2009年08月02日(日)  七大戦演舞も朝ドラ「つばさ」第19週も「太陽がいっぱいだ」

全国七大学総合体育大会、通称「七大戦」。北大、東北大、東大、名古屋大、京大、阪大、九大の7つの旧帝国大学の体育会(運動部)が年に一度、持ち回りで集い、優勝を競う大会で、「七帝(しちてい)」とも呼ばれる。各大学の応援団も応援に駆けつける一方、演舞会やパレードで日頃磨いた技と気力を競い合う。第48回を数える今年の開催地は東大で、今日は本郷キャンパスで演舞会が開かれるというので、後輩たちの活躍を見に出かけた。大会キャラクターは、ハチ公ならぬナナ公。

自分の大学や他大学の先輩後輩とすれ違ったり鉢合わせたり。顔は覚えているけど名前が出てこない人もいるが、応援団ではとにかく挨拶しておくに越したことはない。その昔、鬼と怖れられた先輩がいい大人になり、子どもを連れていたりする。

応援団出身者をおおまかに3つに分類すると、応援団的生き方が抜けず、応援団のつきあいや行事を最優先させる「根っから型」(リーダー部出身者、とくにリーダー部長経験者に多い)、応援団をネタに宴会芸や飲み会の話題に活用する「ミーハー型」(わたしはここに属する)、応援団にいたことを何かの間違い、消したい過去であると位置づけ、カミングアウトを避ける「なかったこと派」となる。「根っから型」は七大戦がどこで開催されようと駆けつけ、「ミーハー型」は近くで開催すると顔を出すのだが、今日も「この日のためにわざわざ!」な方々が多数。演舞が始まると、「気合入れろ!」「声出てねえぞ!」「聞こえないぞ!」と喝を入れる野次が飛ぶが、その声は現役団員のそれより力強く、よく響いたりする。団旗(ご覧のように身長の何倍もある見事なもの)の上げ下ろしにも、自分たちもやっていただけに厳しい声が飛ぶ。途中の旗手紹介で、団旗を床と平行になるまで下ろした姿勢で耐えるという場面があり、わたしがかつて見たことないほどの忍耐を披露してくれたが、「まだまだ!」「気合入れい!」と野次を飛ばすOB軍団は、後半のしんどいときに「上げ方忘れたんか?」と突っ込むなど情け容赦ない。

応援歌3曲、逍遥歌、旗手・鼓手・司会の紹介、マーチメドレー、締めは学歌斉唱という一時間近いステージ(これを7大学分やるので、朝から晩まで一日がかり)。わたしがいた頃はチアだけで20人を超える大所帯だったけど、現在はリーダー部、ブラスバンド部、チアリーダー部あわせて30名。しかし、発せられるパワーや演舞の完成度には目を見張るものがあり、よくやってる、と頼もしさと誇らしさを味わった。チアの振付けはずいぶんシャープになり、衣装もメイクも垢抜けて、部員もスタイルのいい華やかな子ぞろい。今の子はかっこいいなあ、と眩しくなったり、わたしもあんなことやってたなんて若かったんだなあと懐かしくなったり。

応援団の演舞を見ると涙が出そうになるのは、そんな感傷のせいだけではなく、現役時代からそうだった。声を出すのもジャンプするのも力を出し惜しまず、終わったら倒れてやるぐらいの気迫が数十人分集まると、迸るエネルギーに圧倒されて、言葉を失い、ただ痺れる。わたしの結婚パーティでお祝いの演舞を観た同僚の広告関係者らは、「あんなに一生懸命に何かをやってる人って初めて見た」と驚き、「カルチャーショックを受けた」とさえ語っていたが、がむしゃらが敬遠されつつある昨今、どうしてそこまでやるのかというひたむきな姿には希少価値があり、敬意をかき立てられる。

