2011年05月04日(水)  鬼が島とマテ貝採りと石窯ピザの小豆島5日目

6時50分起床。トーストとフルーツとプチトマトの朝食。ぽんかんが甘酸っぱくて、おいしい。「てっぱん」で自分の恋心に気づかない鉄平に、加奈が「どんかん」と独り言でなじってから「ぽんかんのおいしい季節になりましたね」と誤摩化す台詞を書いたものの使われなかったことを思い出す。

女木島(めぎじま)へ行こうか、男木島(おぎじま)へ行こうか、朝まで決めかねていた。どちらも行ってみたいけれど、はしごだとせわしない。男木島は女木島の次の港、片道20分多くかかる。決め手は「木村崇人」の名前を女木島のアート作品に見つけたことだった。

留学時代の同期のミカコのいとこヒロコちゃんのダンナさん。10年近く前に体験した木もれ陽プロジェクトが印象に残っている。木もれ陽は太陽の形だと教えられ、そのことを歌詞に入れこんだウェディングソングを作詞したほど。

これが、その、木村さんの手がけた作品「カモメの駐車場」。女木島の港に着くと、ずらりと並んだ風見鶏のカモメたちがおしりをふって出迎えてくれる。



女木島は別名鬼が島。港にある「鬼の館」で洞窟行きバスの往復切符を買い求め、バスに乗り込む。鬼が住んでいたという洞窟を探索できる。説明の看板を読みつつ奥へ進んでいると、元気のいい男性ガイドの声が聞こえてきた。遠い昔、海賊たちが手で穴を堀り、自分たちのアジトを作ったこと。入口は敵から攻め込みにくいよう、出口は逃げやすいよう作られていることを、何度も説明するうちに身についたと思われる名調子で語ってくれる。

出口付近に「鬼合戦、あるいは裸の桃の勝利」というアート作品が。ワイヤーで形作られた裸体が三体、天井からつり下げられているのだが、その影が洞窟の壁面に映し出され、幻想的。



ガイドのおじさんが「瀬戸内の海をパノラマで見られるのはここだけ!」と絶賛する展望台へ登り、360度のビューを満喫した後、バス停近くの茶屋でお団子を食べる。ひと皿百円と良心的。



愛知県立芸術大学アートプロジェクトチームが手がける「MEGI HOUSE」。コンサートなどのイベントをやる日はにぎわうらしいが、平日ということもあり、のんびり日光浴できた。受付の男性がチョコレートとガムをくださる。



「MEGI HOUSE」を出たところで手押し車を押した地元のおばあさんに声をかけられる。たまを見て「この島は年寄りばっかり。子どもがいないの。年に一度産まれるかどうか。去年一人産まれて今年も一人産まれそうだけど。保育所も高松まで行かないと」。島にある保育所を通り過ぎたが、そこはもう使われていないということのよう。

「島から小学校に通う子はいない」と女木島と男木島を舞台にした映画『めおん』の資料にも書かれていた。



海辺に置かれた「20世紀の回想」(禿鷹墳上)は、帆を張り、船のようだけど、回り込むとピアノになっている。『海の上のピアニスト』という映画もあったし、『ピアノ・レッスン』も連想。



女木島のいいところはアート作品を歩いてまわれること。「均衡」(行武治美)はケータイより小さな鏡を無数につなげあわせて(気の遠くなるような作業だったのではと想像)天井から簾のように垂らした不思議な部屋。目が慣れてくると、無数の自分が映り込んでいるのがわかる。裏側から見たり上から見下ろしたり、角度を変えると、また違う風景になる。



離れには五右衛門風呂。たまは「トトロのおふろ!」と興奮。



「不在の存在」(レアンドロ・エルリッヒ)はアルゼンチンのアーティストと日本の美の掛け合わせが興味深い。レストランで飲食する場合、建物と石庭は無料で鑑賞できるが、茶の間の鑑賞には300円かかる。「二枚の鏡」が置かれた茶の間で味わうサプライズが楽しい。推理小説のミスリードのよう。

ここの石庭には「透明人間」が現れる。たまを始め、最初に気づくのは子どもたち。庭を眺めて透明人間探しをするだけでも楽しい。


アートは日本を実にうまく調理しているが、レストランのお味もなかなか。パエリアは売り切れていたけれど、パニーニもカレーも期待以上。



デザートのわらび餅は見た目と味で楽しませてくれ、お値段も良心的。



惜しむらくはオペレーション。平日でこれだけもたついてしまうと、休日は大変な混乱が予想される。スムーズに流れる工夫が必要。「こちら、カレーになります」のなります語の違和感も惜しい。この点は豊島のほうが洗練されていた。



