高校の数学教師である父イマセンのサイト・イマセン高校は、一日のアクセス数が10人前後で、そのうち8人は父とわたしで稼ぐ日が続いていたが、最近、珍しく学食(掲示板)がにぎわっている。
きっかけは、父の教え子の一人が投げかけた質問。
「1÷3=0,333.....
1/3+1/3+1/3=1
それなら、0,333.....+0,333.....+0,333.....=0,999.....=1?
この矛盾点は何でしょう?」
それに対する父の回答は
「0,999......は0.9+0.09+0.009+0.0009+.......と無限に足していくので、1=0.99999999......は正しい」。だが、わたしには、どこまで足しても隙間は埋まりきらず、イコールにはならないように思えてしまう。
すると、別な教え子さんが「『1』と言う表記と『0.999.....』と言う表記は意味が異なります」と書き込み、「『1』と言う表記は自明な数字ですが
『0.999.....』と言う表記は小数点以下に9を無数に書き並べていったときの到達値を表している表記です」と続ける。意味は異なるものの、
「lim(1-0.1^n)を0.999......と表記していると考えてください。
n→∞
従って 1 = 0.999…は正しいといえます」
なのだという。この式はわたしにはさっぱりわからないけれど、
「まだ何となく?な場合は 1-0.999…=0.000… では駄目ですか?」と書き添えられていて、これには、おおっと思った。こう書かれると、1と0,999......の間の溝が消えるではないか。
「1/3=0.333333......は誰もが納得するのに、3倍した1=0.9999......はなかなか納得してもらえませんね」と父イマセン。言われてみると、確かにそうだ。
『博士の愛した数式』を読んで、数学の中に文学があることに気づかされたけれど、教科書で出会った数学にはまるでロマンをかきたてられなかった。数式や定理は、ただの冷たくて無機的な記号の羅列にしか思えず、仲良くなる機会を逃したまま、数学を学ぶことから卒業してしまった。イマセン高校での数学談義を眺めながら、数学って物の見方を示してくれるんだと発見する。答え(ゴール)はひとつでも、そこにたどり着く方法は様々。その過程を楽しまずに、効率よく答えを導くことばかりをやっていたせいか、授業で学んだ内容はほとんど覚えていない。脇目もふらずに目的地へ急いだだけの旅の思い出が残らないのと似ている。
2002年12月15日(日) Weihnachtsgeschenk