華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜 | ||
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2002年07月08日(月) 黄昏のいちご海岸通り。 〜承〜 |
<前号より続く> 美香は歯切れのよい話し方をするものの、口が悪い。 彼氏の不平不満、仕事上の愚痴や患者の悪口など、平気で話してくる。 話し相手が欲しいんだろう。 俺もお人よしなもので、美香の話を聞いてやっていた。 看護婦の仕事というのはストレスが溜まるそうだ。 何人か看護婦の知り合いがいたし、付き合ったこともあるが、 みな同じことを口を揃えて言う。 人の一番弱っているところを世話する仕事で、最も醜い部分を直視する仕事だ。 患者の人間関係も、家族問題も含めて。 おまけに担当の患者が亡くなったりすると、やはりブルーになるという。 美香の勤める病院は老人の患者が多く、 入院したあとも、誰も面会にも来ずにそのまま亡くなる人も多いそうだ。 それに遺産問題などでも家族や親類縁者で醜い争いも見えてしまう。 自分の遺産相続などで子どもや孫が牽制しあう姿を、 床に着く老人はどういう思いで眺めているのだろう。 そしてそんな悲哀な姿の老人に献身的な看護を行う彼女達。 またさらに他の業種の人々とも交流がない。 美香はそんな窮屈な業界を、結婚を機に退職するという。 「もったいないね、折角の仕事なのに」 「もういいよ、飽きたから」 そういう生意気な言い方をする女だった。 結婚も本当はしたくないんだけど彼がどうしてもしたい、と言うそうだ。 けじめをつけて浮気されないようにだってさ、と美香は吐き捨てる。 「結構な事じゃない?愛されてるんじゃん」 「うざいんだって・・・そういうのを見せ付けられると」 愛の押し売りをどこまでも嫌う素振りを見せる。 会うまでにテレフォンSexも含めて、何度か電話で話した。 そして、月末の日曜日を迎える。 俺は名古屋駅から東京行き新幹線こだま号に乗車した。 約1時間。静岡駅で降りる。 改築したばかりだったのか、綺麗なコンコースを歩き、指定された場所へ向かう。 ブラウスに黒いジーンズの美香が立っていた。 小柄でポッチャリ型。看護婦らしく黒髪のショートヘアだ。 幼げな顔立ちで、化粧っ気もない。 俺と美香は、まず喫茶店でお茶する。 窓際に座り、静岡駅前の景色を眺めつつ、アイスコーヒーで喉を潤す。 「電話での予想(外見)とは違うでしょ?」 「それはお互い様じゃない?」 電話では何度も話していても、やはり初対面だ。 相手も緊張している。 喫茶店を出た後、二人で静岡駅前の遊歩道を話しながら歩く。 あれこれと美香が説明してくれた。 ただ時間もあまりないので、そのままホテル街に紛れる。 美香が気に入っている、というホテルに入った。 シャワーを浴びた後、美香が早速俺に襲い掛かってきた。 俺も美香を迎撃するべく、美香の胸を掌で揉む。 俺自身を腰に巻いたタオルの上から弄ぶ美香の手が止まる。 美香は目を閉じて、俺の次の攻撃を待っていた。 美香をベッドに仰向けに倒し、美香を見つめる。 顔を覆う両手を力ずくで剥がす。 視線を大きく外す美香。 「恥ずいじゃん・・・」 「ちゃんと顔を見せろよ」 俺は美香の唇を奪った。 幼めの容姿とは対照的な、大人の舌。 俺の舌に淫靡に絡んでくる。 ニコチンの風味。 メントールの香り。 美香が落ち着かせるためなのか、先ほど吸っていた煙草の味そのものだった。 「待って・・・・、来ちゃったかも」 攻撃的なkissの途中。 俺は逃がさないように追撃を試みようとしたが、 美香はその手を振り払ってトイレにこもる。 トイレから出た後、美香は何ともいえない表情を浮かべる。 タイミングの悪い事に、生理が始まったのだ。 美香は生理中のSexは絶対に嫌だ、という女だ。 何とか俺をフェラでイかせようと躍起になる。 しかしそんな状況の中で冷めていた俺はとっくに萎えている。 俺はどうも生理中の女とSexが出来ない。 例え相手に構わない、と言われても。 血まみれで痛々しいイメージがあって、どうしても萎えてしまう。 暴力的なSexは嫌いだ。 「服、着ようか」 俺は下着を履いて、服を着なおした。 諦めた美香も返事せずに服を着出す。 お互いに大きな欲求不満を抱えたまま、互いが帰る時間になった。 ホテルから駅へ続く遊歩道。 美香はまるで人が変ったかのように俺に世話を焼き、話し掛けてくる。 「ごめんね、遠いところからきてもらったのに・・・」 「私のこと、嫌いになっちゃったでしょ?」 「美味しいんだよ。ここの新茶、お土産に買ってあげるよ」 「ここの干物ね、本当に美味しいんだ・・・買ってあげようか?」 きっと随分と俺が気分を害しているのだと思ったに違いない。 でも俺はそんな美香の気遣いに、かえって恐縮してしまう。 全ての心遣いを断った。 生理は健康な女性である証拠。 そんなものにいちいち腹を立てるのも、くだらない。 美香は俺が新幹線ホームに消えるまで見送ってくれた。 彼とも待ち合わせ時間が迫っているにも関わらず。 それが彼女なりの誠意の見せ方だったのだろう。 俺は静岡駅に停車した新大阪行きのひかり号で、名古屋へ帰った。 予想以上の疲労感を背負いながら。 <以下次号> |
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