今朝のこと、ワイドショーに鈴木亜美が出ているのを観ての連想か、「鈴木蘭々って最近どうしてるんだろ」とダンナが聞いてきた。「お芝居なんかに出てるよ」と答えて、「そうそう。今日観に行く舞台の主役、鈴木蘭々なんだよ」と思い出した。
というわけで、大人計画『サッちゃんの明日』。毎度のことながら、満席の客席は「かかってこい」のお祭り歓迎体制で、のっけからよく笑い、下ネタにも反応しすぎなほど。わたしの後ろの席の男性は、早押しクイズのような素早さで食いつくように笑いの波に一番乗りしていて、その余波でわたしのまわりはとくに笑い感度が高くなっていた。
(ネタバレご注意)犬に噛まれて足が不自由になった蕎麦屋の娘サチコ(鈴木蘭々)はアル中の父(松尾スズキ)と未亡人の祖母(小松和重)との三人暮らし。母(家納ジュンコ)と祖父は近親相姦の上、駆け落ちして死んだ(が後になって母が帰ってくる)。脳性マヒの男友達で営業マンの沼田(小松和重の二役。お見事!)が連れてきた後輩のゴロウ(星野源)は、サチコを噛んだ犬の飼い主の養子。蕎麦屋に面接に来た男(皆川猿時)は刑務所上がり。シングルマザーで7か月の息子がいる友人つぐみ(猫背椿)はダンサーとしてひと華咲かせる夢を諦めきれず、ニューヨークで成功し、一時帰国中の先輩を訪ねるが、そこには覚醒剤の売人(宮藤官九郎)がいて、高額のオーディション料をふんだくられる。売人の探し物は蕎麦屋にあり、それが見つからないと命が危ない。果ては北朝鮮ミサイルが撃ち込まれたというニュースが……。
これだけのヘビーな題材を次々と繰り出しつつ、常に客席が笑いで沸いているというのがすごい。「私にはエロサイトがあるー」と高らかに歌っても清潔感がある鈴木蘭々というのもすごい。下ネタが捨て身ではなく、自然。一方、家納ジュンコと猫背椿は堂々たる捨て身っぷりが芸になっている。皆川猿時と小松和重の体を張った芝居も、役者ってすごい生き物だなあと思わせる。
大人計画の舞台を見慣れてくると、ウンコが背中に張りつくネタにも笑えるようになるが、覚醒剤ネタはタイムリーすぎて笑い飛ばすには重さを感じる。明らかに幸福○○党をパロディにしたと思われる幸福追求党も最近の話題ではあるけれど、覚醒剤のほうは脚本を書き上げてから現実が追いついてしまったのかもしれない。
生の鈴木蘭々を見ながら、カラオケで「なんで なんで ナンデ?」という彼女の歌をよく歌っていたことや、デーブ・スペクターや高田純二とともに出ていた「GHOST SOUP(ゴーストスープ)」という岩井俊二演出のドラマがすごく良く出来たクリスマスの奇跡物語だったことなんかも懐かしく思い出した。顔立ちも声も醸し出す雰囲気も好きなので、いつか作品をご一緒できたらと思う。鈴木蘭々をさん付けすると「ん」が3つ刻まれて「ヴァンサンカン」や「チリコンカン」みたいな響きになるので敬称略にした結果、今日の日記の人物名は皆さん敬称略になってしまった。
作・演出は松尾スズキ。宮藤官九郎作・演出を何本か観たのと比べてみると、クドカンカラーだと思っていたのは大人計画カラーでもあったのかもと思う。わたしには書けないし、真似できない。だからこそ毎回異種格闘技を眺めるように圧倒される、ヘアメイクは今回も大和田一美さん。コピーライターだった頃、お仕事で出会って一時期髪を切ってもらっていたので、役者さんたちの顔まわりに注目しながら、お元気かなと思いを馳せた。
| 大人計画『サッちゃんの明日』
2009年9月18日(金)〜10月11日(日) シアタートラム
【作・演出】 松尾スズキ 【出演】 鈴木蘭々 宮藤官九郎 猫背椿 皆川猿時 星野源 家納ジュンコ 小松和重 松尾スズキ
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