ふだんなじみのない町を縁あって訪ねるとき、その町に行かないと会えないとっておきのお店を探す。
実践女子大での講演を聴きに来てくれるアサミちゃんに「日野駅の近くにベーグルカフェがあるよ」と教えてもらい、ネットで調べてみると、「cafe Spinel(カフェスピネル)」という、ことごとくわたし好みな佇まいのお店。講演前の腹ごしらえはここにしよう、とアサミちゃんにつきあってもらうことにした。
アサミちゃんは、脚本家・今井雅子がデビューする前から脚本を読んでは的確なアドバイスをくれているご意見番。
函館にオマケの丸がついた「ぱこだて」という言葉をひらめいたときに、
「アサミちゃんがゴキブリをコキプリって呼ぶとかわいくなるって言ってたっけ」と思い出し、「しっぷ」の効き目が強過ぎて「しっぺ」を通り越し「しっぽ」が生えるという奇想天外な物語が生まれたのだった。
その『ぱこだて人』(コンクール応募時はひらがなだった)の初稿を書き上げてアサミちゃんに送り、カンヌ広告祭から帰ってみると、付箋にびっしりコメントを書き込んだ原稿が返ってきていた。
そこから一気に書き直し、締切日の夜中に「今日の消印押してもらえますか?」と鷺沼の郵便局に持ち込んだ応募作が函館港イルミナシオン映画祭のシナリオコンクールで準グランプリに。その応募原稿がたまたま前田哲監督の目に留まり、驚くべき幸運の連鎖でオリジナル脚本での映画デビューが決まった。
キャストにもスタッフにも恵まれ、朝起きたらしっぽが生えていたヒロイン日野ひかるに、宮崎(崎の右側の上は「大」ではなく「立」だけど文字化けするので)あおいちゃん。
もう一人のしっぽ人間に、大泉洋さん。
その『パコダテ人』の誕生に縁の深いアサミちゃんに初めて講演を聞いてもらう場所が「日野」だなんて、出来過ぎ。
そして、ベーグル(も上出来!)の輪っかは「てっぱん」の「円」にも通じて、これまたご縁を感じる。
なんでもないことが面白かったり特別だったりするのは、「世の中原石(ネタ)だらけ」と思って「心の傘」を開いているからであり、「頭のビデオカメラ」と「脳みその出張所」をフル稼働させているから、かもしれない。
「偶然のような必然」に気づくのは、偶然と偶然をつなげて運命づける連想を働かせてこそ。偶然という石ころも、重ねたり掛け合わせたりで宝石になる。
「たまたま」のように見える「点と点」がつながって、線になって、またつながって円になって、またつながって、その輪が大きく太くなると、人生はもっとふっくらおいしい。
これを「ベーグル化現象」とでも名づけようか。
真ん中が空洞でいいのか、というツッコミはさておき。
今日「たまたま」聴いた講演が、誰かの必然に、そして宝石に、なってくれればと願いつつ実践女子大へ向かった(後編へ続く)。
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