華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2002年05月24日(金)

看板娘の戸惑い。 その4

<前号より続く>



ナナコの事が気に入った俺は、また予約を入れようと1週間後に店に電話した。

  「ナナコちゃんねー、予約でいっぱいですよ」

つれない返事が返ってくる。

  「ナナコちゃんは1日に2人しか入れないから・・・今、11人待ちですねー」


俺は粘り強く、ナナコの指名をするために毎日店に電話した。
その甲斐あって、ほぼ三週間後に再会できた。


相変わらず雑誌を見た一見客からの指名が続くナナコは、幾分かやつれて見えた。
ナナコは俺のことを覚えていてくれた。

そして俺との再会を朗らかな笑顔で喜んでくれた。


ナナコは俺を古くからの友達のように自分の身の上話をしてくれた。
彼女の『昼の仕事』は、某自動車企業の部品デザイナーだという。


 「あの○○○のフレームは、実は私がデザインしたんだよ」

薄暗い風呂場で、俺に自慢気に話してくれた。


その会社の女子独身寮で暮らすナナコは、
門限までに帰るため1日2人限定で客を取るという。


これだけの美人で、性格が良くて、おまけに追加料金なしの本番。
客にとっても、こんなに都合の良い娘はいない。

他の娘のやっかみをを尻目にナナコはお茶を挽くことも無く、
順番に仕事をこなしていく。

その順調さの代償か、前に会った時には無かった目の下のくまが痛々しい。
俺は聞いた。


「・・・辞めないの?」
 「お金貯めたら、辞めるよ」

「何に使うの?」
 「う〜ん・・・・結婚資金(笑)」

「じゃあ・・・早くお金貯めないとね。会えなくなるけど」
 「そうね、無駄遣い、止めないとね」

「そうか、俺が君と結婚すりゃ良いんだっ!」
 「そうかぁ、だったらずっと逢えるしね(笑)」


勤めて明るく振舞うナナコが、どこか痛々しかった。
頑張っているのだろう。


 「平良さん、優しいよね。何で彼女いないの?」
「さあ・・・俺って、優しいかぁ?」

 「他のお客さんで、ひどい人いるもの・・・」
「どんな奴?」

 「風俗嬢には生きる資格ねぇ、死ねとか、どうせお前は風俗嬢だから・・・とか」
「ひどいね」

 「その人たちも寂しいんだろうな、って思って、聞き流してるけどね」


ひどい言葉を浴びても、コンパニオン仕込みの笑顔と聞き流す耳で耐える。


風呂から上がった後。
ナナコと俺は、一つの布団の中で、一線を超えた。


しかし痛がるナナコの苦悶する姿に耐え切れず、
俺は途中でナナコ自身から抜いた。

AVの影響からか、潮吹き目当てで爪の伸びた指で力任せに引っ掻き回すような
無茶をする馬鹿が後を絶たないという。
ナナコは痛みを表に出す事も悪いと思い、歯を食いしばって耐えるだけ耐えると
いう。

おそらく、ナナコの膣の中は相当傷ついていたのだろう。


「痛そうだねぇ・・・無茶したら、ダメだよ」
 「・・・ゴメンナサイ」


ナナコを謝らせてしまった。
叱れるような立場でもない俺がだ。


「教えてあげようか?口でのやり方を」
 「え・・・でもいい」

「楽になるよ・・・」
 「いい、ありがとう」


ナナコは丁寧に断ってきた。
俺も無理強いをしなかった。

結局、俺はその日果たせなかった。


帰り際。ナナコは本当に申し訳なさそうな顔をする。


「本音を教えて・・・ナナコちゃん、本当はSex嫌いでしょう?」

俯くナナコは力無く、頷いた。


「ゴメンな・・・・嫌な事させてるようで」

別に謝ることなど無かったのに、俺は謝った。


「いいの。どうせ私、風俗嬢だから・・・」


ナナコは自嘲した言葉を吐き、寂しげな笑顔を浮かべる。
彼女は肩を落として、迎えの車に乗って帰途についた。


見送りながら、ナナコの自嘲の言葉を何度もリフレインさせながら、
男の性欲の愚かさをどこか恨めしく思う俺。



<以下次号>






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備考・・・20020921   加筆修正


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