娘のたまが通う保育園までは大人の足で歩いて7分。いつもぎりぎりのお迎えで、走ると5分。ところが娘を連れて歩くと、15分でもきかない。なるべく自分の足で歩かせたいのだけど、定番の「だっこ」「おんぶ」「ベビーカーのる」に加えて、「じてんしゃのりたいよう」とだだをこねるようになった。道の真ん中で立ち止まったり、引き返したり、横道に入って行ったり、それをなだめては歩かせるの繰り返し。だっこしたほうが早いとは思うけれど、13キロの重さを持ち上げるよりは、なだめすかそうと思ってしまう。
先日、苦し紛れに前方を指差し、「あれ何だろ? 見に行こっか? なーになに?」と手を引くと、2歳児の無邪気な好奇心ですっかり乗せられて、「なーになに」と駆け出してくれ、大成功。そこにあるのは、ただの電柱だったり鉢植えだったりするのだが、「おや、たばこに足が生えて歩いてるね。歩きたばこ禁止だって」とステッカーを絵本風に読み解いたり、「たまちゃんのお花どれ? ママはこれにしよう」と品定めしたりして、遊びに持ち込む。いちばん喜んだのは、通行止めに使うとんがり帽子みたいなもの。たしか映画『トイストーリー2』で、逃げたおもちゃたちがこれをかぶって道路を渡っているお茶目なシーンがあった。「これはなにかな? アイスクリームかな?」「ぼうしだよ」「ツノかもしれないよ」と二人で首を傾げあい、笑いあった。
アンテナを張っていると引っかかるもので、同じものが保育園の庭にもあることを発見。色が黄色で、「これはバナナかな?」と保育士さん。さらに、買い物袋に入れて歩いている人を発見。お店で買えるという発想はなかった。その人が出て来た日曜大工店に入り、商品として積み重ねられているのを確認。「カラーコーン 498円」と札があった。color cone=色円錐?
想像力を使う遊びは大人も子どもも一緒に楽しめるのがいい。子どもに合わせて手加減する必要もなく、むしろ打ち負かされたりして痛快。たまは好物のせんべいをかじりながら、刻々と変化する形に「チューリップ」などと的確なネーミングをする。チューリップがおむつになり、おむつのゴムがゆるゆるビヨーンになり、おほしさまになり、最後はなくなる。
目に入るものすべてが遊びの対象になる「なーになに」ごっこをしていて、コピーライターとして最初に配属されたクリエイティブチームで同じ遊びが流行っていたことを思い出した。ハンガーやら肩もみ棒を手渡された人が瞬間芸で使い方を披露するというもの。ハンガーを投げる真似して「ブーメラン」、肩もみ棒(釣り針みたいな形のもの)を股にはさんで「Tバック」とか。打ち合わせ中に先輩や上司が夢中になってやっていて、入社したばかりのわたしは、仕事と遊びの境目がない職場の雰囲気にびっくりしつつもすぐに好きになった。映画やドラマの打ち合わせも雑談から入るし、「遊びのなかに発見、ひらめきがある」ということを日々感じる。アイデアの花が開くためには豊かな遊びの土壌が必要で、子どもの頃から家族や友だちとたくさん遊んで、会社員時代も遊んだことがわたしの栄養源になっている気がする。だから、自分の娘にも、何かを与えるよりも一緒に遊ぶことを大切にしたいと思う。
子守話55 なーになに
なーになに みちばたに あかいのっぽの さんかく
だれかのとんがりぼうしかな うさぎさんのぼうしだったら おおきすぎる ぞうさんのぼうしだったら ちいさすぎる うまさんのぼうしだったら ちょうどいいかな
それともこれは アイスクリームのいれものかな こんなにおおきなアイスクリームをたべるのは ぞうさんかな
それともこれは ゆびわをたてるものかな こんなにおおきなゆびわをするのは だれかな てんしのわっかかもしれないね
それともこれは つのかな いっかくじゅうのおとしものか おにのつののかたっぽか あかおにさんは つのまで あかいのかな
つのじゃなくて きばかもしれない おにか おばけか きょうりゅうか きばをおとしたら こわくなくなっているかな
なーになに みちばたに あかいのっぽの さんかく |
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