2006年10月05日(木)  『シュガー&スパイス』のグランマ

年を取ることは若さをはじめいろんなものを喪っていくことだと思っていた二十歳のわたしに、「喪うものは若さぐらい」だと教えてくれたのは、旅先のニュージーランドで出会った九十歳の女性だった。わたしの四倍以上の時間を生きてなお人生を楽しむ好奇心と意気込みでキラキラしていた彼女は、「あなたの人生はまだ始まってもいない」と言った。時間に吸い取られて枯れ木になるのではなく、時間を豊かさに変えて年輪を刻むように年を重ねていけたら……。以来、年を取ることは恐怖から楽しみになり、脚本を書くようになってからは、いつかチャーミングなおばあちゃんを描きたいと思っていた。

ところが、である。今日観た『シュガー&スパイス 〜風味絶佳〜』に「やられた!」となった。夏木マリさん演じるアメリカかぶれのグランマが年齢をガソリンにして加速しながら突っ走っているようなパワフルな七十代なのだが、かっこよくてかわいくて、これ以上ないほどチャーミング。山田詠美さんの原作(短編集『風味絶佳』の中の表題作)からそうなのか、水橋文美江さんの脚本の力なのか、女優がはまりすぎたのか、その合わせ業なのか、こんなインパクトの強いグランマをやられては、ちょっとやそっとじゃ太刀打ちできない。だけど、一観客としてはうれしくて、このグランマ観たさにもう一度この映画を観たい、と思うのだった(作品自体も思いのほか面白かった)。

パワフルなばあちゃんが活躍する映画といえば、ロングランを続けている『佐賀のがばいばあちゃん』も気になる。

2000年10月05日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/12/08)

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