2009年10月04日(日)  おもちゃから夜景まで欲張り横浜デー

小豆島でお世話になった柳生さんと峰子さんご夫妻と横浜で再会。柳生さんと親しくされている北原照久さんのおもちゃ博物館へ。館長の北原さんにはお会いできなかったけれど、スタッフの方々にあたたかく迎えていただく。ジョン・ラセターが来館したときのエピソードを聞かせていただいたり(ここでピクサー映画『トイ・ストーリー』の着想を得たそう)、ぜんまい仕掛けのブリキのおもちゃを動かしてもらったり。

たまは「ブリキのおもちゃができるまで」に興味津々。


うちにはブリキのおもちゃはないけれど、Barnieのビデオの誕生会編でおもちゃ工場へ行く場面があり、ブリキっぽいロボットが出てくる。それに似たロボットを見つけて、「ウィアレロ(we are little)ロボットだ」。


広い庭にはアンティークのメリーゴーランド。動きを止めたその辺りの空気も、時が止まったかのよう。妖精が飛び回っていそうなこの庭で、お気に入りの本を開いて、ぼけっと半日過ごしてみたい。

別棟にはクリスマスショップ。こちらはBarnieのクリスマス編のサンタクロースの家がそのまま現実になったようで、たまもクリスマス好きのわたしも大興奮。

サンタが運転するワゴンには、サンタさんがいっぱい。

店内にはクリスマスグッズが所狭しと並び、飾られ、季節に関係なくここは年中クリスマス。わたしが品定めしている間に、たまはお店の看板犬、ゴールデンレトリーバーの「TJ」とじゃれあう。犬大好きのたまは、太いしっぽをつかんでぶんぶん振り、キャッキャと大喜び。柳生さんは気がつくと「Tジェイ」を「Tジョイ」と呼びかけていた。Tジョイは、『ぼくとママの黄色い自転車』の配給会社。

北原館長夫人の旬子さんとご挨拶させていただき、北原さんがププロデュースする横浜人形の家で今バービー展をやっていることを知らされ、徒歩で向かう。世界の人形や日本の人形の移り変わりを展示した常設展を見終えると、50周年を迎えたバービーとその衣装がずらりのバービー展。マネキンサイズのバーニーに駆け寄り、たまは「おちゅめ、きれいねえ」とピンクのマニキュアを塗った指にうっとり。

お洋服を見るのが大好きなわたしにとっては、目移りしそうな楽しさ。


鏡で仕切られたケースは万華鏡のよう。

お昼は中華街で食べましょうとなり、人形の家から五分ほど歩いて、元町中華街駅近くのすぐ目についた「廣翔記(koushouki)」新館に入る。フカヒレ三昧コースを注文すると、全9品と次々に運ばれる。餃子、炒飯、杏仁豆腐に至るまで、これでもかのフカヒレ尽くし! 味はなかなか上品で満足。大人もたまもよく食べた。テーブルにお料理びっしりの写真を撮り忘れたのは、夢中で食べた証拠。

さて、今日の横浜訪問の目的は、柳生夫妻の愛娘、照美嬢が出演しているtpt(=Theater Project Tokyo)第72回公演『血の婚礼』を観ること。中華街からほど近い馬車道にあるBankARTという会場は、倉庫を改造したような天井の高いスペース。

わたしが柳生夫妻と観ている間、ダンナがたまの子守をする予定だったのだが、「僕は昨日観ましたから、僕がたまちゃんを見ます」と柳生さんが勇気ある申し出をしてくれた。ブリキのおもちゃ博物館で柳生さんが買ってくださったぜんまい仕掛けのペンギンで、柳生さんとたまが遊んでいる隙を見て、峰子さんとともに客席へ。上演数分前に、たまが入口に駆け寄ってきて、目が合ってしまい、焦ったが、たまは満面の笑顔で「みねこさーん!」。パパでもママでもなく峰子さんと呼びかけるとは、たくましい。

入口のドアが閉められ、泣いても笑ってもたまは柳生さんに託されることになった。そして、一時間半後、再びドアが開くと、満面の笑みのたまが「みねこさーん!」。さすがにぐずっているだろうと思ったこちらは拍子抜けして、大笑いとなった。柳生さんの他、スタッフの方にも遊んでもらい、たまは終始ご機嫌だったという。

tpt公演は第44回『スズメバチ』と第52回『道成寺一幕』を今はなき森下のベニサンピットで観たのだが、その印象とも共通して、演劇らしい演劇を堪能する。舞台のしつらえもそうだし、見に来ている人の雰囲気もそう。台詞で話を転がしていくタイプではなく、体全体を使っての表現のひとつに言葉がある、そんな感じ。舞台には土が敷き詰められ、裸足の役者がその上を歩き、転がり、舞うと土埃が舞い上がる。舞台下には水を張ったたらいが点在し、そこでは水しぶきがあがる。歌とダンスが全体を彩り、生演奏の奏者は舞台の一部のように会場に溶け込んで佇んでいる。観るというより浸るように鑑賞した。

若い娘役を演じた照美嬢は、パリで演劇を勉強して帰国後、初めての舞台だそうだが、「オリーブ」という言葉が劇中に何度も登場し、記念の舞台へのはなむけのように聞こえた。

tpt第72回公演『血の婚礼』

2009/10/3(sat)→18(sun) BankART Studio NYK / NYKホール

作◎ガルシア・ロルカ 台本◎広田敦郎 演出◎門井 均
美術◎朝倉 摂 照明◎笠原俊幸 衣裳◎萩野 緑
振付◎グスタヴォ・ザジャク

母親◎大沼百合子 花婿◎山田ジルソン
姑◎植野葉子 妻◎伯鞘麗名 レオナルド◎小谷真一
花嫁◎呂美 女中◎武田優子 父親◎廣畑達也
月◎濱碓 死◎加藤亜依 少女◎佐伯静香
村の女◎石榑順子 若い娘◎柳生照美 松平英子
木こり◎清水隆伍 熊本昭博 遠藤典史
若い男◎古賀信義 演奏◎かりん・綿田健一

ステージの隣にはカフェとショップのスペースがあり、そこでお茶をしてから、馬車駅の手前で柳生夫妻と別れ、たまが朝から「あれのる!」と所望していた大観覧車へ。高所恐怖症なので膝が震えたけれど、空はよく晴れて、宝石をちりばめたような眺めだった。

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