■通勤電車に乗り込もうとしたら、後ろから声をかけられた。「ステキなパンツね。どこで買ったの?」。ニコニコと話し掛けてこられたのは、虹色のニットの女性。50代ぐらいかなとお見受けしたけど、「37才の娘がいる」とのこと。とても若々しいその女性は「誰も着てないような一点ものの服が好き」なのだそうで、「後ろから見ていて、あんまりきれいな色で、つい声かけちゃったの。靴も鞄もステキ」と手放しでほめてくれた。わたしが乗り換えで降りるまで、ひたすら服の話で盛り上がる。お互い名乗りそびれてしまったけど、「楽しかった。またひょっこりお会いしましょう」と言いあってお別れする。■思いがけない出会いを呼んだパンツはNYのブランド、Tod Oldhamのもの。今はなくなってしまった表参道ビブレ1階に店が入っていた。(NYにあるお店にも行ったけど、ビブレのほうが品揃えが良くて、肩透かしを食らった覚えがある)。色指定用のカラーチップに似ているので、会社に出入りしている印刷屋さんに「色校正のときにはいていると便利ですね」とからかわれたりする。会社の英会話の先生(アメリカ人)いわく「You are visually stimulating(シカク的にシゲキ的)!」。面白い服を着ていると面白いことが起こる。そんなわたしと並んで歩きたがらないダンナは「君は遠くからでもすぐわかるんだよ」と心からイヤそうな様子。いいじゃないか、赤鼻のトナカイみたいで、『パコダテ人』のみちる姉ちゃんみたいで。
1998年07月01日(水) 1998年カンヌ広告祭 コピーが面白かったもの