2011年07月01日(金)  ウーマンリブ公演『サッド・ソング・フォー・アグリー・ドーター』

『子ぎつねヘレン』と『ぼくとママの黄色い自転車』に阿部サダヲさんが出演した縁で、大人計画から毎回舞台の案内が届く。

2009年10月07日(水) 鈴木蘭々主演『サッちゃんの明日』(大人計画)
2008年11月16日(日) 『七人は僕の恋人』
2007年05月27日(日) 大人計画『ドブの輝き』
2006年11月11日(土) ウーマンリブvol.10『ウーマンリブ先生』
2006年05月09日(火) 大人計画本公演『まとまったお金の唄』
2005年11月02日(水) ウーマンリブVol.9『七人の恋人』

毎回は本公演に対して番外編的なウーマンリブ公演で、『パコダテ人』の宮韻△いちゃんが客演。



タイトルは『サッド・ソング・フォー・アグリー・ドーター』。
不細工な娘に捧げる哀しい歌。
その不細工な娘を演じるのが、あおいちゃん。
といっても、猛ダイエットして、キレイになった後。

後添え(宍戸美和公)をもらった父親(松尾スズキ)と折り合いが悪くなって家を飛び出し、アイドルのなりそこないみたいなことをやって、久しぶりに家に戻って来たのは、婚約者(岩松了)を紹介するため。

父親と年の変わらない、人生で働いたことのないオッサン。当然、父親は面白くない。でも、それが娘の狙いなんじゃないかと思えてくる。

と、ここで、ふっと懐かしい記憶が浮かび上がってくる。

昔むかし脚本家になりたくてあちこちのコンクールに出していた頃、『あいうえお〜愛に飢えた男と女と大人たち』という作品を書いた。

日本語の最初の5文字、あいうえお、それが、人間の根源的欲求を物語るフレーズになっていることを発見した、その興奮にひらめきを得たのだけど、タイトル以外はよく覚えていない。

留守電に見知らぬ人からのSOSが入っていて、メッセージを頼りに助けに行く、といった話だった気がする。

後に上杉祥三さん率いる演劇ユニット「トレランス」の公演を観ていたら、「あいうえお、愛に飢えた男と女」とまったく同じ台詞が出て来て、わたし一人の発見ではなかったんだと思い知った。

古今東西いずれの物語も、愛に飢えた男と女が愛を求める話、といえるのかもしれないのだけど、話を大人計画公演に戻して、この作品には、とくに「飢餓感」を強く感じた。

そもそも、不細工な娘が痩せようとしたのは、父親の愛を得るためだったのだろう。

娘はキレイになったけど、父親との距離は変わらなかった。それどころか、父親を失望させてしまった。太っていた頃の自分のほうが愛されていたのだ。父からも、初恋を寄せてくれた幼なじみからも。

希望があるうちは、人は頑張れる。けれど、その希望に裏切られたら、絶望するしかない。

かつて不細工だった娘は、これ以上自分が傷つかないように、父親を悲しませる行動に出たのではないか。そうすることでしか父親の関心を引けないのだ。

娘には引きこもりの弟(矢本悠馬)がいて、これまた、愛に飢えている。引きこもることで、心配や迷惑という名の関心を集めている弟の元に、ウルトラマンのなりそこないのような全身タイツの自称未来人(荒川良々)が現れる。

未来といっても、ほんの数年先で、その時代に大戦争が起き、人類の多くが死に絶える。未来人の携帯に名前を告げると、未来での生死が判明する。弟は存命、姉は死亡。だが、姉が連れて来た婚約者は存命。弟と同じ名字になって。

婚約者は姉の元に婿入りした上、彼だけが生き残る、弟にとっては最悪な図式。

ところが、舞台終盤、姉である「かつて不細工だった娘」は未来人が残した銃弾に倒れる。絶命したとは描かれていないが、おそらくそれで命を落としたと思われる。となると、彼女が連れてきた婚約者は、婿入りしたのではなく、彼女抜きで養子になったことになる。

一度も働いたことのないは、天才的な和菓子職人だった。娘の父は、彼に、生業である和菓子屋を継がせることにしたのだ。長年の弟子である娘の幼なじみでもなく、血を分けた娘でもなく、娘を奪おうとしたオッサンに。

