2007年04月11日(水)  ロバート・アルトマン監督の遺作『今宵、フィッツジェラルド劇場で』

テアトル銀座にて『今宵、フィッツジェラルド劇場で』を観る。原題は『A PRAIRIE HOME COMPANION』。劇中にも登場するラジオ番組の名前で、この公開番組の最後の放送日のスタジオを舞台にした群像劇になっている。作品をすすめてくれたご近所仲間で映画通のT氏によると「これは実在のラジオ番組で、この番組の司会者兼製作者であるギャリソン・キーラーが自ら脚本を書き、アルトマンに企画を持ち込んだ作品。(映画のストーリーは勿論フィクション)」とのこと。番組司会者に妙なリアリティがあると思ったら、それがギャリソン・キーラー氏。役名は「ギャリソン・キーラー」で、本人が本人を演じている。司会をしながら歌も歌い、生コマーシャルのような感じでCMをさりげなく入れて歌につなげたりする。番組に出演するミュージシャンはくせものぞろいで、個人的には万段風に下ネタを連発するカーボーイ・デュオのお下劣さが気に入った。

ラジオ好きなわたしにとっては、手作り感と人間くささのあふれる番組の雰囲気を味わえるだけで幸せな作品。映画を観ているというより、自分も公開スタジオの観客の一人になっている感覚。楽屋での出演者の会話も、脚本に書かれた台詞をしゃべっているというより、いつもの何気ないおしゃべりのようなライブ感があり、これまたドア陰で立ち聞きしているような気分になった。映画の中では歴史を閉じてしまったラジオ番組『A PRAIRIE HOME COMPANION』は健在。実際の放送も聞いてみたい。

番組の進行と並行して、謎めいた美女が絡み、ちょっとしたサスペンスが展開する。謎解き的な面白さとは違うけれど、「一方、こちらでは……」というオンステージとバックステージの配分が絶妙で、最後まで飽きさせない。深みと奥行きを感じさせる映像の美しさにも引き込まれたが、カメラはT氏がこのところ贔屓にしているエド・ラックマン。T氏が入れ込み、ご近所仲間に勧めまくっているトッド・ヘインズ監督の『エデンより彼方に』の撮影もこの人だそう。「これが遺作なんて出来すぎ」とT氏。アルトマン監督の名前は聞き覚えがあっても、何を撮った人かは思い出せないわたし。プロフィールを見ると、「米アカデミー賞で史上最多の五度ノミネート」とある。挙げられた五作品のうち、『ショート・カッツ』だけは観たことがあった。「映画のお仕事されているんですから、勉強してくださいね」とまたT氏にお叱りを受けそうだ。

2004年04月11日(日)  日暮里・千駄木あたり
2003年04月11日(金)  ちょっとおかしかった話
2002年04月11日(木)  ネーミング

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