天王洲の銀河劇場(旧アートスフィア)にて、舞台版『鉄人28号』を観る。プロデューサーの久保淳さん、アシスタントプロデューサーの黒田仁子さんとは、舞台『恋愛戯曲』の映画化や3Dアニメの企画をご一緒したことがあり、もともとは『パコダテ人』の前田哲監督の紹介で知り合った。会場受付で、ブタのPちゃん撮影以来の前田監督と、さらに久しぶりの木下ほうかさんに再会する。
『鉄人28号』は漫画もアニメも知らず、知っているのは冨樫森監督の映画版だけ。その前知識で観ると、鉄人28号と少年と博士が出て来るほかはまったく接点がなく、がらりと違う世界。原作のエピソードの幅が広いのか、監督/演出の味つけの差なのか。
押井守作品は不勉強であまり観ていないのだけど、歌で幕が開け、のっけからギャグの応酬で、こういう作風だったっけと面食らう。圧倒されて体が後ろのめりになり、やや引き気味の姿勢で観始めたのだが、なんなのだこれは、押井守ワールドなのだと納得して、不思議な世界を味わうことにした。
オリンピック前の野良犬狩りで最後に捕らえられる孤高の犬と孤独な女立喰師を重ねて描いていたのが面白い。押井氏は無類の犬好きだと聞くが、野良犬狩りのエピソードは原作にあったものなのか、オリジナルなのか。立喰師については著書も映画もあるので、押井氏のこだわりの持ちネタなのだろうとうかがえる。昨年だったか一昨年だったか、見逃したのだけど「真・女立喰師列伝という映画が公開され、食い逃げのプロに目をつけたのは面白いと思ったのだが、「食い逃げ」というアクションと「おんなたちぐいし」という響きの物悲しさの動と静の落差にも惹かれるものがあった。今日の舞台では、女立喰師の背負っている淋しさややるせなさがしみじみと語られていて、そこに押井監督のこだわりを見た。
南果歩さんが女立喰師と正太郎少年の一人二役を演じていたことに、目が悪いせいで、終わったときまでわからなかった。生命力できらきらしている15歳の少年と、人生に疲れきった中年女。まとう空気まで別人だった。テロリストを演じたダイヤモンド☆ユカイさんが歌、演技ともに存在感を放っていた。
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