華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2002年05月15日(水)

タマノコシ。 前編

名古屋の風俗界はアイディア勝負の店が増えたのは前回に記した通りだが、
こういう方式の店も出来た。


「画面に映る素人女性とのデート権をオークションする店」


テレクラやツーショットダイヤルでは、電話なので相手がどういう容姿の女なのか
分からない。
おまけに待ち合わせの約束をしても、本当に来るかも分からない。


そういった欠点を克服したのが、この「セリクラ」と呼ばれる業種の店だという。


まず受付で身分証を見せ、入会金と料金を払い、用意された個室に入る。
個室は1畳ほどで、テーブルと椅子、雑誌と筆記用具、そしてテレビが置いてある。
電話が無いだけで、昔のテレクラの作りそのままだ。


不定期に店内放送が入り、オークションされる女性とそのプロフィールが画面に映る。
この映し出された女性とデートがしたい、と思えば筆記用具のそばにある
メモに『部屋番号』『こちらのプロフィール』『入札金額』を記入し、
あとで受け取りに来る店員に渡す。

女性からは男性の待つ個室の様子が見える。
入札金額と相手がどういう人物かを見て判断し、OKであれば『落札』となる。
そこに集う女性との1時間のデート権を落札する、ゲーム性のある新手の商売だ。

落札すれば、受付にその金額を支払う。
入札金額はそのまま女性へ『時給』として渡る。
例えば1万円で落札すれば、その女性の時給は1万円なのだ。
もう一時間延長したい場合は、その都度落札金額を相手に支払えば完了。



目新しいもの好きな俺は、二度その店に顔を出した。

最初に店に行った時、客は俺と先客の2人のみ。
オークションやセリは人数が多い方が駆け引きもあり面白いという。
正直、あまり流行っていない様子だった。


最初、訳も分からぬままセリに突入し、女子大生を3,000円で落札して喫茶店で
一時間デート。
やっと遊び方が分かった俺はもう一度店に帰り、次は専門学校生を4,000円で
落札し、近所の居酒屋で一時間デート。


話は楽しかったが、店の料金+落札金額+飲食代を全て男性が持つことになる。
かといって一時間では世間話が関の山だ。
正直、財布が痛い。


おしゃべり好きな一人目の女性に聞けば、最高で12,000円で落札されたという。
ただのデートなのだが、何を要求されるか恐かったという。


女優の宝○ 舞に似たクールな二人目に同じ質問をしたところ、最高は10,000円。
男を冷めた目で見る思考がやけに印象的だった。


このクラブは風俗ではなく、ただデートする権利をのみを扱う。
よって風俗的なサービスは一切無い。
営業面では口説き方しだいで・・・という含みをもたせた営業しているが、
実際に口説き落として付き合いだすカップルは皆無だという。