ダイエットして、きれいになったのに、幸せになるどころか不幸に転落してしまった娘の人生は何だったのだろう。父親へのあてつけのつもりで連れて行った婚約者の眠っている才能を目覚めさせ、跡継ぎ不在に悩む父親の窮地を助けるという親孝行をしたことで、意味のある人生だったのだろうか。

でも、彼女は、和菓子屋の未来なんて、どうだってよかった。ただ、父親の愛を確かめたかっただけた。

その夢は、彼女の亡骸を父親が抱きしめることで、ようやく叶うのだろう。

そんな想像をめぐらせると、『サッド・ソング・フォー・アグリー・ドーター』というタイトルが、切ない歌詞のように響いてくる。

宮藤官九郎の脚本は、おーい、どこまで広げるんだ、と思ったら、終盤にブーメランのように返って来る印象がある。未来人を単なるおふざけではなく、とことんしゃぶって、核心を突く存在に昇格させていく。

彼が現在の世界では借金を踏み倒して追われていることがわかったり、未来の少し時間が進んだ時点で子育てしていることがわかったりするが、「時間」という身の置き場所を変えることで、同じ人物が違う人生を生きるように見えるのが面白い。

そもそも未来人というのが自称じゃなくて本物なのかという疑いも頭をもたげるが、彼がベッドから床へ飛び降りると未来へ飛べたのに、ひきこもりの弟が真似しても、どこへも行けない。

どんなに居心地悪くても、時空を自由に行き来できる未来人でない限り、今を生きるしかないし、目の前の現実に向き合うしかない。

舞台のあおいちゃんを見るのは、「勃たないくせに!」とすごい台詞を口にしても、衣装の白いワンピースそのままに清楚なままのあおいちゃんは、やはり稀有な女優だった。

『七人の恋人』では異様に足の長い男だった田辺誠一さんが、今回は異様に髪の長い和菓子職人役で出演。あおいちゃんと顔が似ているとかねてより思っていて、二人が並ぶところを見ていたいと思っていたのに、上演中はそのことを思い出さなかった。


今日のtwitterより(下から上に時間が流れます)
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【たま語】キャーこんなところにカビが!!と焦るわたしに「どこ?ママに?」。いえ洗濯機です!!
posted at 22:28:50

大人計画の舞台見て帰宅中。今回は宮崎(正しい字が出ません)あおいちゃん客演。弾けてた。いつもながら客席はよく笑い、会話のテンポと終盤の収束に感心。達者な役者がそろわないと作れない空気。
posted at 21:21:49

駅まで10分歩いただけですごい汗。メイクというより顔が流れてる感じ。
posted at 16:42:09

【たま語】「ようこちゃんのまねしたいから、かみちょうだい」と言うので脚本を打った裏紙をあげると、印字面を上にして「なんぎょうめからなんぎょうめってゆって」。朝ドラおひさまの陽子ちゃんのことだった。墨で教科書を塗りつぶす哀しみをまだ知らない幼児の目には楽しい遊びに映ったよう。
posted at 15:54:19

ありがとうございます。たま語ファンリストに加えさせていただきました♪ QT @tatata_ka @masakoimai かわいいですね!たま語録いつも楽しみにしています(^-^)
posted at 15:35:11

@yukienishimura おひさしぶりです。『子ぎつねヘレン』でご一緒した今井雅子です。読売夕刊の記事を読み、ツイッターにたどり着きました。「スマイルピアノ500」の活動、応援します。広めます。 http://t.co/5mcCD8F
posted at 15:13:36

不自然に成長中…QT @mayatchmama きゃわいい!ママのは、でも、自然の成長ではありませんね (笑)“【たま語】お風呂上がり、小さくなったぱんつをはくのに四苦八苦。「はいんないよ。ママみたいに、おしりがおおきくなっちゃったから」。それは遺伝ではなく自然な成長です。”
posted at 14:39:52

【たま語】今日7月1日はプール開き。「ほいくえんのプール、すっごくおおきいんだよ。おにわの3ぶんの1ぐらいあるの」。分数知ってるのと感心し、たまちゃんは3人家族の3分の1だよ、パパとママとたまちゃん家族全員だと3分の3だよと言うと「じゃあ、たまちゃんぜんぶは、たまぶんのたま」。
posted at 07:21:25

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