華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜 | ||
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2002年06月22日(土) 必要悪、ヒツヨウアク。 完結編 |
<前号より続く> ファッションへルスは決して聞こえの良い仕事ではない。 この仕事に就く人でも、どうせなら普通の仕事に就きたいだろう。 でも女が独りで子どもを抱えて生きていくには、あまりに厳しい現実が待つ。 先の見えない不況。 古い体質の職場での女性蔑視。 さらに母親なら子どもの事情で仕事を休まざるを得ない事だってある。 男の目に見えない、女への意識。 比較的短時間で、効率がよく、学歴なども無関係で、 ある程度出勤に自由の利くこの仕事。 割り切りさえつけば、一見悪い条件の仕事ではないように見える。 割り切りさえつけば。 俺の今の仕事にも付きまとう、割り切り。 しかし風俗業、特にそこで働く女性にとって、 過去存在したどの文化でも、また現在のどこの社会でも総じて立場の低い、 いわば蔑まれた仕事だ。 決して表舞台に立つ事の無い、日陰に追い込まれた仕事なのだ。 現に性のとらえ方が変化してきつつある現在でも、 どこか職業蔑視と嘲笑を誘うではないか。 しかしこういう部分を支える人たちがいるからこそ、癒される人(特に男)が存在する。 男の性とは、例え大金をつぎ込んででも果たしたいもの。 性にまつわる犯罪は近代社会になったところで形は変化すれど、決して後を絶たない。 酒と色気をもって男の抱える愚痴や不満を流し、癒す水商売。 男の性欲を果たす手伝いをする事で男の心を身体を癒す風俗業。 男の欲望を満たす仕事は、そこで働く女にとって辛いものが多い。 顔で笑ってても、心から笑っている事などそう無い。 辛い事でも表に出さず、ひたすら自分を押し殺して尽くす。 それで彼女達は賃金を貰い、生活を成り立たせているのだ。 必要悪。 必要悪。 必要悪。 金を積んで欲望を果たしに来る客が、実は率先して蔑視を煽る、この世界の矛盾。 中には世の中をなめ切った幼稚な考えの娘もいる。 気持ちよくなれて、男からはちやほやされて、お金までもらえる。 若さだけで通用する、特殊な業界だ。 しかし俺はこういう仕事でも、プロ意識を持って働く女性をとても蔑視したり出来ない。 別れ際、由布子は満面の笑みで名刺を差し出してくれた。 「またおいでね」 どこかすっかりお姉さん口調だった。 また甘えたくなる年上のお姉さん。 そんな錯覚だ。 寂しい思いをしているであろう甘えたい盛りの一人娘への思いを、 また娘を預け、心配と迷惑をかけ続ける実家への気遣いを 細い背中に全てを背負って仕事に没頭する。 それも好きでもない客の性欲を次々と処理していく、日陰の仕事に。 ただ処理するだけではない。 自分の身体だって時には乱暴に客にもてあそばれるのだ。 おまけに客から侮蔑されたりすることだって茶飯事という。 彼女達が抱えるストレスはきっと大変なものだろう。 確かに人に勧められない、人にいえない仕事。 そんな苦境と引き換えに高い給料を貰う。 そんな『職業』なのだ。 もう夜10時を過ぎていた。 帰宅ラッシュが一段落した電車内。 座ったまま、由布子の名刺をぼんやり眺めていた。 俺が今まで抱えていた苦悩や苛立ちが、本当にちっぽけなものだったと思い知った。 ヒツヨウアク。 俺の仕事も、必要悪。 結局、この会社はすぐ辞めた。 やっぱり割り切りがつかなかったからだ。 しかし、後悔は全く無い。 由布子の娘は、もう小学校高学年あたりだ。 正しく女の身体一つで、自分と娘の生活を支えてきた。 そんな事実を隠しながら・・・ 今、由布子はどこでどんな生き方をしているのだろう。 |
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