華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2002年05月25日(土)

看板娘の戸惑い。 その5(完結編)

<前号より続く>


俺の心の中で、ナナコの存在は確実に大きなものになっていった。


そのあと何度も店に電話したが、ナナコは指名が詰まっていた。
なかなか順番が回らず、俺の所へは来てくれなかった。


その後一度ナナコを呼べたのだが、ナナコは疲弊しきっていた。


それなのに、俺との再会を満面の笑みで喜んでくれた。
そして互いに抱き寄せ合い、恋人のような甘い時間を過ごした。


彼女の本名も、本当の年齢も、勤めている場所も、家族構成も全て話してくれた。
ナナコも俺のプライベートを知っている。


俺はナナコの事を源氏名ではなく、本名で呼んでいた。
学校や会社の友達にも話せない事を、いろいろ聞いた。


でも俺とナナコは真の友達にはなれなかった。

デリヘルで出逢った『客』と『風俗嬢』から抜けきれなかった。
当然だ。
俺は客として風俗嬢のナナコを部屋へ呼んでいるのだから。



店の意図ある「嘘」のために、女として、自分の最も大事な身体を
酷使し尽くさざるを得なかったナナコ。

逢いたい気持ち、それともう辞めて欲しい気持ち。


葛藤する心が、俺の中の彼女の存在と絡み合い、
少しずつナナコに対する『愛情』へと、変化しつつあった。



別れは唐突だった。

  「ナナコちゃんねー、辞めましたよ」


店からのつれない返事に、俺はもうナナコと逢えない寂しさと、
どこかホッとした安堵感で複雑な気持ちだった。


俺も慣れた。
突然の別れに動揺することはない。


携帯番号を教えているナナコから、何らかの連絡があるかな・・・と、
どこか甘い期待を抱いていた。


しかし何も音沙汰は無かった。
俺は自分勝手で幼稚な夢から醒めることにした。


ナナコの存在は、仕事に忙殺される毎日の中で、次第に遠い記憶となっていった。




それから随分経ったある月曜日の朝。
その日が会社の代休だった俺は、明け方まで遊んで家へ帰る時のこと。


信号待ちの時、ふと横を見ると目立つ1人の女がバス停に立っていた。
一際映える立ち姿。

派手ではないが、俺とどこか波長の合うオーラを感じる。


間違いない!

ナナコだ。
いや、すでで本名に戻った、彼女だ。


声でも掛けようか、でも元客の俺じゃ迷惑になるかな・・・
一瞬にして眠気も吹っ飛び、全身のアドレナリンが暴発している。


しかし、無情にも信号が青に変わった。


時間は、通勤ラッシュの真っ只中。
後続の車は殺気立っていることだろう。

俺は名残惜しさを隠し切れずに、彼女をわき見しながらも車を出した。



その瞬間。
窓越しの彼女が、こちらを向いた。


俺と目が合った。


向こうもどこか驚いたような表情で、車の中の俺を見ていた。
ほんの数秒の出来事。


他人の空似か?

短い時間でかつ、そんな確認も出来ないので否定できないが、
俺の眼と心と身体が記憶している。
その記憶はあの娘だよ、と肯定する。


俺と同じ街で頑張る、俺と彼女。


それだけでいいではないか。
あの娘も元気だ。
安心した俺はとても幸せな気持ちになれた。



あの頃、正しく身体で稼いだ「結婚資金」はどうなっただろうか。
愛する旦那と、幸せに暮らしているだろうか。
それとも、キャリアとしてバリバリ働いているだろうか。
新車のフレームを今でもデザインしているのだろうか。


俺は今でもふとナナコの面影を想い出す。

あの頃、本気の一歩手前まで惚れたあの女を。










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☆  五部にわたる大駄文、最後までご精読ありがとうございました。
   男にとって、相手が例え風俗嬢であっても「女性」です。
   つい思い出し、気になることだってあります。

   まあストーキングなどで迷惑をかけるのは論外だけど・・・・(^^;)

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備考・・・20020921  加筆修正 


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