の看板が目に入る。 「奥殿、陣屋・・・?」 旧武家屋敷で今は観光施設である、奥殿陣屋の方へと向かっていた。 暖かい季節なら花壇に様々な花が咲き、なかなか見所のある奥殿陣屋だが、 この時期の、それも暗くなってから何があるのかは知らない。 「ここよ」 聡美は陣屋近くのある神社の駐車場に車を停めた。 俺が外へ出ると、今まで見たことの無い光景が広がっていた。 点在する集落の家々に輝く、色とりどりのイルミネーション。 それも各家が独自で工夫を凝らして、それは見事な飾り付けをしている。 この地区はクリスマスが近くなるこの時期、 町興しも兼ねて各家で電飾のイルミネーションを飾るのだ。 それが今や恒例行事となり、ちょっとした観光名所になっている。 アニメのキャラクターを模した派手な電飾。 滝のように光が流れる大掛かりな電飾。 ネオンのように賑やかなイルミネーション。 チューブを器用に折り曲げて、MERRY X'MAS と表した看板。 それが宣伝などではなく、個々の家で手作りで行っているのだ。 見物客は家族連れや若いカップルも多く、三河以外のナンバーの車も多い。 「すごいねぇ、各家でやってるんだ!」 「でしょ?結構綺麗だし、安っぽくないでしょ?」 「うん、見事だよな・・・」 「本当は彼と来たかったんだ・・・約束してたから」 俺は次の言葉を飲み込んだ。 思わず聡美を責める言葉が出そうになったからだ。 それからしばらく無言で眺める俺。 聡美は俺の腕を引っ張って、神社の鳥居の中へ引っ張って行く。 石段を上がっていくと、社の建つ小高い場所に出た。 「ここからだと、イルミネーションが綺麗に見えるよ」 「本当だ・・・」 その小高い場所からは、点在する各家庭の電飾が一望できる。 聡美は俺に腕を絡ませ、もたれてきた。 俺も彼女の身体を受け止める。 しばらく見つめていると、聡美の視線が俺に向いているのに気付いた。 聡美は俺と目が合うと、俺の名前を呼んで目を閉じた。 俺は静かに、聡美の唇にそっと俺の唇を重ねた。 ほんの数秒だったか、もう少し長かったかは覚えていない。 息も白い寒空の下、俺は聡美を抱き締める。 腕の中で、聡美は俺に告白する。 「この前、H出来なくてゴメンね・・・」 「いや、何も気にしてないよ」 「私ね、やっぱり・・・今はしたくないの・・・」 「・・・分かってるよ、無理しなくていい」 「でも、でもね・・・平良くんの事、すごく好きなの・・・」 「ありがとう・・・」 「すごくのめり込みそうな自分が怖いの、でもいつか・・・いつか・・・」 次の言葉が出てこない聡美の額に、 俺はわざと茶目っ気ある音を立ててkissをした。 ほっとしたのか、聡美も笑みを漏らす。 聡美は何とか自分の過去と決別し、殻を破ろうとしていた。 しかし俺には、その行動を応援する事しか出来ない。 飛び込んでくるのなら、俺は両手を大きく広げて受け止めてあげる。 でも腕を掴み、自分の懐に引っ張り込むことは出来ない。 聡美を抱きながら、前から思っていたことを改めて思う。 彼女が殻を破って飛び込む相手は、きっと俺ではないのだろうと。 しばらく寒さに耐えて静かに眺めていたが、時間には限りがあった。 今日は聡美の息子は学習塾で帰りが遅いので出来た時間なのだ。 そろそろ迎えに行く時刻になる。 「平良くん・・・ゴメン、塾の時間が・・・」 「分かったよ、帰ろう」 俺を名鉄・土橋駅まで送ってくれた聡美は、 車を方向転換させて息子の通う塾へと向かって行った。 去り行く車を見送りながら、俺はある気持ちを固めつつあった。 <以下次号> |
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