路地を通って「鬼の館」へ戻る。



何かもの言いたげな佇まいの建物たち。そのうちアートとなって再生するかもしれない。



海沿いの道もいいけれど、路地探索も楽しい。



「鬼の館」は観光案内所であり、鬼関係の資料館でもある。帰りのフェリーを待つ間、資料館を見る。陳列棚の上段にお酒の鬼ころし、中段に鬼の出て来る絵本いろいろ、いちばん下の棚に目をやると……「キッチンハイター」のポストイットが堂々と丸見えになっていて脱力。ネタとしては面白いけれど、センスのいい資料館だけに、舞台裏が表に出ているのはこれまた惜しい。

棚にあった『ないたあかおに』を手に取り、たまに読み聞かせるうち、涙で声がつまる。人間の友達ができたあかおにくんが自分の仲間だと思われないようにと旅に出てしまった、あおおにくん、なんていいヤツなんだ。でも、悲し過ぎる。失って初めて気づく、真の友情の物語。

女木島のアート作品について、詳しくはART SETOUCHIのページへどうぞ。
臨時便のフェリーで高松へ。高松から土庄への高速艇の切符は『八日目の蝉』仕様。島をあげて映画を応援。乗り継ぎ含めて1時間20分で土庄着。豊島もそうだけど直行便があれば小豆島が島めぐりの拠点になれる。



土庄港に黄色いレンタサイクルが今もあるのを発見。たまが「きいろいじてんしゃ!」と駆け寄る。『ぼくとママの黄色い自転車』の名残。うれしい。

女木島で十分すぎるほど濃い一日を過ごしてきたのだけど、本日のイベントはまだ続く。まずは、マテ貝釣り。マテ茶は知ってるけどマテ貝は知らない。駐車場で長靴に履き替え、食塩をペットボトルに分ける。塩で貝が釣れるという。



海には先客がたくさん。採り尽くされているのではと案じるが、いやいやまだまだいますよと言う。たまのために、柳生さんがピンクの長靴を買ってくださった。ピンクのワンピースとそろえたように色がぴったり。砂浜で一人だけギャルファッションに。



砂を掘り返し、貝が出入りする穴を見つけて塩をふりかけると、貝が穴から顔を出す。ここで焦ってつかんではいけない。やわらかい身がちぎれてしまう。殻まで出て来たところでつかむ。でも、これまたあわてて引き上げてはいけない。貝との引っ張り合い、駆け引き。貝が力を抜いたところを狙って引き抜く。



穴の見極めが難しく、わたしは最後まで、これだと思った穴に塩だけ取られててぶらに終わった。地元の目利きが塩をかけたところからは、一挙に三匹(と呼ぶのか)がにょきにょきにょき。

「マテ貝のおいしい食べ方」について、地元の若者たちが議論。オリーブオイルとハーブで臭みを消すべしか、などと話している。あまりおいしいものではなく、採る楽しみに重きが置かれる食べ物であるらしい。

貝採りの後は、本日のメインイベント、バーベキュー。前回はぼくママ上映会の後に開いていただき、そのスケールの大きさと新鮮な魚介のおいしさに目をみはった。その記憶が蘇る。今回はさらに石窯でピザも焼くことに。



子どもたちは大はりきりでお手伝い。石窯に入れ、どんどん焼き上げる。火を消す仕事だけど火を使う調理も得意という地元の消防士が慣れた手つきで手本を見せてくれ、旅行組もおそるおそる挑戦。回転させてまんべんなく焼き、最後に持ち上げて火に近づけ、焦げ目をつける。とても本格的な仕上がり。


もちろんお味もBuono!!

今回のバーベキューでは地元の若い人たち(といってもわたしたちと同じぐらいか、ちょっと下の世代)とたくさん交流することができた。うららー新聞を作っているメンバーにも会えた。自分たちが小豆島を楽しんでいることを発信していこう、という意気込みが、新聞からも一人一人からも感じられる。去年の瀬戸内芸術祭に合わせてカフェが6つでき、MeiPAMギャラリーも始動しようとしていることもあり、前回よりも島が活気づいている印象を受ける。

8月の20日から28日には第1回の瀬戸内国際こども映画祭も開かれる。サイトのトップページにある言葉「二十四億の瞳、きらり」を寄稿したが、映画祭の舞台で小豆島も、そこに住む人たちも、実にきらきらしているとあらためて思う。


今日のtwitterより(下から上に時間が流れます)
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【たま語】突堤を指差し「あそこからおのみっちゃんがとびこんだんだよ」。いいえここは尾道ではなく鬼が島。「おに、やだ」と洞窟に入るのを渋り、鬼じゃなくてベッチャーだよと言うと「ベッチャーどこ?」。からだがてっぱんでできてます。 #teppan
posted at 16:36:16

鬼が島行きフェリー船内テレビ、てっぱん総集編を放送中。こどもたちが「てっぱんや!」 #teppan http://twitpic.com/4t0767
posted at 09:58:01

#teppan でつぶやき続けてたのに全然反映されてない。洋上だから?高松行きフェリーにて、まわりの携帯から総集編が聞こえてます。
posted at 09:22:04

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