マタニティオレンジ71「鼻からスイカ」伝説(>>>2007年02月04日)には老若男女から反応があり、産みの苦しみへの関心の高さをうかがわせた。で、今回検証する伝説は「おなかの皮で風呂水」。産後3週間目頃に広告会社時代の先輩CMプランナーだったO嬢から送られたメールに「出産後はおなかの皮で風呂水がすくえるってほんと?」と素朴な疑問があった。わたしも知っている共通の元同僚がかつて出産したときに「すくえる」発言をしたらしい。まさか、と思いつつ実際やってみたのだが、できなかった。だけど、出産直後だったら、できたかもしれない。
出産後のおなかの皮のたるみようは尋常じゃなかった。助産院の風呂場の全身鏡に映った産後一日目のわが身を見て、わが目を疑った。おなかを膨らませていた子どもと胎盤が出ていけば、おなかはぺったんこになる、とわたしは重大な勘違いをしていたのだが、張り合いをなくしたおなかが重力に負けて、ぽよよんとだらしなく垂れていた。「わ、年食ったキューピーみたい」と思わずつぶやき、しばらく鏡の前で呆然となった。ビキニを着なくなって久しいし、何も失うものなどないさ、と強気だったわたしも、さすがにひるんだ。子どもの頃、夢中になって遊んだ風船が、数日経つと、しわしわになって萎んでしまうのを見るのが悲しかった。そんなことを思い出した。あのときつまんだおなかの皮は、たしかによく伸びて、おたまにでもスコップにでもなれそうだった。
時間をかけて戻るから大丈夫よ、と助産師さんは慰めてくれた。空っぽになった子宮はゆっくりと元の大きさに戻っていく。伸びきっていたおなかの皮もじわじわと縮んでいく。母乳育児の減量効果も手伝って、産む直前に92センチあった腹囲は、産後6か月で65センチになった。産んだ直後は何センチあったのだろう。計っておかなかったのが悔やまれる。「体重は戻っても体型は戻りません」という名コピーに釣られて買った補正下着は、ムカデの足みたいなホックのつけ外しが面倒で数回着たきりだが、ウエストに関して言えば、「サイズは戻っても、張りは戻りません」という感じだ。あと数センチ減らせば妊娠前のサイズになるけれど、皮のぶよぶよ感は居残りそうな気配。風呂水はすくえないけれど、娘のたまはお風呂の中でわたしのおなかの皮を手すり代わりにギュッとつかむ。悪いことばかりではない。
2005年03月01日(火) ビューラー巻き巻きに挟み撃ちされる
2002年03月01日(金) 『たまねぎや』と『サムラート』