それで数万円単位の高額の金を費やすのはあまりに馬鹿馬鹿しい。
しかしこういうところで「出逢い」を求める男が結構いるそうだ。




二度目に店を訪れた時。
前回と違う女の子がいるかな・・・と軽い気持ちで店に入る。


客は俺1人。
他に客が来た形跡は無い。


俺は案内された個室で、テレビを見ながらひたすらセリが始まるのを待った。
個室にいられる時間は一時間。延長する気は無い。
ダメならダメで即、店を出る気だった。

オークション開始を告げる店内放送が流れる。
俺が入店してから30分が経過していた。


「みゆ 19歳 大学生」


プレートにそう書かれた茶髪の若い女が映し出された。なかなかの美形。
俺は彼女の入札価格を3,000円と記入し、店員に出した。
数分後、落札の案内が届いた。

待ち合わせ場所はこのビルの1階エレベーター前。



「はじめましてー」

俺が落札したみゆ(仮名)が現れた。
本当に現代風の女だ。テレビ画面より可愛い。

時間は7時半。
晩飯を誘い、近所の中華料理屋へ向かった。

1時間しかない。
延長は落札した金額と同額を直接女の子へ払うシステムだが、
俺もそこまで入れ込む気は無い。


俺には目的があった。
口説くのではなく、この店の仕組みが聞きたいだけだ。

最初は世間話、そこからみゆ本人の武勇伝に話は盛り上がる。

学生の傍らでヤクザの愛人でもあるみゆは、愛人契約料としてもらう小遣いは
月あたり50万円だという。
それも泡銭夜よろしく、きれいに使い切る。

みゆは中学・高校と援助交際でも一儲けしたという。
『女』である事を何より武器にしている。


しかし彼女の本業は、彼女は宗教を専攻する大学生だ。

 「ね、神様って、信じてますか?」
「俺?いないと思うな。仏教徒だから無神論なんだ・・・」

横柄な口調だった彼女が、初めて敬語で質問してきた。
俺の答えを興味深そうに聞いていた。

俺はホイコーローをつまみつつ、みゆに聞いてみる。

「なんでこういう店にいるの?」
 「ん?暇だったからかな。夜来ればご飯奢ってもらえるし」

トゲがあるが、話しやすい雰囲気だ。


「今日は他に女の子いないの?」

オークションに掛かる女性は自由出勤だそうで、
控え室で時間つぶしがてらいろいろな話をするという。

 「いたよ。今日はもう一人」
「どんな人?」

 「あのねぇ、医者の奥さん。毎日来てる。陰があって、同じ話ばかりするの」


医者の嫁か。
こんな風俗崩れのような店に、そんな女性が来ているのか・・・
騙され半分なのだが、好奇心が沸いてくる。


結構おしゃべりなみゆから彼女の事を聞き出した。

年齢は30歳以上。
医者の嫁で旦那は多忙で留守がち。
控え室では聞き取れないような声で、同じような話を繰り返す。
ほぼ毎夕出勤し、最後まで(0時まで)待機している。
高級な外車で出勤する。
持ち物は全て高級ブランド品。



「あと、控え室ではどんな話してるの?」
 「お客の悪口かな。あと落札金額の自慢」


そこの店のシステムでは、高い金額を出したから必ず落札するわけではないそうだ。
落札を希望する男性を女性側もモニターで確認し、値段より男性本人の雰囲気で
落札されてもいいか決めるという。


 「みんな奇麗事言っても、本当は金、金、金だもの。興味は」
 「デートから帰ってきては、私はいくらだったのよー・・・なんて話ばかり」
 「女はみんな汚いよ。お客もバカだよね・・・出逢いを求めたって無駄なのに」


突然みゆは堰を切ったように店の暴露話を始めた。


「そうなんだ・・・みゆちゃんは落札金額に興味ないのか?」
 「あるけど・・・お金が目的じゃないから」

「じゃ、出逢いかね?」
 「絶対違う。出逢いなんて女の子は誰も望んでいないもん。お金よ」


みゆの言葉に納得する俺。
自分を金で買いに来る男に対して、本当に心を許すわけが無い。

あくまで遊び、ゲームなのだ。その場で楽しければそれでよい。

中には本気で営業文句を信じ、告白や求婚してくる輩もいるそうだ。
その男なりの純情でさえも、集う女たちの罵詈雑言の餌食にしかならない。


もうすぐ一時間が経つ。
落札された女の子は、拘束時間が終った後で店に帰り、次のオークションに
備えるそうだ。
彼女達は一日で数人の男性とデートするのだ。

みゆは実家に住んでいるため、早めに帰宅するという。
今夜は俺でおしまいにするという。


 「ねぇ、次回も店に来る気になる?」


みゆは帰り際、悪戯っぽい口調で、そう尋ねてきた。
夢と出逢いを求める男を食い物にする店の実態を暴露してしまった彼女。

俺は答えた。
「気が向いたらね」


俺とみゆは口先だけの再会を誓い、互いに手を振り、
みゆは地下鉄の駅の方へ、俺は店へと向かう為に分かれた。


気が向いていた。
俺の好奇心を駆り立てた、その『医者の嫁』を落札するために。
他人にすでに落札されているかも・・・なんて不安も感じずに、エレベーターに
再び乗り込んだ。


<以下次号>



備考・・・20020921 加筆・修正


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