11月21日の日記で紹介したサンモールスタジオ映画祭が本日開幕。楽しみにしていた『築城せよ。』を2回目の上映で観る。城を建てることなく死んだ侍の魂が数百年の時を経て平成の市役所職員に乗り移り、無念を晴らそうとする。お供として蘇ったホームレスの暴走で、城はなぜかダンボールで建てられることに。
バカバカしいことを本気でやるのが面白いと常々思っているけれど、ダンボールの天守閣、ダンボールの大広間が予想以上にちゃんと作られていて、現場のノリノリぶりを想像して楽しくなった。ダンボールの襖に描かれた墨絵は、ダンボールに印刷された漢字とのコラボレーションで新境地のアートのよう。監督の知り合いで日本画を描いている人の手によるものだとか。他の小物にもセンスのよさが光り、低予算ながら安っぽさよりポップさを感じさせる。
ストーリーもよく練られていて、約60分の上映時間の中で起伏のあるドラマが作られている脚本に感心。悲願の城が石ではなく紙で建てられたことに仰天、愕然とする侍の姿は笑えて、切ない。だが、紙の城を支える民衆の心意気を知り、「紙でできておるが、民の心で建っておる」と言い切る姿は潔く、清清しい。わたしはこの台詞で涙を誘われた。
上映後、監督の古波津陽さんと市役所の女性職員役の西丸優子さんが挨拶。アメリカのフィルムマーケットに出品したところ、「日本映画としてというよりコメディとして受け入れられ、日本に先駆け、アメリカでのDVD発売が決定」したとか。夏の盛りに公民館で雑魚寝して11日間で撮りきった撮影は、暑いのにかさばる衣装を着込んで大変だったけれど、合宿のようにワイワイガヤガヤ和気藹々だったとか。志を同じくする優秀なスタッフにも恵まれた様子。古波津監督の次回作は、趣をがらりと変えたヨーロピアンテイストの『マリオネット』。この振り幅を見ても、今後の飛躍が大いに期待できそう。大きな作品を撮るようになっても、現場のノリがスクリーンに映るような情熱と勢いを持ち続けていて欲しい。
『築城せよ。』は、『平成職人の挑戦』または『風の絨毯』との二本立てで18日まで1日3回上映。詳しくは、こちら。
◆2006年11月21日 『築城せよ。』と魔女田映画祭
2002年12月12日(木) ヰタ・マキ公演『戦場がメリークリスマス』