華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜 | ||
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2002年06月23日(日) 汚れなき少女への伝言。 その1 |
今やすでにひと昔前、と言っても過言ではないだろう。 この新しい造語が社会問題になっていたことを、 見識ある読者の方は覚えておられるだろう。 援助交際。 エンコー、エン(¥)などと略され、 女子中高生を中心に個人売買春の隠語として猛威を振るった。 これだけでも忌々しき事なのだが、 当時のテレコミや伝言ダイヤルなどには援助交際目当ての中年の主婦なども多数おり、 みな自分の身体に法外な値段をつけて売り出していた。 俺の身近でも手軽なアルバイト感覚で手を染めた女がいた。 当然、友人としてもいい気はしない。 売春を辞めるように進言した事もある。 彼女は「私の何がわかるの?」や「誰にも迷惑かけてないじゃん」と 逆ギレしてみせ、その場を逃げた。 風俗の利用者である俺が今更偉そうに言う気は無いし、言う権利も無いが。 あの頃。 俺がまだ風俗を知らなかった頃。 一度だけ、援助交際目的の女をおびき出した事がある。 一体何の目的でどんな事に大金を使うのか、聞き出したかったからだ。 初夏のことだ。 俺はまだ卒業した大学に残り、学部付きの研究生として、 お世話になった大学教授の下でアルバイトしていた。 暇だったので、カード式の伝言ダイアルで遊んでいた。 無機質な電子音声のアナウンスのあと、何処の誰だか分からない女からの肉声が流れる。 「市内の高1です。3でエンしてくれる人、待ってまぁす」 「今夜緊急にお金が必要になりました。誰か援助してください。市内の23歳です」 「○○市の34歳、主婦です。3で援助してくれる男性、私と会って下さい」 「高2です、3で(外野から多数のはしゃぐ声)。●●駅で5時半に来てください」 「××市の40歳ですー、援助して下さい。ハゲとデブはダメです。3です」 例によって「援助交際希望」との一言が必ず入っていた。 女子高生、OL、主婦・・・・ここではみんながみんな売春婦だ。 当時の相場は何故か3万円。 口々に「3を希望」などと勝手な数字を口にしていた。 買い手の男が出しやすく、また自分を安売りしたくない、女心の妥協点なのか。 交渉次第では値段に上下があるものの、決して安い値段ではない。 今までの俺は援助交際で会える程の金も無かった。 ここに集う誰もが金銭感覚が麻痺していた。 俺も小金もちになっていたら、女を買っていたのかもしれない。 20代前半にして、売春の片棒を担ぐところだった。 「□□市の高2でミナって言います。んーっ、初めてで緊張してます・・・ 友達からはよくかわいいねって言われます。5でエンしてください」 こんな伝言が受話器から流れてきた。 今までの馬鹿丸出しの甘え口調で伝言を吹き込む女子高生どもと違って、ハキハキした口調。 □□市は俺の住む街の隣りだ。 5万円を希望する高校生。 自分をどれだけ過大評価しているのだろうか。 どうせ騙すんだから、こういった勘違い女ならかえって面白い話が聞けるだろう。 俺は#を押して、伝言を吹き込んだ。 「28歳です。小さい会社を経営しています。 今日の夕方に時間があるので、一度連絡ください」 少し抑え目の低い声で、こう吹き込む。 4歳ほどサバを読んでみた。 どうせ騙すんだ。デタラメでも気を引くように演技してやった。 15分ほど待って再度電話をする。 「新しい伝言をお預かりしています」 無機質なコンピューターの声。 彼女か? 俺は再生してみた。 「□□市のミナでーす。直接お話したいので、そちらの電話番号を教えてください」 詳しくは、直接交渉のようだ。 俺は騙すのだから、こちらの足がついたら困る。 「28の男です。お返事ありがとう。 こちらの番号は困るので、そちらの連絡先を教えてください」 10分後。 「新しい伝言をお預かりしています」 再生。 「ミナです。それも困るので・・・ポケベルの番号いれます。052の・・・・」 当時、携帯電話など学生が持てる時代ではなかった。 ポケベル全盛の時代だ。 #を押す。 「28の男です。ごめんね、やはり教えられないので、こちらのポケベル番号を 入れます。お詫びにもう2万円上乗せしますので、そちらの連絡先を 教えてください。」 3分後。 俺のポケベルが鳴り、10桁の電話番号が入った。 上4桁の市外局番は紛れもなく□□市のもの。 間違いなく、ミナの入れた番号だ。 <以下次号> |
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