華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜 | ||
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2002年06月21日(金) 必要悪、ヒツヨウアク。 その2 |
<前号より続く> 「さっきの写真とは違うね」 「そうでしょーっ、よく言われるの」 部屋で準備をする由布子は、俺の問いかけに少し膨れっ面で茶目っ気たっぷりに答える。 写真では薄幸そうで草臥れた雰囲気を感じるが、実際はそれほどでもなかった。 「実はね、由布子さんの事、知ってるんだ」 ちょっぴり脅かすつもりでジョーク交じりに切り出した。 「えーっ、ちょっと待って・・・初めてだよね?」 由布子は驚いた調子で過去の客かどうかを思い出そうとしている。 「クミちゃん、いるでしょ?あの娘から聞いたんだ」 「あぁ、クミかぁ。変な事言ってなかった?」 「全然。俺に合う人だよって」 「驚いたぁ・・・私、知り合いかと思っちゃった」 由布子は安堵の表情を浮かべた。間もなく俺をシャワーへ誘う。 しっとりとした由布子の肌。ちょっぴり熟した女の色気を醸し出す。 「でも色っぽいね。とても23とは思えないな」 「あのプロフィールね、あははっ、あれね、嘘だもん」 知ってるよ、とは言えなかった。 「本当はいくつ?」 「今年で28・・・がっかりした?」 「いや、本当の事を話してくれると嬉しいよ」 「本当?私ね、これでも娘いるんだ。嬉しい?」 あっさりと自白したが、肉体を見る限り子どもを産んだ後とは思えない。 「いくつ?」 「今は幼稚園。これから貯めとかないと、後で大変だもん」 「由布子さん、本当は早番じゃなかった?」 「・・・最近ね、夜は親に預かってもらってるの。だって稼がなきゃ!」 水商売だから、と夜は預かってもらっているそうだ。 深夜、仕事が終ってから引き取りに実家へ寄るという。 一人娘の将来を、そして長くないだろう自分の風俗での賞味期限を考えて、 ちょっと無理して貯金に励もうと言うのだ。 「再婚?しばらくはいいなぁ・・・前は大変だったもん。亭主ヤクザだったし」 随分さばけた内容の会話だった。逆に由布子に好感が持てる。 シャワーの後。 ベッドにて由布子からkissを仕掛けてきた。 そのままゆっくりと倒れこみ、先に俺が攻められる。 やはりベテラン。 男の生き様を知り抜いているかのようだ。 胸板から脇、乳首、わき腹・・・と長めの舌が俺の上半身を這う。 まるでマニュアルがあるように無駄なく攻め立ててくる。 「旦那じこみ?」 「馬鹿、こんな丁寧にやってられないわよ」 悪戯っぽく微笑みつつ、由布子は俺の乳首を舐めてくる。 くすぐったい。 逆に由布子が受身になる番では、あまり反応が芳しくない。 微かに出す喘ぎ声も、どこか芝居じみている。 由布子自身もほとんど濡れない。 俺は早めに69の体位になった。 薄いピンクで型崩れの無い、ごく小さいヒダが目前に迫る。 指先で押し開く。中の方まで綺麗な色だ。 これで子どもがいるとは、やはり思えない。 ごく小さい突起を舌先で円を描くように舐める。 指でヒダの部分を押し上げ、舌の先で押し込む。 そのあと、突起を唇で軽く吸い上げる。 由布子の声に先ほどの芝居のような余裕がなくなってきた。 彼女自身に、しょっぱい液体が染み出してくる。 しかし長年の余裕なのか、由布子は若干反応しながらも、 的確に俺の弱点を攻め立ててくる。 口はしっかりと亀頭を捕らえ、上下に首を降る。 右の掌で優しく袋を揉みしだき、二つの睾丸を転がす。 遠慮なく出しなさい・・・・ そんな余裕のなせる技なのか。 「ヤバイ、ねぇ、出るよ・・・」 とっさに俺は由布子の尻を掌で叩き、合図を送る。 程なく俺はイかされた。 口内の精液をティッシュに吐きだした後、ニヤッと笑みを浮かべる由布子。 俺の完敗だった。 終わりのシャワーの後、時間が少々余った。 二人ベッドで抱き合う。 微かに甘い、女の汗の匂い。深い息。 我に戻った俺は今までの仕事の話をつい切り出した。 辛い自分を理解して欲しくて、つい甘えてみたくなった。 「俺、近所で働き出したんだけど、仕事で悩んでてね」 「そうなんだ、辛いよね・・・自分に合わない仕事って」 「ねぇ、由布子さんこの仕事、辛くない?」 「本当はね・・・でも子どもいるし、逃げられないなぁ」 この人には、支えるべき家族・・・最愛の娘がいる。 嫌だろうが何だろうが、生活から逃げ出すわけにはいかないのだ。 背負うものがある。そして重みが違う。 母は強し。 今でも生きている言葉だろう。 「本当に大変だよね、この仕事・・・嫌な客もいるだろうし」 「まあ人に会うのは楽しいからね」 「好きな事を仕事に出来るって良いね・・・」 軽はずみに言った俺の言葉を遮るように由布子が言った。 「・・・でも人には勧められないし、誰にも言えないから・・・いい仕事じゃないよ」 紛れも無い事実だ。 知人に、特に肉親にはこれほど言い辛い職業は無い。 「いい仕事じゃない、か」 「だって、嫌だもん・・・友達がやってたら」 そのままベッドで抱き合っている俺と由布子。 気まずい無言の時間が流れる。 「この仕事って何だろうね」 「結局、必要悪なのよね・・・そういう仕事なんだもの」 部屋の端に顔を向け、どこか遠い目をして由布子は言った。 俺に、そして自分にも言い聞かせるように。 なぜかこの言葉がすぅっと俺の心に染み込んだ。 必要悪。 ヒツヨウアク、か。 この言葉を何度も噛みしめ、思い返した。 <以下次号> |
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