2009年10月29日(木)  「整理できないメモ魔」には「脳みその出張所」が必要だ

物を捨てられない性格なのに物がふえてしまう生業をしているがゆえに、部屋が散らかってしょうがない。家中がウォークインクローゼット状態となり、いろんなものが入れ替わり立ち替わり姿を消す。この家のどこかに異次元への穴が口を開けているのではと疑う。

探しものは見つからないが、忘れていたものが地層の底から発見される。

ルーズリーフ式の手帳の群れからはぐれた一枚に走り書きされた思いつき。
事務所前で福永と知り合う。記者(安井と●田)は中に入らない。
これだけ読んでも何も思い出せない。記者の「●田」は悪筆で読めない。

「31 monday」の欄。
冒頭 早めに猿渡のプロフィール。猿渡グループ総裁。
この名前を見て思い出す。「犬走」という名の男が市長選に出馬する映画脚本を城戸賞に応募したことがあった。タイトルは「犬走健太郎が行く」だったか。犬走の対抗馬のブルジョワ候補が猿渡だった。

「1 tuesday」の欄。
トトカルチョ
これは選挙の当選予想か?
「思い出すなあ。小学校のお楽しみ会。君が桃太郎で僕が猿。あのときの再来か?」
これは猿渡のセリフと思われる。犬走が憧れる麗子の父の市長引退に伴う選挙に担ぎ出された犬走は地元の人間ではないから、桃太郎を演じたのは麗子だろうか。

「2 wednesday」の欄。
「あなたいいの? 小説家になる夢は?」
これは麗子が犬走にかけた言葉だと思われる。高飛車だった麗子の口調が優しくなっているので、物語終盤のセリフだろうか。

「3 thursday」の欄。
三菱鉛筆が三菱グループでないように、猿渡不動産は猿渡グループではない。
これは当時「三菱鉛筆と三菱自動車がグループ会社ではない」と会社の同僚に聞いて、使える、と思ったネタ。でも、架空の猿渡グループに猿渡不動産が入っているかどうかなんて、どうでもいいことだ。
「あー! 『あうん』のおかみがバンザイしてるー!」
「裏切り者め!」
「保健所に訴えてやるー!」

あうんの女将が対立候補に寝返ったらしい。保健所に食中毒被害でも訴えるつもりか?
ラスト当確打ち間違い 逆転 「スポンサーを降りさせていただきます」
逆転勝ちしたのは、犬走か? 重大なことなのに記憶に自信がない。

「4 friday」「5 saturday」の欄。
「麗子さん、当選するまでお預けって言ってたアレ……」
二人で食事
「私パセリって嫌いなのよね、青虫臭いから」
「ほんとはあれ 昔飼っていた青虫が死んじゃったって思い出しちゃうからなの」

どうやら犬走が勝った模様。当選したら結婚してあげるというのが麗子の出した出馬条件。二人きりの食事さえおあずけだったとは、かわいそうな犬走。麗子は犬走を「パセリのような男」呼ばわりしていて、犬走は「あってもなくてもいい添え物」という意味だと思っていたが、実はパセリは優しい思い出につながっていた……。

けなしてるかと思ったら褒め言葉だった「パセリ」のネタをやりたくて、脚本を書き始めた頃、いろんな作品に使っていた。

「6 sunday」の欄。
平積みされる本 手にとっていく人々
犬走は小説家の夢もかなえたらしい。選挙奮闘記が本になったのだろうか。
街宣車150万〜350万 ポスター50万〜150万
どこかで調べたのだろうか。当時はインターネットを使いこなしていなかったので、宝島社の選挙ムックを買ってきて研究していた。

「April 1997」(12年半前!)の印字がある裏面には、
票読み タクシーの運ちゃんに聞きまくる 
ワイドショー バアサンリアカー

の他に
漫画家になりたかった麗子 「私挿絵書いていい?」
とある。犬走の小説に麗子が挿絵をつけたのか。うーむ、ベタだ。

城戸賞に応募した原稿には、以上のネタが盛り込まれていたのだろうか。麗子さんは応援団のチアリーダー出身で、選挙活動中に応援団員が多数応援に駆けつける場面があったことは覚えているが、犬走も応援団員だったのかどうかは記憶が抜け落ちている。

自信満々で応募したつもりだったけれど、一次審査にも引っかからなかった。これだけ内容を覚えていないということは、その程度の作品だったのかもしれない。残念ながらデータが残っていなくて、感熱紙のプリントアウト(ワープロで感熱紙印刷したものを、コピーを取って応募していた)は取っておいたはずだが、掘り出した頃に文字が読めるかどうか……。

会社勤めをしながらあちこちの脚本コンクールに応募していたので、通勤の行き帰りに思いついてはメモを取っていた、ミミズがのたくったような走り書きが何十枚もどこかに散乱しているはずで、今見ると、大ネタに化ける鉱脈があるかもしれない。自分が書いたことなのにまったく覚えていないことに驚く。

「恋愛秘話 竹久夢二 T13」ではじまる走り書きも見つかり、江戸東京博物館へ行ったときのメモだとわかるものの判読不可能……と思ったが、試しに「恋愛秘話」で日記内検索をかけると、2003年10月19日(日) 100年前の日本語を聴く〜江戸東京日和に引っ越し済みだった。

部屋の中も頭の中もとっ散らかった上に検索機能が及ばないが、データという脳みその出張所に書き写しておくと、ラクラク掘り出せて、なんとまあ便利。

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