NHK「おかあさんといっしょ」の歌「ドンスカバンバンおうえんだん」が大好きな娘のたまは、「ドンスカバンバンおうえんだん、見に行こっか」とわたしに誘われ、喜んでついてきたのだが、大音量の太鼓と気合の入った大声に恐れをなし、泣き出してしまった。終わった後で「ドンスカバンバンおうえんだん、やらなかったね」と愚痴っていたので、期待していたものと大違いだったよう。他の大学の演舞を見るのはあきらめ、三四郎池を散歩し(大学の中にこんな絶景が!)、前から気になっていた本郷通りにあるレストラン「山猫軒」(カレーが思いのほか美味!)でひと息ついて帰った。

チアに限らず、応援団って、ありあまる若さと時間がなければできないことだと思う。中にいるときは、そんなことには気づかず、無我夢中だったけど、あの4年間が今の自分の大きな栄養源になっているのは間違いない。理不尽でも全力を出し切れば何か得るものがあるとか、気合があれば何とかなるものだとか。後輩たちのエールに力をもらいつつ、昔の自分にも元気づけられた気がした。

折しも明日からの朝ドラ「つばさ」第19週は、誰かを力づけるということが大きなテーマ。長瀞で傷心を癒して、ぽてとに復帰したつばさは、この週の出来事をきっかけに人と人をつなげるチカラを取り戻し、ラジオの仕事を自分の夢にしたいと決意する。物語はここから大きくうねるので、引き続き、ますますご注目を。

劇中も世間もお騒がせのあのサンバと斎藤(西城秀樹)との結びつきが明らかに。ただのにぎやかしではなく、サンバには深い意味と愛があったのだ。ところで、サンバのお膝元、ブラジルでは「つばさ」をどう見ているのだろう。高校時代、体操部で一緒だったカンちゃんはブラジルにて「つばさ」をチェック中。「サンバが出て来てうれしかった」とメールをくれたけど、カンちゃん自身が高校時代からサンバな人だった。ちなみに「ブラジルでは朝ドラは、夜8時15分か夜中なんですよ」とのこと。夜だけど「8時15分」スタートというところに、おなじみ朝ドラへのリスペクトを感じます。

話がちょっとそれたけど、第19週を観ると、サンバが愛しくなること、うけあい。すでに多くの方が指摘されているように、人物や事象への光の当て方を変え、物語の印象をプリズムのように変えていくのが「つばさ」のユニークなところ。第11週の千代(吉行和子)と浪岡(ROLLY)のデート、第14週の千代と葛城(山本學)の再会の伏線もこの週で生かされる展開。最終週の第26週にかけて、どんどん伏線を回収していくので、どうぞお楽しみに。つばさと翔太の劇的な再会も、もちろんインパクト狙いではなく、意図があってのこと。

タイトルの「太陽がいっぱいだ」の通り、まぶしいパワーときらめきにあふれた一週間。演出は1〜3週、6週、10週、14週、16週の西谷真一チーフ・ディレクター。続く第20週「かなしい秘密」は「脚本協力 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間。第19週から続けてお楽しみください。 写真は、うちにある太陽たちを集めて、台本を囲むの図。左上からロス土産の刺繍ワンピース、絵本『おひさまあかちゃん』(高林麻里)『はらぺこあおむし』(エリック・カール)『わたしのワンピース』(にしまきかやこ)。絵本はいずれも娘のたまのお気に入り。

自分が関わった作品や人を応援せずにはいられないのは、応援団気質ゆえ? ミーハー型応援団と自認していたけど、わたしがコピーライターになったのも、脚本家になったのも、自分の書くもので誰かを力づけたり元気づけたりしたいという気持ちからだから、根っからの応援団といえるのかもしれない。

2008年08月02日(土)  葉山の別荘1日目 海水浴と海の幸づくし
2007年08月02日(木)  ブロードウェイ・ミュージカル『ヘアスプレー』
2002年08月02日(金)  「山の上ホテル」サプライズと「実録・福田和子」

<<<前の日記  次の日記>>>