華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2002年10月13日(日)

18歳。 『心の盾』

<前号より続く>



風呂から上がり、身体を拭く間に互いの趣味の話になった。
ユキエの趣味がカラオケだと言う。


 「もうね、ずっと歌いっ放しだよ」
「何を歌うの?モー娘?」

 「う〜ん、小柳ゆきとかMisiaとか」


お惚けなキャラに似合わず、本格的なボーカリストの歌を嗜むユキエ。


「もしかして・・・芸能界へ行こうなんて思ってなかった?」
 「思ってた!歌手になってお金を儲けて、母さんを助けたかったなぁ」


芸能界で成功して、母親に安定した暮らしをプレゼントしたかった、と。
母の秘密を知ったことで、より強く母を守っていこうと心に決めた、と。

相変わらずの態度と口調だったが、意外なほど意志の強い部分がある。
ユキエには愛人になる野望よりも、こちらの夢がより現実的な望みだったようだ。


 「でも18だから・・・もう遅いよね」
「そうだね、アイドルじゃ遅いかも(笑)」


そのホテルの部屋にカラオケでもあれば、その場で一曲歌ってもらえたが、
生憎その設備が無かった。


「今度聞かせてよ!その歌声!」
 「聞きたいの?・・・お兄さんだったら、いいよ。でも・・・」

「でも?」
 「店外デートは30万円の罰金で退店だから・・・」


店のシステムを覚えていなかったという割には、こういう事は覚えている。

「いいよ、次回会えたときにはカラオケ付きの部屋で歌ってもらうから」
 「いいの?そんな約束して・・・」



俺たちはベッドへ移動した。


 「ねぇ、AV見ないの?」
「え?なんで?」

 「男は皆見るよ」
「俺は別に見ないなぁ・・・見たいの?」

 「分かんない・・・見てもいいよ」


テレビのリモコンで衛星放送のピンクチャンネルをかけると、
今を時めく売れっ子AV女優と細身のベテラン男優との迫真のベッドシーンが流れる。


 「この人、こんなに綺麗なのにね・・・気持ち良さそうだな」
「でも演技だって。こういうのは・・・」

 「ええっ!そうなの?すごいなぁ、こんな演技が出来ちゃうなんて・・・」



全裸にバスタオルを巻き、濡れた髪のままベッドに座るユキエ。
18歳はまだ子供だと思っていた俺だが、彼女の横顔は随分大人びて見えた。

思わず見とれていると、俺の視線に気付いたユキエは恥ずかしがり大きく仰け反った。


そのまま彼女を後ろに引き倒した。
ユキエに覆い被さり、濡れた髪を指先で分けて瞳を見つけた。


「電気消そうか?」
 「分かんない・・・いいよ、どっちでも」

「恥ずかしくないの?」
 「分かんない・・・」


俺はユキエの線の細い身体を抱き締めた。
驚いた様子のユキエ。

思わず息を呑んだ彼女の高鳴る鼓動が伝わってようだ。


「どうしたの?」
 「分かんない・・・抱き締められたの、初めて・・・」



男性経験は「浅く広く」豊富なはずのユキエ。

しかし身体だけが目当ての男など、
女の心まで包み込むようなSexなど最初から目指していない。

それだけの容姿と経験がありながら、
男に裸で抱き締められたのが初めてというのも、俺はにわかに信じられなかった。

しかし緊張したユキエの身の固さは、彼女の経験の全てを正直に表していた。


俺はユキエの細い身体を抱きすくめる。
ユキエは目を見開き、俺の胸元をじっと見つめていた。

どうして良いのか分からないのだろう。

俺はユキエに静かに語りかける。


「こういう風に抱き締められて、嫌か?」

ユキエは何の反応も示せず、完全に固まっていた。


「嫌なら、離そうか?」
 「分かんない・・・でも、でも・・・」

「・・・君は何でも『分かんない』んだな」
 「だって、分かんないんだもん」



ユキエの口にする「分かんない」の言葉は、きっと意味があったと後で気付いた。
単に「私には分からない」「混乱している」のではない、もう一つの意味が。


身体だけが目当てで、私の機嫌をとる男には・・・
私を端金で抱くような、真っ赤な他人には・・・

私の事など・・・
分からなくていい。
知らなくていい。
深入りしてこないで。

そんな意味が込められていた気がする。

決して他人に心の奥を悟られまいとする、頑なな程の心の盾。



空調が利き過ぎる、肌寒いほどのベッド上。
俺はユキエの頬や顎先にkissし、冷えた髪を撫でた。

そして固く巻いたバスタオルの上から乳房を触り、ゆっくりと剥ぎ取る。
ごく薄い産毛が包む両乳房は、思ったより柔らかい。
しかし全く開発されていない様子で、乳房や乳首を攻めてもあまり反応しない。
ユキエは相変わらず緊張している様子だった。


俺はユキエの腿を開かせ、内側を指先で筋に沿ってなぞる。
ここが一番感じる、と先程言っていた部分だ。

微かに上げるうめき声。
しかし喘ぎ声というにはまだ程遠い。


腿の内側から、指先をユキエ自身に滑り込ませた。
薄いヘアの奥にすぐ見つかる女唇を指先で焦らし気味になぞり、押し開く。

奥は充分潤っていた。


「良かった、何にも感じていないのかと思った・・・」
 「分かんない、でも濡れやすいの・・・」


俺はユキエの突起を指先で円を描くように弄る。
しかしあまり反応は無い。


「ここは、あまり感じない?」
 「・・・中の方がいい」


俺は奥へ右手の中指を差し入れた。
その途端にユキエは目を閉じ、全身をよじって反応し始める。

中指を奥まで差し入れて、指の腹で突起の裏側を攻める。
ユキエは泣き声にも似た甘えた喘ぎ声を上げ始めた。


「ここがいいんだ?」
 「・・・あん、ああん、分かんない、分かんない・・・」


俺は指を抜き、次に改めて二本挿入し、ユキエの敏感な部分をより強く圧し攻める。
ユキエは全身の力が抜け、まるで本当に泣いているような喘ぎ声を出し始めた。

鳴き上手な女はそれだけで男は熱くなるだろう。
ユキエが他の男から求められる理由は、その点にもあるようだ。

俺は右手の指で攻めつつ彼女の脇に添い寝し、左手をユキエの右手に添えた。


ユキエは右手で俺の左の掌を、絞る音がする程力強く握り返して来た。
俺の掌はみるみるうちに血色を失っていく。


きっと感じているだけではなかったと思う。



<以下次号>








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