「借りた本を今年中に返したいんだけど」
広告会社時代の先輩で友人の大島亜佐子さんにそう言われて、わたしも、大島さんに本を借りてたことを思い出す。
借りたものを、年をまたぐ前に、返す。
こういう当たり前のことを当たり前にできるのって美しいなと思う。いい加減なわたしは、何年も年越しさせた挙げ句持ち主と連絡がつかなくなってしまったものもあるのだけど。
そして、仕事納めの今日、大島さんが、わが家にやって来た。
わたしから借りた本と、おいしいパンを携えて。
お茶の時間だったのだけど、お昼を食べていなかったわたしは、次のパン次のパンと手がのびて、またたく間に平らげてしまった。その空腹を抜きにしても、香ばしくてやさしい甘さのパンたちだった。
パンとコーヒーをおともに、大島さんとこの一年を振り返った。
去年の年始、尋常小学校の教科書に載っていたという古い詩に出会って、「これをみんなのうたにするんだ!」とコネもアテもなく誓った大島さんは、NHKに売り込みをかけて企画を通し、補作詞と映像を手がけて、その年の秋に『ウメボシジンセイ』という歌を「みんなのうた」にしてしまった。
ウメボシジンセイはアプリになったり、視聴者リクエストで再放送されたりした。この仕事が縁で、大島さんは、みんなのうたのスペシャル番組のオープニング映像を手がけたりした。
これを形にしたい、と思ったら、そのために何をしなきゃいけないのか、調べて、すぐに行動する。
舞い込んだ仕事をこなすことに慣れてしまっているわたしは、大島さんの前のめりな姿勢を見て、自分が受け身になっていることに気づかされた。
そんな大島さんは、2012年も、よく動いた。
コンペ形式のアートコンクールで予選を勝ち抜き、決戦で2位に選ばれ、来年は個展を開かせてもらえるらしい。デザインを手がけているプティット・アフリケーヌのアートな雑貨といい、布や糸に表情豊かに語らせる作品たちは、どれもチャーミングで、手をかけたぬくもりがあって、出会った人をどんどん虜にしていく。
近いうちに、大島さんから売り込まなくても、向こうから、会ってください、もっと作品を見せてくださいって言われるようになるだろう。
それでも、大島さんは、できあがった道を歩くんじゃなくて、こっちに行くんだと自分の旗を掲げて、道を切り開いていく気がする。
その背中に、来年も、刺激をもらおう。
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